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自然と共生する建築がつなぐ未来/ADX【リジェネラティブな暮らしのアート vol.2】

  • 2025.4.15
北軽井沢に建つ、「SANU 2nd Home」の新型キャビン「SANU CABIN MOSS」。Photo: Junya Igarashi ©SANU

森と生きる──を理念とし、自然に戻しやすい素材だけを使う工夫や建材のトレーサビリティの設計、さらには建築が増えるほど森が豊かになっていくリジェネラティブな事業展開を目指すADX。同社の創設者は、祖父の代から続く安斎建設工業の3代目として生まれた安齋好太郎だ。「福島に生まれ自然に囲まれていることが当然の環境で育ってきた」という安齋は、2006年に同社を立ち上げたきっかけについてこう語る。「全世界的に都市への一極集中が進んでおり、人が自然と触れる機会がどんどん減ってきていると感じます。また、登山をライフワークとするなかで、日本の森林資源が問題を抱えていることにも気づきました。そこで、自分たちの手がける建築が増えるほどに森の新陳代謝が促され、森をよりよいものにできる、そんな事業を展開したいと考えたのです」

ADXが手がけた奄美大島にあるリゾート「MIRU AMAMI」。亜熱帯海洋性気候に適応し、地域固有の生態系に配慮した建築方法を採用するなど、サステナブルな設計に。Photo: Satoshi Kondo

その好例として、「自然と共に生きる」をコンセプトに掲げる会員制セカンドホームサービス「SANU 2nd Home」の事業を挙げる。ADXは別荘キャビンの設計を担う。「(同事業を通じて)建築の木質化率を高い水準に保ち、より多くの木材を利用する状況を生み出しています。森は長い時間をかけて循環させることが重要。木材の利用を促すことで、国内の森の新陳代謝を促すと同時に、事業チーム全体の活動として植林活動も定期的に続けています。森を豊かにするためには、木材の循環を意識した設計が必要不可欠です」

また、自然にとって不足しているのは“関係人口”だとも指摘する。「建材や工法で環境配慮型建築を目指すことはもちろんですが、やはりライフスタイルの延長としてちゃんとした“体験”を提供することが価値だと思います。そのために、より自然とダイレクトにつながるような滞在体験を生み出す建築にこだわっています」

Photo: Satoshi Kondo

農林水産省『森林・林業白書』によると、国産材供給量は2002年から増加傾向に転じ、2020年には半世紀ぶりに40パーセント台に戻っている。日本の建築業界や社会が、今後もさらに「森と“上手に”生きてゆく」ための課題は何か。「森林大国であり、木造建築における地産地消の循環型建築が実現可能な国である一方で、林業や建設業に関わる人口は年々減少していて、業界全体が担い手不足に直面しています。木を育てて、適切に伐採し、再び森を育てる、この一連の流れを支える人々や、木造建築を手がける職人たち。こうした川上から川下までのプロセス全体を、再デザインする必要があるでしょう。その結果、森や材料の状態を可視化することで、適正な循環量が明らかになり、森の管理と建築の持続性がバランスよく両立できるようになると考えています」

Text: Kurumi Fukutsu Editors: Yaka Matsumoto, Sakura Karugane

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