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医学的に正しい「デスクワーク時の座り方」はこれ…3時間集中しても体が軽い人がこまめにやっている"動き"

  • 2025.5.7

いい姿勢とはどのような状態なのか。日本整形外科学会認定スポーツ医の歌島大輔さんは「実は『いい姿勢』に医学的根拠はない。血液や酸素のめぐりを考えればこまめに『動く』ことこそ大切だ」という――。

※本稿は、歌島大輔『じゃないほうの肩こり』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

腰を手で押さえて座っている人
※写真はイメージです
肩を守る「ワンアクション」が人生を変える

これまでに私が出版した健康実用書では、肩関節の健康を維持・改善するトレーニング法やウォーキングのハウツーなどをご指南してきました。

しかし、『じゃないほうの肩こり』(サンマーク出版)はビジネスパーソンが手に取りやすい新書サイズで、健康実用書とはいえ、読み物の要素が大きく、構成スタイルがやや異なります。

そこで、シンプルかつプリミティブな発想で、「これだけ!」に大きな意味のあるケア法をお伝えし、忙しい毎日のなかでも無理なく続けていただけるようにしたいと考えました。結果、ご紹介するのは「ハイパワーポーズ」です。

いつでも気づいたときにワンアクションでポージングしていただくだけ、なのですが、これが実は肩関節はもとより、脳・心・身体の健康づくりにとても重要です。

日々のマインドやパフォーマンスをも左右すると、いくつもの医学論文で注目されているセルフケア法です。

後に詳しく述べますが、「ハイパワーポーズ」はしばらく、気持ちいいと感じていられる間だけ、その姿勢になっていただければOKというものです。

「ずっと姿勢を保たなければならない」「いつも姿勢を気にしていなければならない」などと思う必要はないので、気軽に取り組んでいただけるのではないでしょうか。

ちょっといいポーズでいる時間がだんだん長くなる。それが目標です。

そうなると見た目もさらに、はつらつ、堂々と、若々しく見えて一石二鳥ではないかと思います。

科学が証明した「開く姿勢」の4つの効能

いくつかの論文で解説されている「ハイパワーポーズ(身体を開くこと)の効能」をご紹介すると、以下のとおりです。

・意識して身体を開く姿勢をとることは、革新的なアイデアを生み出す創造性を高める(*1)
・何かを学ぶ折に身体を開く姿勢でいると、ポジティブな気分で勉強することができる(*2)
・ハイパワーポーズは自信やポジティブなセルフイメージ形成に役立つ(*3)
・ハイパワーポーズは、減少すると精神の安定に影響する男性ホルモン「テストステロン」を上昇させ、ストレスが増えたときに増加するため“ストレスホルモン”と呼ばれる「コルチゾール」を減少させる。その結果、パワフルなマインドでリスクに立ち向かう姿勢(リスク耐性)が高まる(*4)

などの研究結果が論文になり、発表されています。こうしたテーマは根源的な健康づくりにつながるものなので、私も大いに関心を寄せる分野です。

最新の現代医学を担う医師だからこそ、症状に対処する医療に限らず、病気やトラブルを寄せつけない「0次予防」の健康づくりに対して、目を向けていなければならないと考えているからです。

ホルモンバランスを整える「開く姿勢」の力

読者の方にも、ブレイン(脳)ヘルスや、マインドフルネスなどに関心をお持ちの方は多いのではないでしょうか。それが、ワンアクションで、誰でもすぐできるポーズをとるだけで、このような効果が望めるといいます。

最後の、ホルモン分泌との関係を明らかにした論文は、人がもつ健康になる力の真価を感じて、私は非常にワクワクしながら読みました。

ただし、それ以降の再現性の検証において議論がなされてきたようで、結論としては、ホルモンレベルでのエビデンスは不十分というのが現状です。しかし、私は閉じた姿勢より開いた姿勢の方が主観的にポジティブになれるのは間違いないだろうと考えていますし、主観とマインド(脳)は密接に関連しています。のちに述べるように肩周りのメカニズムを考えたとき、開いた姿勢を取ることのメリットはとても大きいといえると思っています。

みなさんはぜひ実際に「ハイパワーポーズ」でからだをリセットする習慣をもって、ご自分のからだで科学的根拠を実感してみてください。もちろん私も、仕事の合間に「ハイパワーポーズ」でリセットしています。

両手を上げて伸びをする女性
※写真はイメージです
「閉じた肩」はトラブルをまねく

肩こりはじめ肩関節の病気、問題には、巻き肩や猫背など「開く姿勢(ハイパワーポーズ)」とは真逆の、「閉じた姿勢(ローパワーポーズ)」が大いに関係しています。

ポーズをとってみればわかりますが、ハイパワーポーズで巻き肩や猫背にはなれません。ポイントとしては「左右の肩甲骨を背骨にちょっと寄せる」、「過度にうつむかない」に尽きます。詳しいハウツーは後ほどご紹介しましょう。

首や肩、背中、腰のこりや痛み(背部痛)すべてに、不良姿勢である「閉じた姿勢(ローパワーポーズ)」が関わり、症状を増悪させるリスクだと言ってもいいでしょう。

ですから、肩周りのケアにもってこいのポージングが「ハイパワーポーズ」だと、肩の専門医として自信をもってお勧めします。

どんないい姿勢でも「ずっとそのまま」はNG

ただし、先にも述べたとおりハイパワーポーズがいいからと言って、ずっとその姿勢でいることをお勧めするのではありません。

どんないい姿勢も続ければ疲れ、自然に崩れますから、同じ姿勢を保てと言うのは非現実的。そして非医学的です。

そもそも医学的には「いい姿勢」は定義されていないようです。私が調べた限り、科学的根拠を示し、作業や活動に関係なく万能な「いい姿勢」を提示した論文などは見つかりませんでした。

