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「今は大人の反抗期、かも?」新天地へと踏み出した俳優・比嘉愛未、38歳の現在地

  • 2025.5.7

デビュー20周年を迎え、所属事務所の移籍を発表した俳優の比嘉愛未さん。この新たな門出に際して、これまでに見たことのない魅力を引き出すシューティングを敢行。比嘉さんは現在、otona MUSE世代ど真ん中の38歳。「リセットと構築を繰り返してきた」という彼女が、大人になった今思うこと、そして素顔の自分について……。俳優というフィルターを外し、同世代の女性として伝えたい本音をたっぷりと語ってもらいました。

年齢的には「もういい歳」だけど、自分ではまだまだ「ペーペー」だと思っています

――初めてのオトナミューズの撮影はいかがでしたか?

比嘉愛未(以下、比嘉) シンプルに楽しかったです。20代の私だったら今日みたいな撮影は緊張していたと思うんですよ。うまくできるかなとか、初めてのスタッフさんとのセッションに馴染めるのかなとか、そういう未知の不安みたいなものが多かったんですけど、今はそれをポジティブに捉えられるようになってきて。やっぱり歳を重ねると初めての経験って、どうしても減ってくるじゃないですか? だからこそ、こうしてスタッフさんとアイディアを出し合って、それぞれの感性を集中させて、新しい自分の一面を写真で切り取ってもらえたことに、すごく喜びを感じました。これはファッションの撮影だけじゃなく、お芝居の現場でも同じ。チームの一部になれることに対して年々尊さを感じていて、今日も「あ、私は今楽しめているな」と感じられました。
 
――オトナミューズ読者と同世代の比嘉さん。ご自身の年齢をどう捉えていますか?

比嘉 世間一般的に考えると「もういい歳だね」と言われる年齢ですよね。でも自分ではまだぜんぜんペーペーだと思っています。というのも、私は要所要所のタイミングですべてをリセットするタイプで。たとえば学生時代、ちょっと内向的だった自分を変えたくて、スカウトされてモデル事務所に入ったり、そういうターニングポイントになるところで、1回自分をリセットしてまた再構築して、を繰り返してきたんです。だから感覚的には、これまでの38年間は地続きじゃないし、累計の数値とは思っていなくて。よく言われる言葉ですけど、「年齢はただの数字」という表現が今の私にはしっくりきますね。
 
――積み上げてきたものをリセットしちゃうのは、もったいなくないですか?

比嘉 むしろそこに固執し過ぎたり執着し過ぎたりする方がもったいない気がします。積み上げてきたものを守ることも大事ですけど、私はつねに進化したい派なんです。それに年齢以上に達観していて落ち着いている方や、逆に先輩なのにチャーミングで可愛いなって思う方もいっぱいいらっしゃいますしね。だから数字で見る年齢に囚われすぎず、その人のオリジナルでいいんじゃないかなって思っています。

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――心強い! 年齢を重ねると「この歳なのにこんな感じで大丈夫なのかな?」とか、不安になることもあると思うんです。

比嘉 その気持ちもわかります。だからやっぱり大事なのは、まわりと比べないことですよね。比べようとしてしまった瞬間、ちゃんと俯瞰で見て、「ダメだよ! よくないループに入ってるよ」と自分で自分を諭しています。そういうときは1回リセット。いいじゃないですか、何回でもまっさらな状態に戻ったって。
 
――そんな風に思えるようになったのは、なぜでしょう?

比嘉 実は私、自分の中で「暗黒期」と呼んでいる時期があって。小学校高学年から中学にかけてなんですけど、その時期が人生で一番苦しかったんです。なんであんなに辛かったんだろうと振り返ってみると、それは多分、まわりから自分がどう見られているかをつねに気にして、怯えていたから。そうした時期を経て、いろんな人と出会って学んで、今度は自己発信でどう表現できるのかを考え出したら、まわりの目はどうでもよくなってきたんです。そうするとまたおもしろい化学反応が起きたりとか、相手に対しても肯定的になれたりもして。いっぱい考えてきた結果たどり着いたのが、人はそれぞれでいいということ。なんて長々と語りましたが、ここまで考えて抜いて構築したものを封印して、またリセットしたくなっちゃうんですけどね(笑)。

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――リセットというのは、どうやってされてるんですか?

