今回は日本男子ゴルフ界を代表する飛ばし屋二人に注目したい。ともに通算2勝をあげている、河本力と幡地隆寛だ。
二人は体格に恵まれているが、圧倒的な飛距離が出る理由はそれに加えてスイングにもある。その二人のスイングのポイントについて解説する。
■恵まれた体格
河本と幡地の飛距離は圧倒的。ドライビングディスタンスは、2024年、河本が319.25ヤードで1位、幡地が306.37ヤードで4位。23年は河本が322.58ヤードで1位、幡地が309.40ヤードで4位。22年は河本が315.74ヤードで1位、幡地が301.75ヤードで3位だった。
二人の飛距離が出る理由はどこにあるのだろうか。一つは体格に恵まれていること。河本は身長が183センチで体重が86キロ。幡地は188センチ98キロ。
24年の河本と幡地を含めたドライビングディスタンス上位5名と、下位5名の身長と体重を調べ、平均を算出すると、上位5名が182センチ、87キロ。下位5名が170センチ、72キロだった。
上位5名の平均年齢が26歳で下位5名の平均年齢が35歳。年齢からくるクラブを振る力の差も影響しているのだろう。だが、それをふまえてみても、上位5名と下位5名の体格の差は飛距離に直結することを示していると言えるのではないだろうか。
ドライビングディスタンス上位5名の身長と体重
ドライビングディスタンス下位5名の身長と体重
■河本のスイング
恵まれた体格があれば飛距離の部分でアドバンテージを得やすいだろうが、河本と幡地は、スイングを見ても飛ばしに大きな影響を与えるものが見られる。
河本のバックスイングは深い。ドライバーショットでは両肩のラインがバックスイングで120度ぐらい回っている。トップオブスイングでは、シャフトが地面と平行の位置を過ぎて、少しヘッドが垂れ下がるところまで行っている。
ダウンスイングからは大きな地面反力を使う。両脚を伸展させる力でグリップを引き上げ、クラブヘッドを加速させている。
■幡地のスイング
幡地のスイングを見ても、下半身の力を使って爆発的な飛距離を出している。スクワットのような動作が入り、河本同様、両脚を伸展させながらインパクトしている。
ただ、河本よりも力感がない。力感なく飛距離を出しているのが幡地ならではのポイント。トップオブスイングはオーソドックスなポジションにクラブが収まっており、深過ぎるぐらいのバックスイングやシャフトクロスといった、飛ばし屋にありがちな特徴が見当たらない。
■飛距離優勢型は米ツアー向きか
河本の飛距離は米ツアー経験がある石川遼から「米ツアーでも飛ぶ方に入ると思う」と評されている。仲が良い中島啓太が米ツアーメンバー入りに向けて欧州ツアーで奮闘しているということもあり、河本は少しでも早く海外に飛び出したいのではないだろうか。
幡地は22年、日本ツアー未勝利の段階で米下部ツアーの予選会に挑戦。その挑戦は失敗に終わったが、飛距離は通用することを実感できたようだ。遅咲きの飛ばし屋は、再度米ツアー予選会挑戦のタイミングをうかがう。
アメリカのコースは日本のコースより広く、河本や幡地のような飛距離優勢型のプレーヤーに向いていると言われている。
日本ツアーで賞金王争いに加わるぐらい飛距離以外の水準も上がれば、米ツアー挑戦となった時に、飛距離を生かしやすくなる。
著者プロフィール
野洲明●ゴルフ活動家
各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。