韓国料理でよく使われる野菜の一つが「エゴマ」です。エゴマは、韓国の豚バラ焼き肉のサムギョプサルを巻いたり、キムチ漬けにしたりして、食べられます。SNSでは「エゴマは栄養たっぷりだから積極的に食べてる!」「エゴマの冷麺はおいしい」という内容の声が上がっています。そこで、エゴマにはどういった栄養があるのか、サンチュと比べるとどちらの方が栄養価があるのかを管理栄養士の岸百合恵さんに聞いてみました。
「エゴマ」を食べると得られる栄養とは?
Q.そもそも、エゴマとはどのような野菜なのでしょうか。また、サンチュと比べると、どちらの方が栄養価が高いのでしょうか。
岸さん「エゴマは、主に韓国料理で生葉のまま焼き肉を巻いたり、漬け込んでキムチにしたりなどして食べられている野菜です。
エゴマの葉は、大葉などと同じシソ科の一種で夏に旬を迎えます。ごま油のような、まったりとした香りと味で、クセの強い風味がある食べ物です。シソよりも葉に厚みがあり大きく、繊維感の強い歯触りをしているため、日本では好き嫌いが分かれることがあります。韓国料理ブームの影響で日本でも簡単に手に入りますが、あまりなじみがないこともあり、日本での消費量は少ないです。
エゴマは日本食品標準成分表には記載がない食品なので、サンチュとの正しい比較はできません。ただ、エゴマはシソと同様、抗酸化成分のβ-カロテンが豊富で、他にもカリウムやカルシウム、鉄、マグネシウム、ビタミンCやビタミンEが多いと考えられます」
Q.「エゴマ油」もありますが、油にすることで、得られる栄養は変わるのでしょうか。また、葉を食べるのと、油に変えて食べるのとでは、どちらの方が栄養を取れるのでしょうか。
岸さん「先述のように、エゴマの葉の栄養成分は日本食品標準成分表に記載されていませんが、恐らく脂質はとても少ないと考えられるため、脂質の一種であるα-リノレン酸も、エゴマの葉にはほどんど含まれていないでしょう。
しかしエゴマの種子にはα-リノレン酸が豊富なので、種子を搾って作られるエゴマ油には、n-3系多価不飽和脂肪酸のα-リノレン酸が含まれています。
α-リノレン酸には抗酸化作用があり、『血中の中性脂肪を下げる』『血栓防止』『高血圧予防』など多くの作用があるといわれています。体内で生成できないため食事から摂取する必要があり、現代では不足しがちな栄養素ですが、非常に酸化されやすいという特徴があります。そのため、熱する調理には向かず、保存状態や使用期限に注意が必要です。
また、先述のようにα-リノレン酸はn-3系の多価不飽和脂肪酸ですが、1日の必要量は成人男性で2.0〜2.2グラム、女性で1.6〜2.0グラム(厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」)で、エゴマ油大さじ1(12グラム)を摂取すると6グラム以上で取り過ぎの量となってしまい、体内の酸化リスクを上げることになります。
油にすることでα-リノレン酸を摂取することはできますが、メリット、デメリットを理解した上で欲しい栄養素が何なのかで、エゴマの葉か油を選択しましょう」
Q.エゴマの栄養を効率よく取るためのおすすめの食べ方を教えてください。
岸さん「エゴマの葉をコチュジャンとしょうゆのあまじょっぱいたれに漬けると食べやすくご飯が進みます。ごま油やニンニクも合いますし、おにぎりに巻くのもおすすめです。また、エゴマの葉を刻んで甘いみそと混ぜてタレを作ると、焼き肉やサムギョプサルの付け合わせとして相性抜群です。
エゴマの葉の香り成分である『ペリラケトン』『エゴマケトン』には、肉や魚の臭みを消す効果や、防腐効果があるとされているため、気温が高くなるこれからの時期にお弁当を作る際は、このようなエゴマのレシピを活用するのもよいでしょう」
【参考文献】吉村幸江、伊藤茂:エゴマの成分と加工利用時の成分変動、愛知県農業総合試験場研究報告、愛知県農業総合試験場、35号、103-108(2003)
オトナンサー編集部