比嘉 もちろん急に「はい、明日からリセット!」とはできないですよ。けど意識してコントロールすれば、ふと変われるんですよ。なんだろう、必要なタイミングで必要な人と出会って、そこにはいい出会いもあれば苦しい出会いもあるけど、それを徹底的に考えてチョイスしていれば、徐々に自然とまわりも変わってくるというか……。なんだか私、すごく難しいこと言ってますよね?
 
――ものごとをいろんな角度から見て考えれば、自然と変わっていくということですかね?

比嘉 そうです、そうです。小さいころからそうしてきたので、これは自分の性質的なものなのかもしれません。
 
――お話を聞いていると、すごく自分と向き合う時間を大切にされているんだなと感じます。それと同時に、俳優業は他者からの評価にも向き合わないといけないお仕事ですよね。

比嘉 そうですね、表に出るお仕事なので、いろんな意見をいただきます。ただこうやってインタビューしてもらえるのもこの職業だからこそで。そのたびに内観して、自分を深掘ることもできるので、本当にいろんな角度から自分っていうひとつの生命体をずっと見ている感じ。リセットしたりくっつけてみたり、自分を通して実験しているというか……。なんとなく伝わりますかね?
 
――伝わっています! ちなみに先ほど「暗黒期」のお話がありましたが、今は何期ですか?
 
比嘉 今はなんだろう? 「自己発信期」ですかね。暗黒期のあと、20歳から35歳くらいまでの成長期があって、35歳からはまわりから求められることだけじゃなく、自分のアイディアや希望を発信することを楽しめるようになったので、自己発信期なのかなと。もちろん今でも成長していたいですけど、区切るならそうですね。あ、でも今現在はちょっとした反抗期も入ってきたかもしれなくて……。

10代の暗黒期、20代〜30代前半までの成長期を経て、今は自己発信期+反抗期に突入しました(笑)

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――大人の反抗期、きちゃいました!?

比嘉 そうなんです、我ながらグチャグチャですよね(笑)。実は去年くらいから一回リセットしたいっていうモードがまた始まって。何かがあったわけではないんですよ。ただ自然とそうなってきたんですよね。今、自分が何をしたいか、何を求めるかを考えたら、「変えたい! なんかこのままじゃ嫌!」と反抗期がはじまり、それが絶賛今も続いている状態。だから今日の撮影でメイクとファッションで、どんどん違う自分に変えてくださったのを見て、すごくワクワクしました。パブリックイメージの“The女優”っていう私の殻を破れたのかなと。
 
――パブリックイメージに対する反抗心もあるんですね。

比嘉 それはもうずっとです。 みなさんに知ってもらえてこそパブリックイメージができると思うので、そういう意味ではありがたい気持ちもあるんですけど、正直もういいんじゃないかなと。20代のころは、求めてくださるイメージがあれば、それも愛情だと思って期待に応えようとがんばっていたんです。けどだからこそ、そろそろもうよくない? というのが本音。私がこれまで演じてきた役柄って、どちらかと言えば、正義感が強くてしっかりした女性や清楚な役が多かったので、そういう役に近いイメージを抱いてくださる方もいると思うんですけど、実際の私はぜんぜんそんな感じではないんです。本当の私はきっと、沖縄の大自然の中でわんぱくに遊んでいた10代の自分のまま。最近になって、まわりの方から「気取ってないね」とか「天真爛漫だね」と言っていただくことが前より増えてきたのですが、内心それがすごくうれしいです。 型にはまらず、なにごとも楽しめる大人でいたいですよね。
 
