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【那須凜さん・三浦透子さんインタビュー】「役者の仲の良さは、お芝居に大きく影響する」

  • 2025.5.8

かつて栄えた炭鉱町を舞台に、時代の変化に戸惑いながらも折り合いをつけようともがく家族を描き、イギリスで高い評価を得た舞台『星の降る時』。元炭鉱夫の父に育てられた三姉妹の次女を演じる那須凜さん、そして三女を演じる三浦透子さんは、今作が初共演。読み合わせを終えたばかりのおふたりに、意気込みをたずねました。

「ひとりひとりの音とリズム」を見つけたい

——今日は最初の読み合わせをしたそうですが、台本にはどんな印象を持たれましたか?

三浦透子さん(以下、三浦) 登場人物の全員が違う感情や意図を持って同時に会話していて、心の視線のようなものが複雑に混ざり合っている。台詞の多い会話劇ですが、言葉の裏にある心情や目線のやりとりもすごく大事になってくると思います。ただ、たくさんの台詞が飛び交うなかで、それらを表現するのはとても難しいだろうとも感じていて。

那須凜さん(以下、那須) いま透子ちゃんが言ったような、裏に流れている思惑を俳優がしっかり演じて、「このふたりには何か確執があるんじゃないか」と観る人に伝えられれば、物語が進むにつれて「ああ、だから最初こういう雰囲気だったんだな」とわかってくる。それがこの物語のおもしろみにもつながるんじゃないかなと思いました。今日、(演出の)栗山さんが「ひとりひとりの音とリズムを探して」とおっしゃってたんです。他の人につられて同じテンポになってしまったら全然おもしろくないから、と。そういう声の変化でも、それぞれが違う意図を持っていることを表現できるんじゃないかなと思います。

三浦 動きや立ち位置が具体的になっていけば、より見えてくることもありますよね。早く立ち稽古がしたいです。

那須 同時に2組が会話するシーンもあって、「頭が混乱しそうだね」ってさっき話してたんですよね。

三浦 「前の人の台詞のこのあたりから次の台詞を進めてください」という印が台本上についているので、役者としては決まりごとですけど、役の心情としては前の人の台詞を聞き終わるまで待っていられないわけですよね。その応酬が早く自然にできるようになりたいです。

那須 役者は「よし、この台詞の後だぞ」と冷静に考えなきゃいけないけど、演じるときはいかにも自然に言葉を発したように見せないといけないから、すごく難しいと思う。今回は「ここでこれを渡す」みたいな小道具を使った動きも多いから最初は大変だけど、慣れてくるときっと楽しいはず。慣れるまではてんやわんやだと思いますけど。

——那須さんは次女のマギー、三浦さんは三女のシルヴィアを演じます。それぞれの人物像についてはどのように捉えていますか?

三浦 シルヴィアはすごくバランス感覚がある人。でも誰にでもいい顔をするわけではなく、しっかり自分の世界観を持っていて、それを伝えることもできるし、自分と考えが違う人が存在していることも承知している。そのバランスが素敵だと思います。私はひとりっ子なので、生まれる順番が性格にどう影響するのか、まだ実感を持ってイメージできていない部分があって。那須さんは実際に三姉妹の次女なんですよね

那須 そうなんです。マギーってすごく次女っぽいと思うし、私自身とも共通点があるな、と。すごく奔放に見える人だけど、実はすごく気を使いながら生きている。姉と妹に挟まれて、ある種ピエロになって自分なりに盛り上げることで、まわりの秩序を保っている人なんじゃないかな。シルヴィアが自立して生きていることに対しても、きっと羨ましい気持ちがあると思います。そういう“三姉妹あるある”もたくさん詰まっていますよね。

「わからないことを恥じないことが大事」という言葉が支えに

——演出の栗山民也さんとは以前もご一緒なさっていますが、栗山さんからかけられた言葉や演出で印象に残っているものはありますか?

三浦 前回は台詞の言い回しや立ち位置、首の動かし方ひとつまで明確に指示をくださったんですけど、私はそういった演出を受けるのが初めてだったんです。それまではどちらかというと、「1回やってみて、一緒に作っていきましょう」という作り方の演出家さんとご一緒することが多かったので。でも、私は栗山さんの演出がすごく楽しかったんですよね。最初は決められた動きだったものがだんだん体に馴染んできて、自分の意志で動いているような感覚になって。そうすることで、台本や台詞の理解も深まる感覚がありました。

那須 以前、栗山さんから「わからないっていうことを恥じないでください」と言われたんです。わからないのは当たり前だし、わからないもの同士だからこそ議論する。だから恥じないことが大事だ、と。その言葉はすごく心の支えになっていますね。

——おふたりは今回が初共演ですが、これまで別の作品などを通じて感じていた印象は?

