1. トップ
  2. おでかけ
  3. モダン建築にも出合える!京都文化博物館「和食展」&大阪・高麗橋のフレンチ「NELU高麗橋」【上食研・Wあさこのおいしい社会科見学vol.6前編】

モダン建築にも出合える!京都文化博物館「和食展」&大阪・高麗橋のフレンチ「NELU高麗橋」【上食研・Wあさこのおいしい社会科見学vol.6前編】

  • 2025.5.17

お料理教室&上方食文化研究會(上食研)を通じて上方の家庭の味を伝える日本料理家・吉田麻子先生と、奈良在住の編集者・ふなつあさこの“Wあさこ”がお届けする、上方(関西)の食にまつわる大人の社会科見学。今回は、各地で「モダン建築祭」が開催されるなど大注目のモダン建築で、学び、味わいます♪

<前編>では、京都文化博物館で7月6日(日)まで開催している特別展「和食 〜日本の自然、人々の知恵〜」展をご紹介します。科学的な視点から和食をひもといたこちらの特別展、東京・上野の国立科学博物館を皮切りに、山形、宮城、長野、愛知を巡回しているのですが、京都ならではの展示物もあり、すでにご覧になった方も楽しめますし、まだの方は残すところ京都、熊本、静岡の3会場の予定とのことですので、どうぞ足をお運びください!

“知ると、もっとおいしい。” 和食を科学する「和食展」

2013年にユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」。その定義は、《「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた「食」に関する「習わし」》(農林水産省)とのこと。……ちょっと難しいですね。

一汁一菜を基本に、四季折々の多様な食材を昆布や鰹節などから取っただしと醤油や味噌といった伝統的な調味料で味付けしたものがおおよそ和食といえるのではないかと思いますが、例えばトンカツやいわゆるカレーライスなどは和食に含むのか、含まないのか、人によって判断が分かれることになりそうです。

そんななかで、四方を海に囲まれ、四季がある日本の地理、地形、気象条件なども和食の成立に大きく影響したのではないか、という今までにない科学的な視点からも和食にアプローチしたのが、特別展「和食 〜日本の自然、人々の知恵〜」展です。

和食展の監修をされている佐藤洋一郎先生(ふじのくに地球環境史ミュージアム館長)は「日本は世界的にみても珍しい、生物学的な多様性のホットスポットであり、だからこそ日本の食文化が育まれたのです」と語ります。ちなみに「この“世界の食”のパネル、何気なく展示してありますが、世界各地から日常の食事の画像を集めるのに苦労しました。ぜひじっくり見ていただきたいです」とのこと!

「和食と銘打った展示で、一番最初に置いてあるのは、岩です。意外かもしれませんが、和食と自然科学はリンクしているという視点での展示ならではだと思います。国立科学博物館にとっても大きなチャレンジとなったこの展示に、ぜひご注目ください」と語る國府方(こくぶがた)吾郎先生(国立科学博物館)も和食展の監修者のおひとり。

和食によく使われている野菜の標本。ナスやトマトなどの水分量の多い野菜を標本にするのは大変だったそう。ちなみに、日本で栽培されている野菜のほとんどは、実は外国原産なんですって!

日本各地で栽培されている多彩な地ダイコンのレプリカ。こうして見ると同じダイコンとは思えないほどバリエーション豊富ですね。

左の中央から天井をつたって右の壁まで使って展示されているのが、和食展名物(?)、日本最長の海藻・ナガコンブの標本。その長さはなんと約16m! そのほかにも、和食の食材となるさまざまな植物や海洋生物などの標本が展示されています。

醤油や味噌、酒などの発酵食品を調理に多く取り入れているのも和食の特徴のひとつ。そしてもちろん、昆布や鰹節などのだしも和食の旨みのキーファクター。

佐賀県東名遺跡で出土した、ムクロジなどの木を割り裂いて作られた《網(あみ)かご》〈縄文時代/佐賀市〉。どんぐり(イチイガシなど)を拾い集めるときなどに使われたようです。

