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悪徳セールス被害も!? 「個人情報を漏らしたママ友」に賠償請求できるか

  • 2016.4.30

【女性からのご相談】

今、ママ友の中で大問題になっていることがあります。

最近まで仲良くしていた方の自宅に、保健所職員を名乗る人物から電話がかかってきたそうです。 用件は、「予防接種の件で、自宅の電話に連絡をしたものの連絡がとれないため、あなたの友人の携帯番号を教えてほしい」ということだったそうです。

保健所の人がそんな連絡するはずもないのですが、すっかりだまされ、友達何人かの個人情報を教えてしまったようです。

その後、教えてしまった携帯電話に怪しい連絡が何件かあった人もいたらしく、大変迷惑をしています。こういったときは、流出させた人に責任をとってもらえますよね?

●A. プライバシーの侵害になり得るが、二次被害の責任追及まではハードルが高いです。

ご相談ありがとうございます。アディーレ法律事務所弁護士の篠田恵里香です。

最近は、「個人情報」自体に大きな価値が見いだされるため、個人情報を盗んだり、売買したりという悪質な犯罪やビジネスも横行しているようです。

基本的には、個人情報を流出させたことにつき、「プライバシー侵害」に該当するのであれば、慰謝料等の請求が可能です。

●他者の個人情報を流出させた場合、どんな罪になるのか(故意)

住所・氏名・電話番号といった個人情報の扱いについては、個人情報保護法や個人情報保護条例等の法律が定められています。

合理的な理由なく個人情報を流出した場合、これらの法律違反・条例違反となり、犯罪となる可能性があります。

ただし、処罰対象はあくまで「個人情報を取り扱う事業者等」となっています。

したがって、企業や団体・事業者等が、個人情報を流出させた場合には罪になる可能性がありますが、日常生活において個人が個人情報を流出させる行為については、基本的に犯罪とはなりません 。

名誉棄損的な内容を公表した場合には、名誉棄損罪等の犯罪の成立はあり得ますが、これは個人情報の流出行為そのものを処罰するものではありません。

●故意ではなく、過失によって個人情報を流出させた場合

故意であれ過失であれ、個人情報を流出させた場合には、プライバシー侵害として民法709条に基づき、慰謝料等の支払い義務 が生じる可能性があります。

住所・氏名・連絡先等の情報は、むやみやたらに他人には知られたくない情報ですし、一般的に公表されないように保護されている情報ですから、これを流出された場合には、プライバシー侵害に該当する可能性があります。

今回のケースは“わざと(故意)”ではないようなので、過失があったか否か が問題となります。

あまりに電話をかけてきた相手のだまし方が巧妙で、ウソだと見抜けなかったような場合には、流出させた本人にも過失がないとされる可能性があります。

その場合、過失がない以上、慰謝料等の責任を負わないことになります。

一方、流出させた本人の行為が、あまりにずさんで、「流出に関して過失あり」と考えられてもおかしくないということであれば、慰謝料等の責任を負う可能性が出てきます。

特に、ママ友の間で、「番号を聞き出そうとする変な電話がはやっているようだから気をつけようね」などと注意を呼び掛けていたにもかかわらず、まんまとだまされたということであれば、過失が認められやすいといえそうです。

●流出させたことによる2次被害(悪徳セールスやストーカーなど)が起こった場合、流出させた者に責任が行くのか

仮に、電話番号を知られたことをきっかけに、悪徳セールスや詐欺の被害に遭ってしまった場合、その損害を流出者に賠償請求できるか、は問題です。

「電話番号が流出したこと」により、「今回だまし取られた金額」という損害が発生したという関係、すなわち因果関係があるか、ということが争点です。

ただ、電話番号が流出したことによる被害と認められるのは「変な電話が鳴って困る」という範囲に限られ、それによって「だまされた」「購入してしまった」その被害金額まで因果関係ありとはなかなか認められないと思われます。

電話がかかってきた後の、だまされた、購入してしまった、というのはあくまで、基本的には「だまされた人」「購入した人」の責任 ですから、その損害まで賠償せよというのは難しいと思われます。

仮に、流出と被害との因果関係が一定程度認められ、流出者が被害金額につき賠償責任を負うとしても、「だまされて買った・支払った側の過失も大きい」として、過失相殺により、賠償額は相当減額されるでしょう。

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個人情報が流出することにより、悪質商法やストーカー被害など、大きな被害につながる可能性があります。

日頃から、自身のみならず、友人の個人情報についても慎重に配慮し、みだりに流出しないよう心掛けることが大事ですね。

●ライター/篠田恵里香(アディーレ法律事務所:東京弁護士会所属)

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