むしろ同じ姿勢を続けず、姿勢が崩れていくことも含めて「動く」ことこそ大切です。姿勢が変化することによって、偏って負荷がかかっている器官のこりや疲労を防ぎ、血液や酸素のめぐりを改善することになるので、医学的に「姿勢を保ちましょう」とは勧められないと考えます。

そして、みなさん仕事や家事などの作業中に「姿勢に意識を向け続ける」のは難しいのではないでしょうか。そんなことをしていたら、集中力が途切れ、パフォーマンスの質が低下してしまうのではないかと思います。

ですから、作業の合間に、気分転換を兼ねてひと息つく感じで、ハイパワーポーズをとってみるだけでいいのです。

それさえも難しく、集中すると2、3時間、固まったまま作業に没頭してしまうのが常の人は、いっそのこと「ハイパワーポーズをとらずにはおられない」環境を用意してしまう、というのも一手だと思います。

「良い姿勢」になる環境作りのコツ

現代ではパソコンを利用して作業をしている人が多いと思いますので、パソコン操作をする環境を、一時的に「ハイパワーポーズをとらずにはおられない」環境に変える例を図解しましょう。

いつもの環境と、自ずとハイパワーポーズにならざるをえない環境。交互に使えば、姿勢を意識せず作業に集中しつつ、セルフケアも自然にできてしまいます。

肩甲骨を寄せるのに「広めのバンザイ」「腰に当てる(やや後ろが効果的)」「頭の後ろにまわし首を支える」も◎、作業の合間に、身体をリセットするよう、しばらくポージング。気持ちいいと感じられる間、続けてOK! そのまま作業するのも◎。しばらくしてポーズが崩れるのは自然なこと。気にしないで、またしばらくしたらポージングを!

【図表1】ハイパワーポーズ
出典=『じゃないほうの肩こり』
【図表2】自然に「ハイパワーポーズ」になるPC環境
出典=『じゃないほうの肩こり』
無意識の体の声に耳を傾けてみよう

ご紹介した「ハイパワーポーズ」そして「自然に『パワーポーズ』になるPC環境」は、いつでも取り組んでいただける、まさにいますぐできることです。

歌島大輔『じゃないほうの肩こり』(サンマーク出版)
歌島大輔『じゃないほうの肩こり』(サンマーク出版)

集中して作業をした後、無意識に「のび」をしていることはありませんか? 疲れを感じて、身体が自然に動いて、固まっていた筋肉をほぐしたり、酸素をたっぷり吸ったり、私たちは無意識にそのような行動をとって、自分を癒していることがあります。

それはとても大事なこと。ハイパワーポーズでのリセットとそのような自然な習慣を続けていただければ、ひとまず良いのですが、もうちょっと身体を動かし、肩関節周りを動かして、リフレッシュしたいタイミングもあるかもしれません。

そうしたときに、同じように気楽な気持ちでできる体操をご紹介しましょう。

気楽にできるとはいえ、いずれも研究結果が示されている体操ですから、継続トライする価値は十分あります。

「10秒やって10秒休むだけ」カンタン体操とは?
【図表3】サボってる風体操(等尺性頸椎伸展訓練)
出典=『じゃないほうの肩こり』
【図表4】首すっきり超ハイパワー体操
出典=『じゃないほうの肩こり』

■参考文献
(*1)Andolfi, V. R., Di Nuzzo, C. & Antonietti, A. Opening the mind through the body: The effects of posture on creative processes. *Thinking Skills and Creativity* **24**, 20-28 (2017)
(*2)Zabetipour, M., Pishghadam, R. & Ghonsooly, B. The impacts of open/closed body positions and postures on learners’ moods. *Mediterranean journal of social sciences* **6**, 643-643 (2015)
(*3)Brinol, P., Petty, R. E. & Wagner, B. Body posture effects on self-evaluation: A self-validation approach. *Eur. J. Soc. Psychol.* **39**, 10531064 (2009)
(*4)Carney, D. R., Cuddy, A. J. C. & Yap, A. J. Power posing: brief nonverbal displays affect neuroendocrine levels and risk tolerance. *Psychol. Sci.* **21**, 1363-1368 (2010)
(*5)Mahmut Alpayci et al. Isometric Exercise for the Cervical Extensors Can Help Restore Physiological Lordosis and Reduce Neck Pain: A Randomized Controlled Trial Am J Phys Med Rehabil. 2017 Sep.
(*6)Min Yong Lee et al. Efficacy of Modified Cervical and Shoulder Retraction Exercise in Patients With Loss of Cervical Lordosis and Neck Pain Ann Rehabil Med. 2020 Jun.?

歌島 大輔(うたしま・だいすけ)
日本整形外科学会・日本専門医機構認定整形外科専門医/日本整形外科学会認定スポーツ医
1981年生まれ。山形大学医学部卒業。肩関節、肩関節鏡手術、スポーツ医学の専門家として、フリーランスの立場で複数の整形外科でさまざまな肩治療を行う。肩関節鏡手術は年間約400件と全国トップクラス。診療のかたわら、「医学的根拠のあるセルフケアを」との信念からYouTube開設、登録者20万人と人気を呼んでいる。

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