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28年前、日本中を笑顔にした“無名のヒロイン”…まだ何者でもなかった20歳がNHK朝ドラ主演女優へと羽ばたいた「原点の物語」

  • 2025.5.21
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(C)SANKEI

国民的アニメ『アンパンマン』の作者であるやなせたかしさんと小松暢さん夫婦をモデルに描かれる現在放送中のNHK連続テレビ小説『あんぱん』が毎話大きな話題を呼んでいる。

そんな“朝ドラの魅力”が改めて注目されている今こそ、振り返りたい作品がある。

遡ること28年前、時は1997年に放送された『あぐり』である。

その主人公・望月あぐり役を演じたのは、当時無名で本作が女優デビューとなった田中美里(放送当時20歳)だった。

大正から昭和を舞台に、激動の時代を生きる女性の人生を明るく力強く描いたこの作品は、放送当時も大きな反響を呼んだ。

そして何より田中美里という女優の“原点”を刻んだ作品といえる。

日本中が笑顔に励まされた朝

『あぐり』は98歳まで現役美容師を続けた吉行あぐりさんをモデルにした物語。

15歳での結婚、16歳での出産、若き夫の死、戦争、そして美容師としての道——激動の時代を生き抜く“働く女性・母親”あぐりの半生を、田中は丁寧にそして真っ直ぐに演じた。

ときに泣き、笑い、悩み、強くなる。長丁場の朝ドラだからこそ、田中の芝居には「成長の軌跡」がそのまま刻まれた。視聴者はその“変化”に共鳴し、毎朝彼女の笑顔に励まされた。

『あぐり』終了後、当然のように田中は一気に注目を浴び、多くのドラマや映画に出演するようになる。

また、多くの舞台にも果敢に挑戦、そして日本における韓流ドラマ人気を生み出した象徴ともいえる作品『冬のソナタ』ではヒロイン役のチェ・ジウの吹き替えを担当する。

前向きだったヒロイン

ヒロイン・あぐりの姿勢は、どこまでも前向きだった。

困難に直面しても「やってみる」「やってみないと分からない」という気概で歩み続ける。そんな姿は、バブルが崩壊後の1990年代の日本の朝に必要とされていた「希望の象徴」とも言えたのかもしれない。

田中美里が演じた“あぐり”には「演技を超えた人間味」が確かにあった。そしてそれは、彼女自身が役に正面から向き合っていたからこそにほかならない。

年月を積み重ねた現在も女優として活躍し続ける田中の姿は、かつての“無名ヒロイン”と変わらぬ純粋さが宿っているように見える。

その灯は今も消えない

28年前、まだ何者でもなかった彼女が演じきった“あぐり”。放送以降から現在まで数多くの作品が放送されているが、特別な存在として記憶に残り続けている。

理由はきっと、彼女が“芝居”ではなく“生きること”そのものを表現していたから。

これから先も、“あぐり”のように真っ直ぐに、そして静かな情熱を持って歩む彼女の姿を、視聴者として期待せずにはいられない。


※この記事は執筆時点の情報です。