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夜に眠れない…「不眠症」の可能性も 放置するとうつ病リスク増 精神科医が教える原因&受診目安

  • 2025.5.7
不眠症の原因とは?(画像はイメージ)
不眠症の原因とは?(画像はイメージ)

夜に寝ようとしても、なかなか眠れないことはありませんか。このような日がしばらく続いた場合、「不眠症」が原因かもしれません。不眠症の原因や受診目安などについて、ライトメンタルクリニック(東京都新宿区)理事長で精神科専門医、精神保健指定医の清水聖童さんに聞きました。

精神疾患の前兆症状として不眠の症状が出ることも

Q.そもそも、「不眠症」とはどのような病気なのでしょうか。発症の原因や発症しやすい人の特徴も含めて、教えてください。

清水さん「不眠症(Insomnia disorder)とは、睡眠の開始、維持が困難になり、日中の生活に支障を来す病気です。入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒のいずれか、または複数が認められ、症状が慢性的に続く場合に診断されます。不眠症の原因はさまざまですが、大きく次のように分類されます」

■不眠症の主な原因(1)精神疾患との関連精神疾患がある患者の多くが不眠症を伴うことが分かっています。不眠症は単独で発症することもありますが、精神疾患の症状の一部として発現することが非常に多いです。当然、身体的な要因や環境的な要因も存在しますが、大部分がストレスや精神疾患などが要因とされています。

・うつ病(MDD):不眠症はうつ病の主要症状の一つであり、特に早朝覚醒が特徴的です。さらに、うつ病患者の70%以上が不眠の症状を訴えます。

・不安障害:過剰な心配や恐怖によって交感神経が活性化し、寝つきが悪くなります。

・統合失調症:精神病症状の悪化とともに、不眠の症状が強くなりやすいです。

・双極性障害:理由が不明確な不眠、過眠を繰り返すのが特徴です。

・心的外傷後ストレス障害(PTSD):悪夢やフラッシュバックにより、睡眠が著しく妨げられることが多いです。

不眠症はこれらの疾患の前触れの症状として現れることもあり、早期の睡眠障害の管理が精神疾患の発症や悪化を予防する可能性があります。

(2)生理的要因・早朝勤務や深夜勤務など日中以外の時間帯の勤務、不規則な生活習慣が原因で体内時計が乱れる「概日リズム睡眠障害」が起きる・慢性的なストレスや高ストレス環境が原因で交感神経が過剰に活動・加齢により、睡眠や覚醒のリズムを調節するホルモンである「メラトニン」の分泌が低下

(3)環境・生活習慣の影響・カフェインやアルコールの摂取・スマホやパソコンなどの電子機器から発せられるブルーライト・騒音や光、温度など寝室の環境が影響

(4)身体的疾患・腰痛、関節痛などの慢性疼痛(とうつう)・睡眠時無呼吸症候群などの呼吸器疾患・神経疾患(パーキンソン病など)

不眠症を発症しやすい人の特徴としては、精神疾患に罹患している人以外でも、女性(特に更年期以降)、高齢者、ストレスを抱えやすい性格の人、深夜勤務や早朝勤務のような不規則な勤務をしている人などが挙げられます。

Q.不眠症の具体的な診断基準はあるのでしょうか。また、医療機関を受診する目安、受診すべき診療科はありますか。

清水さん「不眠症は、DSM-5(精神疾患の診断基準)およびICD-11(国際疾病分類)に基づいて診断されます。主な基準は次の通りです」

■診断の基準・「寝つきが悪い」「途中で目が覚める」「早朝覚醒」のいずれかの症状がある・症状が週3回以上、3カ月以上続いている・日中に疲労や集中力低下、気分障害などの機能障害がある・他の医学的疾患や精神的疾患、薬物の影響では説明できない

■受診の目安次のような症状に該当する場合は、医療機関の受診を検討してください。

・布団に入っても30分以上眠れない状態が続く・週3回以上、夜間覚醒がある・不眠が3カ月以上続いており、日中の生活に支障が出ている・日中に極端な眠気や倦怠(けんたい)感がある・気分の落ち込みや意欲低下など、うつ症状がある

■受診すべき診療科・精神科または心療内科:ストレスや精神的要因が強い場合・睡眠外来:専門的な睡眠検査が必要な場合・内科:基礎疾患が疑われる場合

Q.不眠症になった場合、どのような方法で治療を行うことが多いのでしょうか。

清水さん「現在、不眠症の標準治療として最も推奨されているのは認知行動療法です。認知行動療法とは、下記の方法を組み合わせて行われる、心理療法の一つです」

・睡眠制限法:ベッドにいる時間を制限し、睡眠の質を向上させる。・刺激制御療法:ベッドを「寝る場所」として関連付ける。・深呼吸、筋弛緩(しかん)法などのリラクゼーション訓練。・認知療法:睡眠に関する不安や誤った考えを修正する。

しかし、医療機関では、認知行動療法は基本的に保険診療の対象外となります。そのため、経済的な都合も考慮され、薬物療法がしばしば行われています。次のような薬剤が用いられます。

・ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系:短期的に使用・メラトニン受容体作動薬:概日リズム調整に有効・抗精神病薬:不安やうつ、イライラ、食欲低下などを伴う場合・抗うつ薬:不安やうつを伴う場合

不眠症を放置すると?

Q.ちなみに、不眠症を放置した場合、精神面などにどのような影響を与える可能性があるのでしょうか。

清水さん「不眠症を放置すると、『うつ病や不安障害のリスク増加』『注意力、記憶力の低下』『高血圧や心血管疾患のリスク増大』『免疫機能の低下』『事故や作業効率の低下』といったデメリットが生じます。特にうつ病の発症リスクが高まることが知られており、不眠症の治療がうつ病の予防にもなる可能性が示唆されています」

Q.不眠症を防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。家庭でできる対策はありますか。

清水さん「生活習慣を改善することが大切です。次の6つの対策が有効です」

(1)就寝時間、起床時間を一定にする(2)就寝前にスマホ、パソコンの使用を控える(3)カフェイン、アルコールの摂取を避ける(4)適度な運動を行う(5)朝、日光を浴びる(6)瞑想(めいそう)やリラクゼーションなどを取り入れ、ストレスを管理する

オトナンサー編集部

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