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ヴィヴィアン・ウエストウッド初のブライダルファッションショーが開催。アンドレアス・クロンターラーが語る、亡き妻との思い出

  • 2025.5.13

ヴィヴィアン・ウエストウッドVIVIENNE WESTWOOD)のランウェイショーを追う人なら、そのラストを飾るのはいつも決まってブライダルルックであることをご存知だろう。「ファッションショーでは常にウエディングドレスがあります」とクリエイティブディレクターのアンドレアス・クロンターラーは話す。「私はヴィヴィアンとともにスタートしたときからウエディングドレスを手がけてきました。35年間、一度も欠かすことなく。それに、いつだってギリギリなんですよ。ショーの数日前になって、『じゃあ、ウエディングドレスは何にする? そうだ、ウエディングドレスを作らなきゃ。そもそも、ウエディングドレスって必要?』と考え始める。そしてもちろん、いつも必ず作るのです」

しかし先月、クロンターラーは新たなチャレンジに直面した。それは、バルセロナ・ブライダル・ファッション・ウィークの目玉として、ブライダルに特化したヴィヴィアン・ウエストウッドのランウェイショーを披露することだった。

ここ数年、ブライダルコレクションはブランドの大きな柱となっており、現在は専用のアトリエに加え、43の専売店を世界中に構えている。そしてそのシグネチャーであるコルセットスタイルのドレスを着たいと切望する花嫁たちは後を絶たない。「(ブライダルコレクションは)ブランドのなかでとても美しく重要な位置を占めています」とクロンターラー。「どんどん大きくなっていったので、整理していきました」

ブライダルルックを作ることは、デザイナーの内なるロマンティックな心をくすぐるようで、「私たちは今、本当に奇妙な時代に生きています。そんななかでともに時を刻み、人生を分かち合う結婚というものには、とても大きな意味があると思うのです」と彼は続ける。「(結婚とは)コントロールできるもの。一緒にいる時間をコントロールできるし、良いことも悪いことも共有できる。悲しみは半分に、喜びは倍になる」。30年近く創業者の故ヴィヴィアンと連れ添った彼は、このことを身を持って知っているのだろう。

レディ・トゥ・ウェアではアバンギャルドなデザインを手がけるクロンターラーだが、ウエディングドレス作りに対するアプローチはどちらかと言えばトラディショナルだ。彼はヴィヴィアン・ウエストウッドを纏った花嫁たちに特別な感覚を味わってもらいたいと願っているそうで、「ヴィヴィアン・ウエストウッドを着て得られるものは、ほかではなかなか得られないものだと思います」と自信を見せる。「普段はウエストウッドの服を着ない花嫁や、こういった服を買う余裕がない花嫁もいると思います。でも、結婚式のために私たちのもとへ来てくれる。私たちは堅苦しくなりすぎず、女性を素敵に見せるのが得意だと思っています」

コルセットはこのブランドのブライダルコレクションのシグネチャーとなる要素だが、ほかにもファスナーや交換可能なスカート、取り外し可能なトレーンなどのディテールを取り入れることで、着心地と柔軟性にも重点を置いている。「メインのトップはかなり構造的で複雑なものですが、スカートは簡単に変えることができ、銀行口座が破綻するほど(高額)でもありません。でも、それによってルックはがらりと変わるんです」とクロンターラーは言う。「私はいつも、こういうちょっとしたオリジナリティが好きです。ドレープもかっちりとさせず、少し動きを持たせています」

Vivienne Westwood - Barcelona Bridal Night 2025

ランウェイプレゼンテーションや大規模なトレードショーが数日間にわたり行われるバルセロナ・ブライダル・ファッション・ウィークでヘッドライナーを務めることを決めたのは、ヴィヴィアン・ウエストウッドのブライダル部門にとって大きな一歩となったようだ。「チャレンジではあるけれど、ここでは一分一秒が楽しい」とクロンターラー。「こうして常に白に囲まれた世界にいると、どうすればユニークなものになるか、本当に集中して考えなければなりません」

ショーのラインナップをまとめるにあたっては、より商業的なデザインと、プレゼンテーションを盛り上げるステートメントルックのバランスを取ることが鍵となった。「もちろん、これはファッションショー。いわばファンタジーです」と彼は付け加える。「でも同時に、現実的なものも取り入れようとしました」

コレクションでは、クラシックなホワイトをふんだんにフィーチャーしながらも、淡いピンクやヴィヴィアン・ウエストウッドの歴史を通して使われてきたバラのプリント、そして“サムシング・ブルー”のアクセントも添えた。「淡い色を使うのは美しいと思いますが、人それぞれ肌の色は違いますし、時にはローズのような色合いを取り入れるのも素敵です」とクロンターラー。国際色豊かな顧客のなかには、自国の伝統に合ったカラーをリクエストする人もいるという。

また、モダンな花嫁のためにデザインされたテーラードルックも多数あった。「すごくマニッシュなスーツもあります。彼のジャケットを盗むという発想から生まれました」とクロンターラーは茶目っ気たっぷりに笑う。さらにキャスティングにおいては性別に関係なくモデルを起用し、クロージングにはクロンターラー自身も登場。テレビアニメ「ザ・シンプソンズ」のTシャツに床につくほどの長さのスカート、白いヴェールにフローラルモチーフをあしらったショールを合わせた姿でショーを締めくくった(ちなみにこの前日、クロンターラーは「男の子にウエディングドレスを着せてもいいかもしれない」とほのめかしていた)。

大半のルックはショーのために制作された新作だったが、クロンターラーはインスピレーションを得るためにブランドの膨大なアーカイブにも手を伸ばした。オープニングのガウンは、亡き妻ヴィヴィアンが1995年の「Vive la Cocotte」コレクションで発表したドレスを再現したもので、画家フランソワ・ブーシェのロココ絵画「ポンパドゥール夫人」をモチーフにしている。「ヴィヴィアンが愛したものでありますが、私が愛したものでもあります。私たち二人ともが一緒になってひどく愛したものなのです」とクロンターラーはその思い入れを語る。「絵画のなかであんな姿をした女性はいません。人類史上最も美しいドレスです」。この有名な作品は、ヴィヴィアンのお気に入りの美術館だったロンドンのウォレス・コレクションに飾られている。

Vivienne Westwood - Barcelona Bridal Night 2025

クロンターラーは今回初めて、真っ白の華々しいガウンを制作。80年代にヴィヴィアン・ウエストウッドのショーを歩いたモデルのひとり、シモネッタ・ジャンフェリチにそれを着用するよう依頼した。「ルックの制作中、これを纏ったヴィヴィアンの姿をよく思い浮かべていました」と彼は振り返る。「彼女はきっと気に入ったはず。彼女なら絶対に虜になったことでしょう」

Vivienne Westwood - Barcelona Bridal Night 2025

Text: Shelby Wax Adaptation: Motoko Fujita

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