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目のつけどころが絶妙! 『逃げ恥』作者の最新作は“ゆるふわミステリー”

  • 2025.5.2

『逃げるは恥だが役に立つ』の海野つなみさんの最新作は、占いを通して人の心理や、世の中に散らばっているちょっとした不思議を巧みに描く“ゆるふわミステリー”。

親密ではないシスターフッド!? 占いで読み解く世の中の不思議。

「ドラマ『ミス・シャーロック』みたいな、それほど仲良くないけれど何となくバディを組んでいる女性ふたりをイメージしました。若い頃はコミュニティで失敗せず立ち振る舞わなくては、みたいな気持ちが強かったりするけど、年齢を重ねると、そこまで相手に合わせず自分を優先していいとわかってきますよね。喧嘩しても1週間くらいで元に戻れるような、緩やかなつながりのほうが自分を生かしてくれるし、続いていくはずという思いを込めています」

恋も家も職も失った江間宵(えま・しょう)は、偶然知り合った黒江神名(くろえ・かな)がひとりで住む豪邸の離れで居候することに。

「クロエは一見クールだけど、実はかなりお人好し。そのせいで失敗してきた過去もあり、他人と一線を引くようにしているけど、基本的に好奇心旺盛です。エマはクロエと違い裕福ではないし、しんどい経験を結構してきたので、ニコニコして場をやり過ごす術を知っています。相手を見て図々しくもなれるし、すっと身を引くこともできるタイプです」

境遇も価値観もまったく異なるものの、エマに乗せられクロエは占いの店をオープン。訪れる人たちのさまざまな事情に首を突っ込んでいく。

「刑事や探偵以外で、謎にアクセスしやすいシステムといえば占いかなと思って。みなさん、占ってもらうときは当たってほしいと思うから、本当のことを話しますよね。私自身も20代の頃、マンガ家として先が見えず、ひたすら占いをしていた時期がありました。どちらに進めばいいのかわからないときって、こんなにも占いに頼ってしまうんだなと思う一方、のめり込みすぎると怖いこともわかってはいるので、そういう目線で描くようにしています」

恋人の浮気疑惑や、店の評判を落とすネットの書き込み、炎上事件の行く末など、目のつけどころが今作も絶妙。なぜこんなことが起こるのか、登場人物たちと一緒に議論しているかのような臨場感を味わえる。

「全体的なテーマのひとつとなっているのが、“役割を背負うことと降りること”。世の中にはいろんな役割があって、いざとなったら降りることが可能な場合もあるし、逆に役割によって生かされている部分もある。そのあたりは今後、より詳しく描きたいと思っていて、次の巻がターニングポイントになるはずです」

大小いろんな謎解きに挑みながら、ふたりはどんな真実に辿り着くのか。まずは3巻までお楽しみを!

PROFILE

海野つなみさん

うみの・つなみ マンガ家。1989年「お月様にお願い」でデビュー。TVドラマ化もされた『逃げるは恥だが役に立つ』で第39回講談社漫画賞を受賞。

INFORMATION

『クロエマ』3

クロエとエマ。偶然出会い、同居することになったふたりが、世の中に転がる不思議な事象に体当たり。小さな謎が大きな謎を引き寄せる新感覚のミステリー。講談社 792円 Ⓒ海野つなみ/講談社

写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

anan2445号(2025年4月30日発売)より

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