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ジャンポール・ゴルチエ、デュラン・ランティンクを新クリエイティブディレクターに起用

  • 2025.4.15

2020年に創設者が引退してからは毎シーズン、ゲストデザイナーを招きオートクチュールコレクションを発表していたジャンポール・ゴルチエJEAN PAUL GAULTIER)。過去5年間に阿部千登勢グレン・マーティンスオリヴィエ・ルスタン、ハイダー・アッカーマン、ジュリアン・ドッセーナシモーン・ロシャ、ニコラス・デ・フェリーチェ、ルドヴィック・ド・サン・セルナンらがその大役を務めてきた。

しかし今、ゴルチエはその戦略を変えようとしている。メゾンは4月15日(現地時間)、オートクチュールとプレタポルテの両方を率いる常任のクリエイティブディレクターとして、デュラン・ランティンク(DURAN LANTINK)を起用したことを発表。ゲストデザイナー交代制に終止符を打った。

ゴルチエは声明で、「私は彼のなかに、私自身が駆け出しの頃に持っていたエネルギーや大胆さ、遊び心、つまりファッション界の新しい『アンファン・テリブル(フランス語で“恐るべき子ども”の意、ゴルチエの異名)』を感じています」とコメント。一方のデュランは、ゴルチエへの敬意を次のように語っている。

「ジャンポール・ゴルチエは天才であり、私のような人々が業界に自由に足を踏み入れ、堂々とありのままの自分を表現できるよう扉を蹴破ってくれた世代の一員だと思っています。クリエイティブディレクターに就任するというのは、本当に光栄なこと。私にとってゴルチエは、クリエイティブな精神とサヴォアフェールを象徴する究極のメゾン。挑発的で、常に限界を押し広げています。ファッションを取り巻くさまざまな分野を融合させては文化的なムーブメントを生み出し、服の言語やストリートでの着こなしを変えてきたメゾンなのです」

ランティンクは、プレタポルテとオートクチュールの両コレクションを統括するため、自身のブランドを一時休止することになるという。

デュラン・ランティンク 2025-26年春夏コレクションより。
Duran Lantink - Runway - Fall/Winter 2025-2026 Paris Fashion Weekデュラン・ランティンク 2025-26年春夏コレクションより。

ランティンクは1988年、オランダ生まれ。2016年に自身の名を冠したレーベルを設立して以来、ジェンダーレスなアプローチでアップサイクルウェアやアクセサリーを提案してきた。2018年、アメリカの歌手ジャネール・モネイが「Pynk」のミュージックビデオで彼の「ヴァギナパンツ」を着用したことで大きな話題に。2023年にはアンダム特別賞、2024年には若手ブランドの創造性を評価するLVMHプライズのカール・ラガーフェルド賞を受賞した。彼が手がけるデザインの特徴のひとつは大胆にも誇張されたシルエットだが、ファッション全体が無難になりつつある今、それはひと際異彩を放つものだ。

デュラン・ランティンク 2025-26年春夏コレクションより。
Duran Lantink - Runway - Fall/Winter 2025-2026 Paris Fashion Weekデュラン・ランティンク 2025-26年春夏コレクションより。
デュラン・ランティンク 2025-26年春夏コレクションより。
Duran Lantink - Runway - Fall/Winter 2025-2026 Paris Fashion Weekデュラン・ランティンク 2025-26年春夏コレクションより。
デュラン・ランティンク 2025-26年春夏コレクションより。
Duran Lantink - Runway - Fall/Winter 2025-2026 Paris Fashion Weekデュラン・ランティンク 2025-26年春夏コレクションより。

3月に披露された2025-26年秋冬コレクションは、パリで今シーズン最も話題になったショーのひとつだった。また、今月初めにはドナテラ・ヴェルサーチとイブ・カマラからウールマーク賞を授与され、受賞スピーチでは「今こそ、ほんの少し過激になることが大切だと考えています。なぜなら、もし私たち(デザイナー)がラディカルでないなら、私たちの存在とは何なのでしょうか」と語っていた。

ゴルチエは新しいゲストデザイナーを発表するたびに話題となり、メゾンの魅力を増幅させてきた。(なかでもフレグランスはメゾンのビジネスの大部分を占めており、ベストセラーには「ル・マール」や「スキャンダル」などがある)。ゲストデザイナーを招いた発表形式は現代のファッション界が求める斬新さ、クリエイティブなリフレッシュ、メディアの話題性にはうってつけかもしれないが、ひとつのコレクションのためにアトリエを再調整する必要性など、課題も伴う。

ゴルチエが常任のクリエイティブディレクターを起用するという今回の動きは、現在の発表形式(AZファクトリーやプッチも採用していた)が限界に近い証拠とも受け取れる。さらに、創設者の退任後、カプセルコレクションとして展開されているプレタポルテでのリーダーシップも必要だ。しかし、オートクチュールとプレタポルテを別々のデザイナーに担当させるのでは、メゾンの明確さが失われてしまう危険性がある。

ランティンクによる初のプレタポルテコレクションは2025年9月に、オートクチュールコレクションは2026年1月に発表される予定だ。

Text: Laure Guilbault Adaptation: Motoko Fujita

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