見てるだけでお腹が空く…… 日本の食の歴史を食品サンプルの技術で再現された模型で辿る

こちらはいずれも奈良時代の食事を再現したものなのですが、セレブ(天武天皇の孫にあたる皇族・長屋王)と庶民のレベルの差がすごくて切ないです。〈ともに奥村彪生(あやお)監修、奈良文化財研究所〉

和食展の見どころのひとつが、日本の各時代の食事を再現したこうした再現模型(いわゆる食品サンプル)です。個人的には食品サンプルがすごく好きなので、和食の食品サンプルがずらっと並んでいるだけでワクワク。欲しいぐらいです(と思っていたら、ミュージアムグッズにもありました!)。

《織田信長が徳川家康をもてなした本膳料理の再現模型》〈奥村彪生監修/御食国若狭おばま食文化館〉

でもこちら、最初に出された「十五日 おちつき膳」だそうで、実際にはこのあと本膳、二の膳、三の膳、与膳、五膳などと続くとんでもないボリュームのフルコースが供されたそう。豪華すぎるぐらい豪華な食事を出すのには、権力をアピールする狙いもあったのかもしれません。

《足利将軍御膳再現模型》〈京都文化博物館〉

こちらが京都展オリジナル企画、室町幕府第12代将軍・足利義晴が祇園祭を見物した際に供されたお膳。同時代の文献『祇園会御見物御成記』の記述をもとに、京都府立大学和食文化学科と大和学園京都調理師専門学校で和食文化を学ぶ学生たちが約1年をかけてレシピを再現したのだとか!

《江戸時代の花見弁当》〈北区飛鳥山博物館(東京)〉

博物館などで見かけるお花見のお重に実際どんな食べ物が詰められていたのかを再現したもの。お刺身も入ってますね……! そんなに遠出はしなかったのでしょうか?

《明治天皇の午餐会》〈1887年(明治20)5月13日の料理の再現模型/明治記念館〉

近現代に入ると、食卓が一気に西洋化。宮中晩餐会の正式料理には、フランス料理が採用されたそう。1887年の明治天皇による午餐会の食卓の様子。

庶民の食卓にも洋風や中華風のメニューが登場するようになった様子。1919年(大正8)4月、7月の『料理の友』の掲載レシピの再現模型は、かなり身近に感じられます。

《全国の雑煮》〈協力:奥村彪生監修/御食国若狭おばま食文化館〉

実は私はプライベートで一昨年開催されていた上野の和食展も訪れたのですが、ひときわ人だかりができていたのが全国のお雑煮のマップと再現模型の展示。こうした伝統的な行事にまつわる食も、和食らしさを形作る要素のひとつだと思います。

料理の道具を展示したコーナーでは、以前この連載で取材させていただいた堺刀司さんの庖丁もたくさん展示されていました! 取材の際に購入した庖丁、麻子先生も私も日々愛用しております。

江戸時代の浮世絵や文献から、当時の寿司や天ぷら、そばの屋台を再現したフォトスポット。江戸時代のお寿司、かなり大きめですね。

展覧会の図録や、和食展応援キャラクター・リラックマのオリジナルイラストを使用したグッズなど、オリジナルグッズも盛りだくさん! ミュージアムグッズって、ついつい買っちゃいますよね〜!

京都文化博物館の別館は、重要文化財にも指定されているモダン建築。日本の近代建築の祖ともいうべき辰野金吾とその弟子・長野宇平治が設計を手がけ、1906年(明治39)に竣工した日本銀行京都支店の建物でした。現在は講演会などさまざまなイベントの会場として利用されています。

この記事を書いた人

編集者 ふなつあさこ

ふなつあさこ

生まれも育ちも東京ながら、幼少の頃より関西(とくに奈良)に憧れ、奈良女子大学に進学。卒業後、宝島社にて編集職に就き『LOVE! 京都』はじめ関西ブランドのムックなどを手がける。2022年、結婚を機に奈良へ“Nターン”。現在はフリーランスの編集者として奈良と東京を行き来しながら働きつつ、ほんのり梵妻業もこなす日々。

元記事で読む
の記事をもっとみる