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誕生から50年。ボッテガ・ヴェネタのアイコン、「イントレチャート」がメゾンの顔になるまで

  • 2025.6.3

今年はボッテガ・ヴェネタBOTTEGA VENETA)にとって飛躍の年だ。9月には新たにクリエイティブ・ディレクターに就任したルイーズ・トロッターがデビューコレクションを発表する。そしてメゾンを象徴するレザーの編み込み「イントレチャート」の誕生50周年でもあるのだ。

ヴェネト州ヴィンチェンツァで創業されたボッテガ・ヴェネタが誇る「イントレチャート」は1975年に初めて登場し、瞬く間に高いクラフツマンシップとクリエイティビティの表れとして定評を得た。「1960年代のイタリアの(バッグ)市場は、重くて硬い、かっちりとしたデザインに占拠されていました」とボッテガ・ヴェネタのクラフト&ヘリテージ・ディレクターのバーバラ・ザニンは振り返る。「それに対して私たちのデザインは限りなくソフトで、バッグは流れるようにしなやかでシンプルでした。『イントレチャート』の登場で、まるで布のようになめらかなバッグが作れるようになったのです」

『VOGUE』1975年3月号に掲載された「イントレチャート」初の広告。
『VOGUE』1975年3月号に掲載された「イントレチャート」初の広告。

「イントレチャート」とは、フェットゥーチェと呼ばれる細長いレザーの紐を、ベースとなるレザーパネルに合わせて職人が手で編み上げていく技法だ。通常は縦に編むところを斜めに編み、この革新的な技法により、生地でいうバイアスカットのようなよりソフトな仕上がりが可能になった。その特徴的な見た目はボッテガ・ヴェネタの代名詞となり、ロゴが物を言うほとんどのラグジュアリーブランドとは一線を画す。「イントレチャート」初の広告キャンペーンでは「People know a Bottega the minute they see one. So we put our name on the inside only.(ひと目見ただけで、それとわかる。だからは私たちは、内側にしか名前を入れない)」と言い切るほど、メゾンを象徴する存在となっている。

ボッテガ・ヴェネタ 2017年春夏コレクションのショーを歩いたローレン・ハットン。
ボッテガ・ヴェネタ 2017年春夏コレクションのショーを歩いたローレン・ハットン。
1984年、真っ白な「イントレチャート」片手にロサンゼルスの人気レストランSpagoを訪れたティナ・ターナー。
Tina Turner at Spago's Restaurant in Hollywood - May 30, 19841984年、真っ白な「イントレチャート」片手にロサンゼルスの人気レストランSpagoを訪れたティナ・ターナー。
1992年、黒い「イントレチャート」仕立てのバッグを提げて『永遠に美しく…』のプレミアに出席したブルック・シールズ。
"Death Becomes Her" Premiere Party1992年、黒い「イントレチャート」仕立てのバッグを提げて『永遠に美しく…』のプレミアに出席したブルック・シールズ。
1991年、『イン・ベッド・ウィズ・マドンナ』のロサンゼルス・プレミアでのマドンナ。
"Truth or Dare" Los Angeles Premiere1991年、『イン・ベッド・ウィズ・マドンナ』のロサンゼルス・プレミアでのマドンナ。

そんな「イントレチャート」は、1980年のポール・シュライダー監督映画『アメリカン・ジゴロ』でローレン・ハットンがイントレチャート仕立てのクラッチバッグを身につけたことがきっかけで、カルチャーシーンでの存在感を高めた。2017年に“ローレン・クラッチ”という名で復刻されて以来、そのデザインはセンスをさりげなくアピールできる一級品として、セレブを含むあらゆるファッショニスタたちの間で人気を博している。

ブランドの理念を象徴するデザインであり表現

1975年、ボッテガ・ヴェネタ初の「イントレチャート」バッグ。
1975年、ボッテガ・ヴェネタ初の「イントレチャート」バッグ。
編み上げの工程は数時間、ときには数日を要する。
Gold jewelry in Vicenza, Italy編み上げの工程は数時間、ときには数日を要する。
製作はすべて職人による手作業。
Gold jewelry in Vicenza, Italy製作はすべて職人による手作業。
木型に合わせて編み上げられるものも。
木型に合わせて編み上げられるものも。

「イントレチャート」は無限の可能性を秘めている。2002年、当時クリエイティブ・ディレクターを務めていたトーマス・マイヤーは、フェットゥーチェをレザーの生地に差し込んで編んでいく通常の「イントレチャート」とは異なり、木型に合わせてレザーを編み上げる「カバ」バッグを発表。このプロセスはのちに「イントレッチオ」と名付けられた。ほかにもあらゆるレザーやアレンジの「イントレチャート」が展開されており、使用する素材によって仕上がりは変わるとザニンはいう。「パッドを入れればより贅沢な仕上がりになりますし、柔らかなナッパレザーを使用したものには、職人の手の動きや編む過程でついた折り目が生かされているので、独特な質感が生まれます」

クラフトがこれからもメゾンの真髄であり続けるよう、ボッテガ・ヴェネタは2023年、次世代の職人を育成する専門学校「Accademia Labor et Ingenium」を新たに開校した。「アカデミアの柱となるのは、年間50人の学生を対象にしたトレーニングプログラムです。コース修了後はブランドでの雇用が保証されます」と、アカデミアの立ち上げに携わったザニンは説明する。「ボッテガ・ヴェネタ独自のサヴォアフェール(匠の技)を伝えていく。それが私たちの役目なのです」

Text: Laia Garcia-Furtado Adaptation: Anzu Kawano

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