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尊敬すべき経理さん。27まで学生だった私は何も分かっていなかった

  • 2025.4.15

まだ私が学生だった頃、経理の仕事をどこか下に見ている自分がいた。私が大学を卒業した2016年は銀行が一般職を大量採用した最後の時代で、女子の就職したい職場ランキングのNo.1は某メガバンクであった。一般職は別名業務職と呼ばれ、主に経理などの内部事務を担当する。定時で上がることができ、かつ大手企業に入社できることから女子大生に人気のルートであった。例に漏れず私の友人達の中にもメガバンクの一般職を目指す者が複数おり、難関大学出身者であっても就職は一般職でいいという考えを持つ者が少なくなかった。

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そんな中、一般職を「誰がやっても変わらない仕事」だと思っていた私は周囲に流されず、博士号を取得して国会図書館に博士論文を残すか、あるいは政策立案コンテストの入賞経験を生かして企画職をやるかと、とにかく自分にしかできない仕事がしたいと考え、より学びを深めるために大学院に進学した。

その頃、一般職などの内部事務を「誰がやっても変わらない仕事」と見なしていたのは決して私だけではなかった。コンテストを運営する学生団体に所属していた頃、頭の切れる優秀な先輩が主に総務などの運営業務を担当していたことについて、「優秀なあいつを運営にしたのは失敗だった。運営の仕事は誰でもできるし誰がやっても変わらないから、あいつは企画で活躍させるべきだった」 と、その人の実力を知る先輩は仰っていた。

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その他にも、私が一般職は嫌だと感じていることについて、 「ふりるちゃんが民間の一般職じゃもったいないよ」 と、お話ししてくださる先輩もいた。経理とは、主に一般職の女性が行う内部事務の一つで、正社員ではあるが誰にでもできる仕事と思われている部分があった。

そんな私がはじめて主担当業務を任せられたのは、経理の仕事だった。1ヶ月に1度、私の扱っている項目に関する10桁のお金をミスなくまとめる。エクセルに入力する項目は何千にも上り、1つもミスが許されない。他の職員が入力したものをまとめるが、職員のミスとなるとこれまた大変で、入力した数字に間違いはないかと何百もの書類を見返しミスを発見する。何らかの理由でお金が合わなかった場合はその要因を追求し、説明文を作成する。まだやり始めの頃、入力箇所が1万個以上あるデータが消えてしまった時は全て一から作り直したが、正直逃げてしまいたい気持ちになった。相手方のミスもあり、数値が合わないときは管理職の上司から個室に呼び出されて事情聴取を受けたこともあった。難易度は高くないが根気のいる作業だ。

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そんな根気のいる業務を担っていたのが、複数の友人を含めた民間の一般職の女性たちだった。彼女たちは一般職の職員としてお給料を抑えられながら、世間では誰でもできる仕事と言われながら根気よく精一杯働いていた。私は何も分かっていなかった。27歳まで学生をし、社会に出るのが遅かった私よりもずっと若い頃から彼女たちが10桁以上の数値と戦っていたということを。

同時に、これまでずっと経理の仕事に対して色眼鏡で見ていたことに気付いた。経理のような内部事務は主に業務職と言われているが、どの職場もお金なしに回る部署はほぼ皆無だ。また、金銭に関するミスがあると不正が疑われるケースもあり、会社の正義を証明するのも経理の仕事の一部である。どんなジャンルのどの職場にも絶対に欠かせない非常に重要な仕事だったのだ。職場を回すのに最も重要なポジションを担っていたのは、実は経理さんなのかもしれないとも思っている。今回の気付きをもとに、今後とも経理などの内部事務を担当する方々を「誰でもできる仕事」と見下すのではなく、根気のある縁の下の力持ちと尊敬しながら生きていきたいと思う。

■桃色ふりるのプロフィール
2023年3月にかがみすとを定年退職し、改名。てんかんと自閉症スペクトラム障害当事者で精神障害者福祉手帳、年金2級。

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