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銀座「日々」の目利きをも魅了する、荒川尚也さんのガラスの器とは? 5月には個展も開催【目利きの視線】

  • 2025.5.20

各界の目利きが注目する器やアート、暮らしの道具を紹介。今回は、原料の調合から手作りしているガラスの器について、日々(にちにち)ギャラリスト 根本美恵子さんに教えていただきました。

光を捉え、景色を織りなす荒川尚也さんのガラスの器

原料の調合から始まるガラスの美しさを味わって

ギャラリーが林立する銀座でギャラリストを務めること20余年、確かなセレクトで目の肥えたお客様を唸らせている根本美恵子さん。「日々」の設立当初から「美しく清らかで、毎日の暮らしに潤いをもたらしてくれる器」を紹介しています。そんな目利きが風光る季節に選んだのは、ガラス作家・荒川尚也さんの器。

「光を通して輝くガラスはドラマティックで、器にさほど興味のない方でも思わず手に取ってしまう魅力があります。なかでも荒川さんの作品は質が高く、グラスや茶杯の口当たりのよさといったら。洗練されて主張し過ぎず、陶器や漆器と並べてもいい景色を作ってくれます。器の醍醐味は取り合わせの妙ですから、そのもの自体が素敵なだけでは残念。料理やほかの器を引き立てる点でも荒川さんの作品はおすすめですね」

ガラスを「光を捉える機器」と考える荒川さんは、素材にこだわる作家でもあります。分業が一般的な業界で自家調合した原料を溶かしてガラスを作り、溶解炉の設計まで手がける作家は稀有な存在。

「僕が窯を構えた40年前の日本には陶磁器こそいいものがありましたが、ガラスの器はマシンメイドの大量生産品がほとんど。そうじゃない、でもバカラのような高級品でもない。折々の光を受けとめ、使う人の心を動かすガラスを作りたくて素材を追求したんです。自分で砂を溶かさないとわからないことがあります」と話します。

「高温で溶けたガラスは手で触れられず、成形には技術、体力、経験、瞬発力などが必須。つくづく大変な素材を扱いながら、常に新しいスタイルを追うバイタリティと尽きないアイデアには脱帽です」と根本さん。

5月の個展でどんな作品と出合えるのか「私自身がいちばん楽しみにしています」。

ここ数年、中国茶器に力を入れている荒川さん。ホウ珪酸ガラスを用いた茶器は耐熱性に優れ、熱いお茶も注げます(急熱急冷はNG)。茶海 W11×D6.5×H10㎝ 9,900円、茶杯 各φ7.5×H7㎝ 4,290円。(φ=直径、W=幅、D=奥行き、H=高さ。手作りのためサイズは作品によって若干異なります)

手工芸品のなかでもとりわけ美しいガラス 荒川さんの作品はさらに洗練度が際立ちます

上のガラスの器はすべて宙吹き技法によるもの。高温のガラスを吹き竿に取り、息を吹き込んで成形するには高度な技術が必要です。

すりガラスの急須はW16×D9.5×H10㎝ 30,800円。木葉形の茶そくはトレーにも。W18×D6×H4.5㎝ 18,700円。

独自の型にガラスを吹き込んで成形したトレーはW18×D18×H2.5㎝ 30,800円。

氷柱のような花器 φ11×H22.5㎝ 30,800円。縁に施したクラックが花留代わりになり「花がすっと収まります。気泡で枝の根元が目立たないのもいい」と根本さん。

日用の器のほか、アーティスティックな作品制作にも精力的。古い時計のゼンマイを再利用した「石に咲く花」は、ガラス製のハスの花が時間とともに開いたり閉じたり。「花に水を遣るように、毎日ゼンマイを巻かないと動かなくなってしまうんです。面白いでしょう?荒さんにはいつも驚かされます」と根本さん。作品の詳細は「日々」まで。

荒川尚也さん/1953年生まれ。北海道大学で農業工学を学んだ後、札幌市の豊平ガラス工場に入社。巳亦進治氏に師事し、吹きガラスの技術を習得。1981年、京都府京丹波町にて「晴耕社ガラス工房」を設立。
撮影╱荒川晋作

【SHOP DATA】日々

木や土壁など自然素材をふんだんに使った内装は、数寄屋建築に通じる建築家・木島 徹氏によるもの。障子から注ぐ光が作品を照らし、静謐な空気が漂います。樹齢1000年近い杉から作った展示台も必見。

2025年5月23日(金)〜28日(水)、「日々」で荒川尚也さんの個展を開催予定

東京都中央区銀座6-6-1
銀座凮月堂ビル 3階
☎ 03-3571-0520
営業時間/11:00〜18:00
(水曜は17:00まで) 木曜休
http://ginza-nichinichi.com

撮影/松村隆史 構成・文/早川ちかこ

※素敵なあの人2025年6 月号「目利きの目線 第22回」より
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。
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この記事を書いた人 素敵なあの人編集部

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