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20年前、日本中を魅了した“二面性アーティスト” 平成中期の10代を虜にした“自然体ポップアイコン”

  • 2025.5.19

「20年前の今頃、どんな曲を聴いていたか覚えてる?」

2000年代前半、J-POPはまだテレビと強く結びついていて、ヒット曲には“顔の見える歌手”の存在が欠かせなかった。浜崎あゆみ、宇多田ヒカルといったカリスマ性を備えた女性アーティストがシーンを牽引していたその時代に、柔らかくて親しみやすく、でも芯のある声で現れたのが大塚愛だった。

2003年の『桃ノ花ビラ』でメジャーデビュー。そして同年12月、すべてを変えた一曲が誕生する。

『さくらんぼ』が連れてきた、J-POPの新しい風

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(C)SANKEI

印象的なフレーズで始まる『さくらんぼ』は、2003年に発売されて以来、瞬く間に若者を中心に大ヒット。

恋の楽しさと切なさが絶妙に混ざり合った詞と、テンポの良いリズム。さらに、MVや歌番組で見せた彼女自身の元気でユーモラスなキャラクターが重なって日本中を魅了し、新しい"ポップアイコン"が生まれた瞬間だった。

当時、カラオケや学校行事でこの曲を歌わなかった10代は、ほとんどいなかったと言っても過言ではない。皆が彼女の虜になっていた。

ヒットのその先にあった“大塚愛の引き出し”

大塚愛の真骨頂は、決して“明るくて可愛い”だけではない。

『プラネタリウム』では、やさしくも切ない別れを描き、ドラマ『花より男子』の挿入歌としても話題に。『金魚花火』のような静かで情感あふれるバラードでは、表現力の深さを見せつけた。

さらに『SMILY』『CHU-LIP』のような、遊び心満載のアップテンポナンバーでは、ユニークな世界観と“笑顔になれる音楽”を届けてくれる。

“笑えるけど泣ける” “明るいけど刺さる”ーーそんな二面性が、大塚愛というアーティストの最大の魅力だった。

自然体で、日常の言葉で歌われる“共感ソング”

今でこそ「共感ソング」は当たり前のように存在しているが、大塚愛はその原型とも言える存在かもしれない。

作詞・作曲を自身で手がけるスタイルは、当時の女性シンガーソングライターとしては珍しくなくなっていたが、大塚愛の詞には“背伸びしていない自分のまま”を歌う自然体があった。

好きな人と一緒にいたい。別れが怖い。ふと寂しくなるーーそれをあえて小難しく言わず、日常の言葉で、時にユーモラスに描く。そのスタイルは多くのリスナーの心を柔らかく包み込んだ。

20年経った今も、色褪せない理由

あれから20年が経っても、大塚愛の楽曲は今なお多くの人に愛されている。

結婚・出産・活動休止など、人生の節目を経ながらも、彼女はずっと“感情と向き合う音楽”を続けてきた。最新の作品にも、そのやさしさと飾らない表現は健在だ。

『さくらんぼ』が初めて流れたあの日を思い出すとき、思い出すのはメロディだけではない。その頃の自分、恋をしていたあの瞬間、涙をこらえた夜ーー大塚愛の音楽は、それぞれの“心のアルバム”にそっと残っているのだ。


※この記事は執筆時点の情報です。