1. トップ
  2. 「1人来ないだけで出発できない」飛行機が飛べなかった“本当の理由”とは?元CAが明かす舞台裏にゾッ…

「1人来ないだけで出発できない」飛行機が飛べなかった“本当の理由”とは?元CAが明かす舞台裏にゾッ…

  • 2025.6.12
undefined
出典元:photoAC(画像はイメージです)

「出発時間になったのに、飛行機がなかなか離陸しなかった」という経験はありませんか?

出発が遅れる理由として、空港の混雑(出発機が多く管制塔からの離陸許可が出ない)や天候不順など理由はさまざまです。

今日は、ある理由で出発が遅れたケースのちょっと怖くて興味深い裏事情を、元国際線CAがお話しします。

早朝便の機内に漂う「緊張感」と出発への「焦り」

国内線フライトに乗務した時の出来事です。

早朝便ということもあり、機内にはこれからお仕事に向かわれるビジネスのお客様が多く、リゾート路線とは異なるピリッとした緊張感が漂っていました。

しかし、出発時間が迫ってもお一人のお客様が搭乗されないのです。

機内で出発を待つお客様の表情からは、定刻通り出発できるかどうかの焦りが手に取るように伝わってきます。

当時は国内線でも新聞のサービスがあったので、私ども客室乗務員は新聞を持って機内を巡回しながら、最後のお客様がいらっしゃるのをお待ちしていました。

出発時間になると、お客様からは「どうなってるの?」「いつ出発できるの?仕事に間に合わなくなっちゃうんだけど」と厳しい質問が飛んできます。

到着地で他の便への乗り継ぎがあるお客様もおり「乗り継ぎ時間があまりないけど間に合うかな?」と心配される方もいらっしゃいました。

航空会社にとって定時性は、お客様へ信頼と安心を提供するために守らなければならない大切な要素の一つです。

機内でどうすることもできませんでしたが「早く離陸準備を進めて、出発したい」と、お客様と同じ気持ちでソワソワしていました。

「荷物の取り降ろし」〜行方不明の乗客と残された謎〜

しばらくして、機内のインターフォンを通して機長から重要な連絡が入りました。

「搭乗予定のお客様が見つからないため、搭乗を締め切りました。ただ、チェックインバゲージ(預け荷物)があるため、貨物室から荷物を取り降ろしてからの出発となります」。

チーフパーサーがこの旨を機内アナウンスでお客様にお伝えすると「今から荷物を降ろすの?」「荷物を載せたまま出発できないの?」と、ため息混じりの声が機内のあちこちから聞こえてきました。

荷物だけを預けて搭乗されないお客様は、一体どうされてしまったのでしょうか?

何度かこうしたケースには遭遇しましたが、出発してしまう私ども客室乗務員には知る由もありません。

急用ができて帰宅されてしまったのか、空港のお土産屋さんで買い物に夢中になって搭乗時間を忘れてしまっていたのか……さまざまな想像が頭をよぎります。

荷物を取り降ろさなければならない怖いワケとは?

実は、搭乗されないお客様の荷物を搭載したまま離陸できないのには、とても重要な理由があります。

もし、その荷物の中に“爆発物”などが入っていたら……と想像してみてください。

爆発物を隠し入れた荷物を預けてチェックインだけ済ませ、自身は飛行機に乗らないまま飛行機を爆破するという、とんでもない犯行も100%否定できません(もちろん、搭載前に荷物チェックは受けますが)。

こうした理由もあり、たとえ定刻通り出発できないとしてもお客様の安全を第一に考えて、貨物室に搭載された荷物を取り降ろしているのです。

最悪のケースを想定して、搭乗されたお客様の安全をお守りするのが航空会社としての使命といえるでしょう。

地上と空のプロが動く瞬間:安全と定時性への配慮の裏側

間違いなく、空港の出発ロビー周辺では地上係員が「〇〇航空〇〇便の〇〇行きをご利用の〇〇様!ご搭乗締め切りが近づいております。いらっしゃいましたらお声がけください!」と走り回って探していたはずです。

そして、コックピットでは、お客様の数が予定より一人減ることで、航空機が安全に離陸するために必要な離陸性能の計算のやり直しといった準備も必要になります。

離陸性能は機体の重さや重心や滑走路の長さ、風向風速など、さまざまな要素に基づいて細かく計算されるため、少しの変更でも再計算が必須となるのです。

安全運航のために見えないところで、地上と空のプロが連携し努力していることを知っていただけたら嬉しいです。

もし、チェックイン後に搭乗できなくなったら?

もし、チェックイン後に何らかの理由で搭乗できないとなった場合には、預け荷物の有無にかかわらず、必ずご利用予定だった航空会社の地上職員にその旨をお伝えください。

荷物を預けていない場合でも、チェックイン人数と実際の搭乗人数に誤差が出ると、スムーズな出発ができなくなる恐れがあるためです。

特に、預け荷物がある場合は、お客様からの申し出で早めに荷物の取り降ろしに対応することも可能なので、ぜひご協力いただければと思います。

それでは、安全で快適な空の旅を!


ライター:かくまるめぐみ
大学卒業後、日系航空会社に客室乗務員として入社。国際線をメインに乗務し、世界中を飛び回る。結婚を機に退職し、イタリアへ移住。現在も家族とともにイタリアに在住し、Webライターとして活動。客室乗務員の経験から培った「細やかな心配り」を大切に、コラム記事からSEO記事まで幅広く執筆中。