――「楽しめる大人」って素敵な言葉ですね。

比嘉 すごくいいですよね。「自分はこうあらねば」みたいなものを背負ってしまうと、そこに当てはまらずイライラしたり、なんか違うなって思ったりしてしまいそうだけど、毎回がゼロスタートだと思えば、どんなことも楽しめるはず。そう考えるようになってから、どんどん失敗も怖くなくなってきました。若いころはわりと「ここで失敗したら次はないんじゃないか」と恐れていたんですけど、今はどんな人でも失敗するんだから大丈夫って思えるようになってきて。変にプライドを持たず、背負わず、だけど経験から方向転換の術は知っている。だから、前よりも純粋に楽しめるようになってきたのかな。ただ逆に言うと私は、なんとなくの成功法をわかった上でそれに従わないから、あざとさが足りないのかなとも思っていて。カッコ悪くても素直にありのままの自分を受け取ってほしい、怖くても曝け出す方が自分らしい、そう思っちゃうんです。かっこいい? いやいや、これからはあざとさや自己プロュース力が必要になってくるのかもしれませんね。
 
――今の自己発信期+反抗期が終わったら、次はなに期が来るんでしょうね。

比嘉 もしかしたら、また暗黒期が来るかもしれないですよね。でも生きていればいろいろあるのが当たり前で、それすらも楽しめたら最高じゃないですか? 私、ハプニングがない人生はつまらないと思っているんですよ。安定思考よりも、攻めていきたいタイプ。じゃないと、すべてを捨てて沖縄から東京に出てこないです。あの時の行動力は、自分でも「我ながらよくやったぞ」と言いたくなるくらい、人生最大の決断でしたから。

素顔の比嘉愛未には「自由人」という言葉がぴったりだと思います

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――すでに意外な一面をたくさん知られた気がするのですが、役を演じてない素顔の比嘉愛未を一言で表すなら?

比嘉 (即答で)自由人! 考え方にファッション、音楽、カルチャーもコレ とひとつに決めず、そのときどきで興味の矛先が変わっていくんです。さらに言えば、人間関係もそうで。自分のベースとなるようなずっと変わらず大事な人たちはいますけど、新しい出会いも楽しむし、かと思えば、すごく一人になりたいときもある。そういう自分の感覚を偽らないようにしているので、私は「自由人」なのかと思います。
 
――まわりの人はその変化にびっくりされませんか?

比嘉 「はい、出たー」みたいな感じで言われます。そうやって私を野放しにしてくれる仲間がいるから、安心して自由でいられるのかもしれません。
 
――自由な部分の他、ご自身の性格で気に入っているところは?

比嘉 人に興味あることですかね。人見知りもないですし、子どものころから人間観察が好きで、それがこの仕事にも活きているなと感じます。とは言え、探究心のままにグイグイ行くわけではないですよ。それこそ昔、グイグイ行って失敗したことがあるので、今はいったん見極めてから、じっくりと相手を観察するようになりました。俳優業って、共演者さんとスタッフさん合わせて、毎クールのように40~50人の方と関わるんですよ。しかもそれぞれがその分野のスペシャリストなので、本当におもしろい方ばかりで。20年俳優業を続けて、人との関わりを楽しめるこの性格が好きになってきました。人に出会って観察して、人を知ることに無条件でワクワクするんです。
 
――まさに俳優業はぴったりですね!

比嘉 今世でこの仕事に出会えてラッキーでした。けど、だからといって俳優業に固執していません。ずっと役者でいたいですけど、役者じゃなきゃ生きていけないとも思ってない。それに究極を言えば、いわゆる“仕事”とは思ってないのかもしれません。もちろんそれで生活しているので仕事ではあるんですけど、童心の部分が大きいからか、作品づくりであり人とのコミュニケーションの場という認識で。どうしても仕事って聞くと、需要と供給で成果を出さないといけないものって感じがしません? それよりはある意味、グループ活動みたいな、みんなでモノづくりを一緒になって楽しんでいる感覚に近いかもしれません。
 
――ということは仕事とプライベート、オンオフの境界線がないんですかね?

