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日本中を席巻した『狂気のドラマ』から1年 主役を食うほどの存在感を放つ“憑依型俳優”の驚愕エピソード

  • 2025.7.3

約1年前の2024年7月、後に日本中を席巻することとなる1本のドラマが配信された。

Netflixシリーズ『地面師たち』(大根仁監督/全7話)である。動画配信サービス「Netflix(ネットフリックス)」にて世界独占配信されると、日本国内にとどまらず、世界中の視聴者を惹きつけ話題となった。

原作は新庄耕氏による同名小説。先の読めないスリリングな展開に加え、一般にはなじみの薄かった「巨額不動産詐欺」という題材が新鮮で、多くの視聴者の熱狂を呼んだ。

なかでも、作中に登場する名優たちの演技は、大きな見どころだった。知性と狂気をあわせ持つ魅力的な悪役・ハリソン山中を演じた豊川悦司。そんなハリソンに見いだされ、時に翻弄されながら「地面師」という世界に足を踏み入れていく辻本拓海を演じた綾野剛。そして、その中でも強烈な存在感を放っていた俳優がいた。

それが、“竹下”という情報屋を演じた北村一輝である。

彼の役どころは、不動産詐欺のターゲットとなる土地の情報をハリソンに提供する情報屋。竹下は薬物中毒者という設定で、言動は粗暴かつ暴力的。アジトでハリソンに怒鳴り散らすシーンは「絶対に近づいてはいけない」異様な空気を放ち、作品後半の沖縄での壮絶な場面も含め、北村はその狂気を圧倒的な演技で表現していた。

“主役を食う”存在感を放つ実力派俳優

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(C)SANKEI

北村一輝は、主演俳優すらも“食う”ほどの強烈な個性と演技力を持ち、日本の映画・ドラマ界で高く評価されてきた実力派俳優だ。

ヤクザを演じた映画『皆月』『日本黒社会 LEY LINES』では、キネマ旬報・日本映画新人男優賞を受賞するなど、その才能は早くから注目されていた。

彼の最大の魅力は、演技の幅と深さにある。悪役やダークな人物を演じる際は、単なる恐ろしさにとどまらず、内面の葛藤や人間味を巧みに表現。観る者の共感を呼び、複雑なキャラクターとして深みのある人物像を創り上げている。

また、コメディ作品でもその個性を発揮。巧みに計算された間と自然なユーモアで、シリアスな役柄とのギャップが際立つ。多面的なキャラクターを生き生きと演じ、どんなジャンルでも作品に溶け込むことができるのが、北村の真骨頂といえそうだ。

“憑依型俳優”としての驚愕エピソード

1998年公開の映画『JOKER 厄病神』でチンピラ役を演じた際、北村は壮絶な役作りを行っていた。

2022年9月放送の『ボクらの時代』(フジテレビ系)では、その時のエピソードを語り、「前歯を9本ぐらい抜いて、さらに4、5本削った」と明かし、トーク相手として共演した福山雅治や柴咲コウを驚かせた。

この過激な役作りには理由がある。主演2人と年齢や体格が近い北村は、「弟分としての品のなさ」を表現するため、自ら歯を抜く決断をしたのだ。

歯医者には最初は当然ながら断られたが、粘り強く説得し、まずは4本を抜歯。その後、歯科医側も役作りに共感し、「削る歯もあったほうがいい」と提案したことで、結果的に9本を抜き、4本を削ることとなったんだそう。

これを聞いた福山雅治は「この話は何度でも語るべき」と、北村の俳優魂に感嘆していた。

今後の演技にも期待せずにはいられない

北村一輝が次にどんな作品で、どんな役に挑戦するのか。悪役からヒーロー、コメディからシリアスまで、ジャンルを問わず高いレベルで演じ切るその実力は、今後の日本の映像界でも欠かせない存在だ。

狂気とユーモア、哀しみと力強さ。さまざまな感情を演じ分ける彼の“変幻自在”な演技から、これからも目が離せない。


※本記事の内容は執筆時点の情報をもとに構成されています。また、記載された見解や表現には筆者の個人的な感想・解釈が含まれます。ご了承ください。