 三浦 那須さんが出演された『ケエツブロウよ–伊藤野枝ただいま帰省中』を観に行ったのですが、強い信念を持った役柄がとてもお似合いだな、と思って。でも可愛らしく見えるのが素敵ですよね。ふだんも舞台上と同じような明るいエネルギーを発していらっしゃって。本読みのときも那須さんがたくさん話しかけてくれて、いい空気を作ってくださいました。

那須 え〜嬉しい。ありがとうございます。私も透子ちゃんの映像作品はいろいろ観ていますが、持っている雰囲気が独特で、透明感があって。ポスター撮影のときに初めてお会いしたんですけど、お芝居のときとはまた違った感じで、すごく明るくて接しやすくて。もう大好き!ってなっちゃいました(笑)。座組の仲がいいことが、お芝居には大きく影響すると私は思っているので、まずは皆さんと仲良くなりたいです。

おふたりが最近、刺激を受けた映画や舞台は……?

那須さん ミュージカル『ディア・エヴァン・ハンセン』

少し前に『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』という舞台の公演でスコットランドへ行っていたんですが、合間に現地でたくさんお芝居を見ることができて。なかでも、映画化もされた『ディア・エヴァン・ハンセン』というミュージカルがとても良かったです。友達のいない主人公の男の子が、亡くなった同級生の親友だと勘違いされて、嘘だと切り出せないうちに話がどんどん大きくなってしまう。言葉がわからなくても泣いてしまうくらい俳優さんが上手で、ミュージカルをやる人って本当にすごいなと感動しました。

三浦さん 映画『Four Daughters フォー・ドーターズ』

チュニジアの四姉妹とそのお母さんの話なのですが、長女と次女が過激派組織に傾倒して、家を出てしまう。その家族をドキュメンタリーとして描くために、いなくなった長女と次女を俳優が、三女と四女は本人が、そしてお母さんに関しては、本人と俳優が交互に演じているんです。この構造がとてもおもしろくて。お母さん役の俳優が本人に「このとき、どんな気持ちだったの?」と聞いたりするんですよ。その質問によって、本人が自分と向き合ったり、家族の答え合わせができたりする。かなり保守的な女性像を持つお母さんと、姉妹それぞれが考える女性像にはやっぱりギャップがあって。家族のなかにもいろんな考え方や価値観があって……というのは、今回の舞台とも少し重なりますね。

PROFILE
那須凜(なす・りん)
1994年生まれ、東京都出身。2015年に劇団青年座に所属。2018年の舞台『砂塵のニケ』で主演を務め注目される。2022年に読売演劇大賞 杉村春子賞、2024年に紀伊國屋演劇賞にて個人賞を受賞。近年の出演作に舞台『破門フェデリコ~くたばれ!十字軍~』『逆さまの日記』『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』、青年座公演『ケエツブロウよ–伊藤野枝ただいま帰省中』、ミュージカル『イザボー』など。

 三浦透子(みうら・とうこ)
1996年生まれ、北海道出身。2002年デビュー。映画『ドライブ・マイ・カー』で日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ数々の賞を受賞。2023年の舞台『ロスメルスホルム』で紀伊國屋演劇賞個人賞、読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。歌手としても活躍中。近作に映画『そばかす』、ドラマ『エルピス–希望、あるいは災い–』、配信ドラマ『HEART ATTACK』など。25年10月に舞台『チ。―地球の運動についてー』に出演予定。

[舞台] パルコ・プロデュース 2025『星の降る時』

イギリスの炭鉱町に生まれ育った長女ヘーゼル(江口のりこ)、実家を離れていた次女マギー(那須凜)、ポーランド移民と恋に落ちた三女シルヴィア(三浦透子)の三姉妹は、叔母キャロル(秋山菜津子)とともにシルヴィアの結婚パーティの準備をしていた。父親トニー(段田安則)、叔父ピート(八十田勇一)、長女の夫ジョン(近藤公園)も久しぶりに顔を合わせ、三女の夫マレク(山崎大輝)を迎えて祝いの宴が催されるが……。幸せなはずの1日が、問題をはらんだ家族間の扉を開けてしまうことに。家族は再び向き合い、新しい朝を迎えることができるのか。

作:ベス・スティール
翻訳:小田島則子
演出:栗山民也
出演:江口のりこ、那須凜、三浦透子、近藤公園、山崎大輝、八十田勇一、西田ひらり、佐々木咲華、下井明日香/秋山菜津子、段田安則
日程:
2025年5月10日(土)~6月1日(日)東京・PARCO劇場
2025年6月8日(日)山形・やまぎん県民ホール
2025年6月12日(木)~5日(日)兵庫・兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール
2025年6月21日(土)~22日(日)福岡・キャナルシティ劇場
2025年6月27日(金)~29日(日)愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール 


撮影/白井裕介 スタイリスト/佐々木翔(三浦さん) ヘアメイク/オオトウアキ(那須さん)、秋鹿裕子[W](三浦さん) 取材・文/工藤花衣

この記事を書いた人

大人のおしゃれ手帖編集部

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