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90代患者「息が苦しい」60代娘「病院の治療は信用できない!」と紹介状を拒否…現役看護師が語った“まさかの結末”

  • 2025.6.10
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

医療現場では、患者さんの治療方針を決める際に、医学的な判断だけでなく、患者さんご本人やご家族の価値観や希望を尊重することが求められます。しかし時として、医療従事者が推奨する治療と、患者さんやご家族の考えが大きく食い違うこともあるようです。

今回は、現役看護師のAさん(仮名)が体験した、患者さんのご家族との向き合い方について紹介します。

家族の価値観と医療の現実が交差した難しいケース

これは、看護師として勤務している病院で私が経験した、患者さんとそのご家族とのエピソードです。

ある日、「息が苦しい」と訴える90代後半の女性が当院を受診されました。

付き添いには60代の娘さんが来られ、「最近急に息切れがひどくなってきて、心配です」と不安そうなご様子。

呼吸器の病気と思い検査を進めた結果、心不全悪化の可能性があることが分かりました。以前から心不全で大病院に通院されていたこともあり、すぐにその病院へ紹介状を準備。

しかし、娘さんが民間療法で治療している方だったため「病院の治療は信用できない」「その病院には行きません」と強い口調で返され、紹介状の受け取りも頑なに拒否されるのです。

「呼吸のしんどさは心不全の悪化から来ている可能性が高いです」「以前通われているので、経過も分かっているため安心して治療できますよ」と繰り返し説明しましたが、

「母は呼吸が苦しいと言っているんです」「呼吸器の先生に診てもらいたいんです」と話がかみ合いません。

それでも何度も丁寧に説明し、不安に寄り添いながら対応を続け、ようやく2日後に紹介先の病院を受診していただけました。

診断結果はやはり「心不全の悪化」だったようです。しかし、病院からは「家族の希望により、積極的な治療は行わない方針です」との返答がありました。

その数日後、「やっぱりこちらで診てほしいんです」と再び当院に連絡がありました。当院では循環器の専門的治療が難しいため、代わりに他のクリニックを紹介。

ご本人は「家に帰りたい」と希望されていたため、その意向を尊重して入院ではなく通院で対応することになりました。

家族の願いと医療の現実、そして患者さん自身の気持ちが交差する中で「誰を中心とした医療を目指すべきか」「医療とは何のためにあるのか」という根本的な問いに向き合うことになりました。

また、患者さんご本人とその家族の理解を得て、安心した治療提供を行うための声掛けの難しさを痛感しました

患者さんを中心とした医療の在り方を考える

医療従事者として、患者さんの命と健康を守ることは最優先の使命です。しかし同時に、患者さんやご家族の価値観や人生観を尊重することも、医療の重要な側面です。特に高齢の患者さんの場合、治療の効果とQOL(生活の質)のバランスを考慮することが求められます。

Aさんが「誰を中心とした医療を目指すべきか」という問いに直面したように、現代の医療現場では、医学的な正しさだけでなく、患者さんとその家族の気持ちに寄り添った対応が必要とされています。

また、民間療法を信じるご家族との関わりは、単に「正しい医療知識を伝える」だけでは解決しない場合があります。医療現場では、このような価値観の違いに遭遇することは珍しくありません。相手の不安や価値観を理解し、時間をかけて信頼関係を築くことが重要なのですね。


《取材協力》
現役看護師・Aさん
精神科病院で6年勤務。現在は訪問看護師として高齢の方から小児の医療に従事。精神科で身に付けたコミュニケーション力で、患者さんとその家族への説明や指導が得意。看護師としてのモットーは「その人に寄り添ったケアを」。