1. トップ
  2. 恋愛
  3. 津波火災の原因と怖さとは?事例から学ぶ対策

津波火災の原因と怖さとは?事例から学ぶ対策

  • 2025.5.23

津波の危険がある地域では、「津波火災」に注意が必要です。その原因と被害の事例、身を守るための対策などを紹介します。

津波火災とは?

津波火災とは、地震後の津波が原因で発生する火災です。津波で壊れた家屋の漏電や、車などが原因で発火し、流出した燃料やプロパンガスボンベなどによって拡大してがれきが燃え、波で打ち寄せられた場所で延焼します。

津波火災は、1993年の北海道南西沖地震、2011年の東日本大震災などで、大きな被害をもたらしました。

また、近年いつ起こってもおかしくないと警戒が高まっている南海トラフ地震でも、津波火災によって被害が拡大する恐れが指摘されています。

南海トラフ地震でも発生の恐れ

2025年3月に政府の中央防災会議が発表した「南海トラフ巨大地震 最大クラス地震における被害想定」によると、南海トラフを震源として想定される最大クラスの地震が発生した場合、津波により約 16.1 万棟~20.8 万棟が全壊、約 23.6 万棟~33.1 万棟が半壊すると予想されています。

漂流したがれきや、車両から出火する津波火災は約300~400件発生すると見込まれています。火のついたがれきが、流出した燃料オイルやプロパンガスのボンベなどとともに津波にのって漂流することで、被害が拡大していくと考えられます。

<こちらの記事もよく読まれています!>→「南海トラフ地震」発生確率80%へ引き上げ! 背景や最新情報について解説

津波で火災が発生する原因

津波は水害なのに、なぜ火災が発生するのでしょうか。実は専門家による調査・研究でも、津波で火災が発生する原因の多くは不明となっています。

しかし、原因が判明している中には、津波で浸水した家や車の電気系統が海水などの影響で壊れ、漏電やショートを起こして出火する電気火災が多かったという調査報告があります。

また、がれきが衝突しあうときに摩擦熱や火花が発生して出火したり、地震によって海底から噴出したメタンが風によって岸壁に集まり、静電気によって出火したりする可能性も指摘されています。

延焼が起きやすい理由

津波火災の怖さは、燃え盛るがれきや車が、波とともに移動していく点にあります。

木造住宅が多い日本では、津波によって可燃性の高いがれきなどが多く流れ出します。

そこに、プロパンガスのボンベや、ガソリンを積んだ自動車などの危険物が打ち寄せられることによって、津波火災は激しく、長く燃え続けることになります。船の燃料タンクが津波によって破壊され、重油が流れ出て火の海となった例もあります。

消火活動の難しさも、延焼が拡大しやすい原因のひとつです。東日本大震災では地震後に津波に襲われた地域から、浸水やがれきが消防車の行く手を阻み、消火活動ができなかったという報告が多く寄せられています。

津波火災の被害の特徴

津波火災は、高台のふもとや大きな建物の周りなど、津波でがれきが打ち寄せられる場所で燃え広がりやすいという特徴があります。火のついたがれきが山のふもとまで押し流されて、林野火災に発展した例もあります。

また山間部よりも人口の多い平野部では、津波により大量のがれきが流出する恐れがあります。がれきは津波に耐えた大きな建物の周囲に打ち寄せられます。

津波避難ビルなどに逃げて津波から助かったとしても、燃焼するがれきに囲まれて、逃げ場を失う危険があります。津波火災の対策は、防災における今後の課題と言えます。

津波火災の事例

ここからは、実際に起こった津波火災を紹介していきます。

能登半島地震

2024年1月1日にマグニチュード7.6の地震が発生した能登半島地震では、輪島市朝市通りの地震火災が大きく報道されましたが、珠洲市、能登町では津波で浸水した地域での火災も確認されています。

東日本大震災

2011年3月11日に、国内観測史上最大となるマグニチュード9.0の地震を記録した東日本大震災では、2011年9月までに287件の火災が報告されています*。津波の被害が大きかった沿岸の地域では、津波火災も数多く発生しました。

*平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)について(第139報)

・岩手県山田町 がれきから出火

山田町では、がれきから出火したのを見た、家が燃えながら流されてきたという証言があります。延焼が拡大した原因は、津波で壊れた住宅などが大量のがれきとなって押し寄せ、延焼しやすい状況があったこと、自動車の燃料やガスボンベなどの可燃性物質が漏れていた可能性があったこと、大量のがれきや津波による浸水のため、消火活動が困難だったことなどが挙げられます。

