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レディー・ガガやリアーナのあのダンスを考案。踊りの枠にとらわれない振付師、パリス・ゲーベルのダンス言語

  • 2025.4.22
2024年7月、ロンドンのセルフリッジズで開催されたナイキ×ジャックムスのイベントに参加したパリス・ゲーベル。
Parris Goebel for Nike x Jacquemus At The Cinema At Selfridges2024年7月、ロンドンのセルフリッジズで開催されたナイキ×ジャックムスのイベントに参加したパリス・ゲーベル。

「パリス・ゲーベルは現代のパブロ・ピカソだ」──コーチェラ・フェスティバルレディー・ガガパフォーマンスを観戦した来場者のひとりが、そうつぶやいた。

現地参加が叶わず、配信でフェスの様子を追っているファンでも、この言葉が具体的に何を意味するかはわかるはずだ。4月12日(現地時間)、レディー・ガガはキャリアを代表するヒット曲を収録した最新アルバム『Mayhem』の世界観を、圧倒的なスケールでライブとして再現。巨大な深紅のフープスカートなど、インスタレーションさながらのルックに身を包み、衣裳チェンジの瞬間をも演出の一部として盛り込んだステージは、異次元の完成度。特に「Judas」へと切り替わってからの異世界感は圧巻だ。

新曲「Garden of Eden」の激しく官能的なボディロール、チェスのフォーメーションで繰り広げられた「Poker Face」のダンス、パフォーマーが何かに取り憑かれたように踊り狂うブレイクダウン部分、墓を模したセット、ホラー映画に出てくる手術シーンのような一幕に、「Paparazzi」と「Born This Way」を再解釈したパフォーマンス。「Dance or die(踊るか、死ぬか)」とレディー・ガガ自身が冒頭で呼びかけたように、そのすべてにみなぎる、野生的で荒削りなエネルギーの源となった振り付けと世界観を生み出したのが、“現代のパブロ・ピカソ”と評されたアーティスト兼振付師のパリス・ゲーベルだ。

コーチェラ・フェスティバル2025で話題をさらったレディー・ガガのパフォーマンス。
2025 Coachella Valley Music And Arts Festival - Weekend 1 - Day 1コーチェラ・フェスティバル2025で話題をさらったレディー・ガガのパフォーマンス。

「限界を知らず、『本物の芸術表現』が持つ力を信じている、(レディー・ガガのような)パワフルな女性と一緒に創作できて、感謝の気持ちでいっぱいです」とゲーベルはインスタグラムに綴った。「子どもの頃は変わっていて、演劇が大好きだった私。今でも心の中にいる、そんな幼い頃の私は、突拍子もないビジョンをいくつも描き叶えることができて、とても幸せです。レディー・ガガ、私たちに毎日インスピレーションを与え、思いやりを持って接し、気兼ねなく自由に創造する場を与えてくださりありがとうございました。そして何より、ショーの振り付けだけでなく、クリエイティブ・ディレクションも託してくださりありがとうございました!心から感謝していますし、一緒に成し遂げたことをとても誇りに思っています」

パリス・ゲーベル流のダンスは、ポップでありながらどこか奇形でグロテスクなのが特徴だ。パワフルかつ表現力豊かで、関節をひねり、骨格に逆らうかのように体をあらぬ方向へ曲げたりする動きを取り入れる。腰を高く突き上げる、思い切り振るといった通常はセクシーな動作も、彼女の手にかかれば奇妙な魅力漂う動きに様変わりする。ニュージーランド・サウスオークランド出身、サモアの血筋を引くゲーベルは、ポリネシア文化やヒップホップをインスピレーションに特徴的なダンススタイルを作り上げ、ボブ・フォッシーの振り付けやプリンスとミッシー・エリオットといったスターからもインスパイアされているという。

15歳でダンスの道に専念。19歳でジェニファー・ロペスの振付師に

第57回スーパーボウルで繰り広げられた、リアーナのハーフタイムショー。
Rihanna Super Bowl LVII - Eagles vs Chiefs第57回スーパーボウルで繰り広げられた、リアーナのハーフタイムショー。

ゲーベルは、若くしてダンスの道へと進んだ。15歳で高校を中退した頃には、すでに地元のダンスコンテストで何度か優勝しており、ダンス講師としても活動していた。そして2009年、オークランドでパラス・ダンス・スタジオを設立。後に「WORLD HIP HOP DANCE CHAMPIONSHIPS」で3度の優勝に輝くことになる「ロイヤル・ファミリー」クルーを輩出したスタジオだ。

ブレイクはゲーベルが19歳の時に訪れた。ジェニファー・ロペスが2012年に敢行した大規模ツアー「Dance Again World Tour」の振り付けを担当し、知名度は一気に向上。そこからキャリアは右肩上がりに伸びていき、名だたるアーティストから指名を受けるようになった。振り付けを手がけた代表作には、MTVビデオ・ミュージック・アワードで最優秀洋楽男性アーティストビデオ賞に輝いたジャスティン・ビーバーの「Sorry」、キアーラの「Level Up」やビヨンセニッキー・ミナージュのコラボ曲「Feeling Myself」のミュージックビデオ、ビーバーの「パーパス・ワールド・ツアー」、リアーナによるランジェリーブランドのサヴェージ X フェンティSAVAGE X FENTY)のショーなどがある。

コーチェラ・フェスティバル2024で、ゲーベルが構想したパフォーマンスを披露したドージャ・キャット。
Doja Cat 2024 Coachella Valley Music And Arts Festival - Weekend 2 - Day 3コーチェラ・フェスティバル2024で、ゲーベルが構想したパフォーマンスを披露したドージャ・キャット。

その勢いは衰えることを知らず、2023年にはリアーナのスーパーボウルハーフタイムショーを指揮し、当時第2子を妊娠していたリアーナと280人にも及ぶバックダンサーの振り付けを考案。ダンサーが獲物を狙う獣のように這って進む「Work」のパートは、ネット上で瞬く間に話題となった。そして2024年、今度はNFLクリスマスゲームのハーフタイムショーで、ビヨンセが繰り広げた「Sweet Honey Buckin'」のダンスを担当。同じ年に世間に衝撃を与えた、ドージャ・キャットのコーチェラでの「Demons」パフォーマンスも構想し、6月にパリで開催された第3回「VOGUE WORLD」では演出と振り付けを手がけた。

コーチェラ・フェスティバル2017でのレディー・ガガのパフォーマンスもゲーベルが担当。
Lady Gaga 2017 Coachella Valley Music And Arts Festival - Weekend 2 - Day 2コーチェラ・フェスティバル2017でのレディー・ガガのパフォーマンスもゲーベルが担当。

「世界屈指」の振付師という地位をさらに強固にしたのが、レディー・ガガの「Disease」と「Abracadabra」のミュージックビデオだ。映像で披露された、激しく猟奇的なダンスを真似るユーザーの動画がTikTokに次々と投稿され、プロのダンス集団もその再現に挑戦。担当振付師をリッチー・ジャクソンからゲーベルに変えたレディー・ガガを評価する者も少なくなかった。

ゲーベルが生み出すダンスには、女性らしい剥き出しの強さがあり、どんな小さな動きにもパワーがみなぎっている。時代を牽引するスターたちを引き立て、見る者を燃え上がらせるパリス・ゲーベルの世界に、これからも酔いしれたい。

Text: Anna Cafolla Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.COM

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