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24年前、日本中が迷い込んだ“神々の異世界” 今も心に生き続ける“世界的ヒット映画”

  • 2025.5.19

「24年前の夏、どんな映画を観たか覚えてる?」

2001年、日本のエンタメは転換期を迎えていた。インターネットが本格的に普及し、ケータイが中高生の生活に欠かせない存在になり始めた時代。J-POPでは宇多田ヒカルやMISIAが存在感を放ち、テレビドラマでは『HERO』が大ヒットを記録。

そんな中、ひとつのアニメ映画が日本中を驚きと感動で包んだ。

『千と千尋の神隠し』ーー宮崎駿が監督となりスタジオジブリが手がけたこの作品は、ただの“ヒット映画”にとどまらず、あらゆる世代の心に深く入り込んでいった。

突然始まる、もう戻れない“異世界”の旅

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(C)SANKEI

物語の主人公は、ごく普通の10歳の少女・千尋。

両親とともに引っ越し先に向かう途中、不思議なトンネルをくぐったことで“神々の異世界”へと迷い込む。そこで千尋は、名前を奪われ、湯婆婆の湯屋で働くことになる。

この異世界は、美しくもあり、怖くもあり、そしてどこか懐かしい。

カオナシ、ハク、湯婆婆、釜爺ーー千尋の周りには個性的すぎる存在が次々と現れ、物語はまるで“夢の中の旅”のように進んでいく。

子どもも大人も、誰もが“千尋”だった

この映画が多くの人の心を掴んだのは、千尋というキャラクターの“ふつうさ”にある。

最初は泣き虫で、わがままで、自分の意見も持てなかった少女が、少しずつ「誰かのために動く」ことで変わっていく。その姿に、自分の子どものような、あるいはかつての自分自身のような感情を重ねた人は少なくなかったはずだ。

「名前を取り戻す」というテーマも、当時の世相とどこかリンクしていた。人と人との関係性が薄れ、画一化されていく中で、“自分が自分であること”の意味を静かに問いかけていた。

「あの音楽が流れた瞬間に戻れる」

久石譲が手がけた作品内の音楽や、ピアノの旋律が印象的なメインテーマ『いつも何度でも』は、エンドロールが終わっても心に残る余韻となった。

言葉にできない感情をそのままメロディにしたようなその曲は、作品の世界観をより豊かに広げ、観終わった後も“現実に戻れない”ような魔力を持っていた。

ふと耳にすると、あの長い列車の旅や、夕日に照らされた街並みが蘇る。『千と千尋の神隠し』は、映像だけでなく“記憶に宿る音楽”としても、多くの人の中で生き続けている。

24年経っても、帰り道が消えない映画

『千と千尋の神隠し』は、興行的な成功だけではなく、国境を越えて語り継がれる“物語の力”を持っている。

2001年の夏に一歩踏み入れたあの世界は、24年が経った今も変わらず、誰かの心の中に続いている。迷い込んだ異世界で何かを得て、名前と心を取り戻すというストーリーは、世代や国を問わず、深く共鳴するテーマだった。

もし今、少し立ち止まりたい時があるなら。ふと、自分の“名前”を見失いそうなときがあるなら。

あの映画が、再びそっと手を引いてくれるかもしれない。


※この記事は執筆時点の情報です。