比嘉 仕事とプライベートが一緒になってきちゃったなとは思います。なので、最近は急に思い立っては旅行したり絵を描いてみたり、あえてインプットの時間をつくるようにしています。じゃないと私、家に帰っても「あのシーン、こうすればよかったかな?」とかずっと考えちゃうんですよ。それはそれでいいんですけどね。ただいくら仕事とは思っていなくても、アウトプットし続けるとどうしたってカラカラになっちゃうので。それこそ、オフにはよく沖縄に帰ったりもしています。地元は、家族や大事な友だちに会うと自然と仕事から離れて、自分のルーツに帰れる場所ですね。
 
――地元に帰ると、すべてのスイッチがオフになる感覚はわかります(笑)。

比嘉 それが普通ですよね? 誰にとっても地元は、なにも頑張らなくてもいい、すべてを受け入れてくれる場所だと思います。地元に帰ったときくらい、甘えたっていいじゃないですか。度が過ぎたらダメですけど、ちゃんと甘えられる大人ってすごく素敵だと思いますよ。それが可愛らしさだったり自由さだったり、魅力にも繋がる気がします。

自分で選べる選択を持った大人は、すごく自由。どんどん楽しんでいってほしい!

――比嘉さんにそう言っていただけると、すごく安心します。オトナミューズ世代の女性って、これまで歩んできた人生でいろいろな立場の人がいるじゃないですか。だからこそ、ふと立ち止まってしまうこともある気がして。

比嘉 私もここまでくるのに紆余曲折いろんな経験があって、今ようやく自分を肯定できるようになっているので、そう言っていただけるとうれしいです。もちろんそれぞれの生き方があるので、私の考えがすべてとも言えないんですけどね。たとえば、私は未婚で子どももいませんが、正直に言うと、それに悩んだ時期もありました。世間的な価値観に合わせて考えていたんでしょうね。でも今になって思うのは、私が選んできた私の人生だから、タイミングが今じゃないと思えたなら、それは恥ずかしいことないし、怖くもなくなってきて。でもだからといって、まだ完全にそう思えるようになったというわけでもない。子どもを連れた方を見ると、可愛いなって思いますしね。ただ逆に言えば、向こうから見るとこちらの人生がよく見えることもあるのかなって。だから自分で人生を選択しているって思えたら、誰かと比べて変に自信をなくす必要はないんですよね。
 
――そんな比嘉さんにとっての理想の女性像は?
 
比嘉 澱(よど)んでない人ってすごくいいなと思いますね。停滞せずに身軽で、その人に会うとなんか気が楽になるとか、清々しくて風が流れているなと感じる方。そういう人に憧れます。
 
――すでに比嘉さんは、その理想像になれているような?

比嘉 いやいや、まだまだです。
 
――では最後に、同世代の読者へのメッセージをお願いします!

比嘉 本当に大人って大変ですよね。それぞれの環境でいろんな試練があったり、悩むことも多いと思いますが、そのぶん自分で選べる選択肢を持っているのが大人。それってある意味、すごく自由だと思うんです。その自由にフォーカスして、otona MUSE読者のみなさんには、とにかく楽しんで生きてほしいです。 なんか熱くなっちゃって、すみません。でもこれが私なんです。

photograph:YUYA SHIMAHARA[UM] / styling:KASUMI KATO / hair & make-up:MIFUNE[SIGNO] / model:MANAMI HIGA / interview & text:NORIKO YOSHII

衣装協力:マックスマーラ ジャパン ☎0120−030−535
チカ キサダ ✉info@chikakisada.com
ザ・ウォール ショールーム ☎050-3802-5577

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