・岩手県大槌町 林野へ延焼

大槌町では、避難場所となっていた高台の公民館付近まで津波が押し寄せ、公民館へと集まってきた人々が、より高い場所へと避難しています。津波直後に市街地で発生した火災は、林野まで延焼しました。

・宮城県気仙沼市 燃油タンクの流出

気仙沼市では、津波で港の燃油タンクが破壊されました。重油や軽油が海上に流出し、がれきが長時間にわたって燃える要因となりました。

・宮城県石巻市 門脇小学校からの二次避難

石巻市の門脇小学校には、地震後たくさんの人が避難していましたが、津波により浸水しました。避難のために乗ってきた車が津波で流され、出火しているのを見たという人たちの証言もあります。激しく燃える自動車やがれきが小学校の近くにある崖地に打ち寄せられて集まったため、危険を感じた人たちは校舎裏の高台へと逃げました。

・宮城県名取市 閖上地区の市街地火災

名取市の閖上地区では、津波で流されなかった大きな建物の周辺にがれきが集まり、炎が上がっている様子が確認されています。また、中身を噴出させながら漂流するガスボンベも確認されており、延焼拡大の一因になったと考えられています。

北海道南西沖地震

1993年7月12日にマグニチュード7.8の地震が発生した北海道南西沖地震では、日本海沿岸の広い範囲で1mを超える津波が観測されました。北海道の奥尻島では、後の調査で高さ29mの地点まで津波が到達した跡が確認されています。

奥尻町の青苗地区では、津波による壊滅的な被害を受けたのちに、建物や船から次々と火の手が上がり、大火災となりました。

津波火災への対策

東日本大震災の被災地では、まちを復興する際に建物の耐震化や不燃化、津波のリスクを考慮した土地活用などを行っています。

 

また、南海トラフ地震の被害想定では、震度5以上の地震を感知したときにブレーカーが自動的に落ちる「感震ブレーカー」を設置するなどの電気火災対策によって、地震後の火災を減らせるとしています。

 

感震ブレーカーは、分電盤に取り付けて使うタイプや、コンセントに差し込んで使うタイプなどがあり、分電盤ごと交換しなくても導入できます。

費用は数千円~数万円程度かかりますが、導入を検討してみてはいかがでしょうか。購入費用を支援している自治体もあります。

対策は困難なため避難が重要

家や自動車を押し流すような大津波が迫っているときに、個人の力で津波火災を防ぐのは難しいのが現実です。

命を守るために重要なのは、できるだけ早く、安全な場所へと避難することです。地震の揺れがおさまったら、速やかに避難を始められるよう、日頃から準備をしておきましょう。

避難場所と避難経路を決めておく

津波ハザードマップなどを確認して、避難場所と避難経路を確認しておきましょう。海沿いの道は避けるなど、安全性の高い道を通って避難することが大切です。

避難は徒歩が原則とされていますが、家族に高齢者がいるなど、車での避難が必要な場合には、渋滞を避けるルートも検討しておきましょう。東日本大震災では、避難する車で渋滞が発生し、逃げ遅れの原因となっています。

非常用持ち出し袋を用意しておく

津波の危険が迫っているときの避難は、一刻を争います。逃げ遅れてしまうことのないよう、日頃から準備を整えておきましょう。

避難するときに持って行くものをまとめた非常用持ち出し袋には、水と食料、携帯ラジオ、懐中電灯などの基本的な防災グッズに加えて、身分証明書やお薬手帳のコピー、現金、口座番号のメモなどを入れておくとよいでしょう。

状況に応じて二次避難の心構えを

東日本大震災では想定を超える津波が人々を襲いました。

津波火災では、高台の避難所まで燃焼したがれきが打ち寄せた場合、より安全な場所への二次避難が必要になることも予想されます。「ここまでは、津波はこないはず」と油断することなく、状況に応じてさらに安全な場所へ避難できるよう、心構えをしておくことが大切です。

<こちらの記事もよく読まれています!>→避難場所までの時間を色分け!活用広がる津波の「逃げ地図」

大地震が起こったときは、揺れがおさまった後も津波や火災に注意が必要です。津波で周囲が浸水し、火のついたがれきに囲まれてしまうと、逃げ場を失うこととなります。津波火災を想定し「危険が迫ったらより安全な場所へ二次避難ができるかどうか」という視点で、避難場所を検討してみてください。

<執筆者プロフィル>

山見美穂子
フリーライター
岩手県釜石市生まれ。幼いころ両親から聞いた「津波てんでんこ」の場所は、高台の神社でした。

元記事で読む
の記事をもっとみる