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23年前、日本中を唸らせた“ムダだらけの番組” エンタメの未来を切り拓いた“異端”

  • 2025.5.17

「23年前の今頃、どんな番組に夢中だったか覚えてる?」

2002年当時、テレビの人気番組は芸人による体当たり企画や恋愛バラエティが主流だった。そんな中、突如として現れたのが、まったく新しい発想の異端な番組ーー『トリビアの泉 ~素晴らしきムダ知識~』である。

この番組は、「知っていても何の役にも立たないけれど、思わず誰かに話したくなる」そんな“ムダ知識”を集め、紹介し、検証するというものだった。

初めて観たとき、「何だこれ」と思いながら、気づけば「へぇ」と声に出していた。それがこの番組の魔力だった。

“くだらない”を真剣に届けるスタイル

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(C)SANKEI

番組の大きな魅力は、何といってもそのバランス感覚にあった。投稿された“トリビア”は、たとえば「亀の皮はむける」など、思わず耳を疑うような内容ばかり。

しかし、それを一切バカにせず、むしろ本気で検証する。スタッフが地方に赴き、時に専門家に話を聞き、CGや再現ドラマを交えてその情報に迫るーーその丁寧さこそが、視聴者の信頼を得た理由だった。

「バカバカしいことを、どこまでも真面目に」。それがこの番組の哲学だった。

“へぇボタン”とムダ知識の美学

スタジオでは、ゲストが“へぇボタン”を押して知識の評価をする。その数が多ければ多いほど、「これはすごい」とされる。たったそれだけのルールなのに、そのシンプルさが中毒性を生んだ。

「この話、何“へぇ”だろう?」と、自宅でリモコンを握りながらつぶやいた人も多いはず。ボタンの音、タイミング、間の取り方すら演出の一部として機能していた。

そして“へぇ”は、いつしか時代を象徴するワードになった。グッズ化もされ、学校や職場でも“へぇ”が飛び交う。ムダなはずの知識が、人と人をつなぐツールになる、人々を楽しめるーーそんな新しい価値観を提示し、エンタメの未来を切り拓いだ番組だった。

笑って、知って、忘れられない

この番組が教えてくれたのは、“知ること”はそれだけで楽しい、というシンプルな真実だ。

スマホでなんでも調べられる現代においても、「誰かが教えてくれる楽しさ」はやっぱり特別だ。ましてそれが、真面目すぎず、でも手を抜かない作りで届けられるなら、なおさらだ。

2006年にレギュラー放送は終了したが、番組の記憶は今も多くの人の心に残っている。日常に少しだけ笑いと知識をくれた、あの時間、あの感覚。

意味がないようで、でもなぜか忘れられないーーそれが“ムダ知識”の、そして『トリビアの泉 ~素晴らしきムダ知識~』の素晴らしさだったのだろう。


※この記事は執筆時点の情報です。