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テラコッタが語る生命の宇宙。「ロエベ財団 クラフトプライズ 2025」大賞に青木邦眞

  • 2025.6.5

スペイン・マドリードで開催されたロエベ財団主催の国際工芸賞「クラフトプライズ 2025」にて、彫刻家・青木邦眞が最高賞である大賞を受賞した。受賞作《Realm of Living Things 19》(2024年)は、テラコッタを用いた彫刻作品で、素材である粘土の持つ重力や圧力、経年変化の力学に着目しながら、時間と物質の層を幾重にも重ねて成形された。

伝統的な紐作りの技法をベースに、層状に積み重ねられた粘土が焼成時に収縮することで生まれる歪んだフォルムと繊細なひび割れが、生命の儚さや宇宙的な奥行きを感じさせる。最終的に、土と鉛筆で仕上げを施すことで、素材の生々しさとアーティストの身体性が融合する造形となった。

審査には、深澤直人(日本民藝館館長)や建築家のパトリシア・ウルキオラ、評論家のオリヴィエ・ガベなど、第一線で活躍する12名の国際的な専門家が参加。青木の作品は、技術的完成度、革新性、そして芸術的ビジョンにおいて群を抜くものとして高く評価された。

川口市を拠点に活動する青木は、武蔵野美術大学で彫刻を学び、東京や神戸を中心に作品を発表してきた。2023年には日本彫刻コンクールで金賞を受賞するなど、国内外で高い注目を集めている。今回の受賞は、日本の伝統技術に根ざしながらも現代的な視点を提示する作家としての実力が、国際舞台で認められた証でもある。

「ロエベ財団 クラフトプライズ 2025」は、2016年にエンリケ・ロエベの遺志を継ぎ設立されたロエベ財団によって毎年開催されている。芸術性と革新性を兼ね備えたクラフト作品を讃える本賞は、今日における手仕事の新たな可能性を問い直す場となっている。

Photos: Courtesy of Loewe Text: Makiko Yoshida

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