パリのチュイルリー公園で、ファッションウィーク中に開催された最旬のデザインサロン「MATTER and SHAPE」。『A Magazine CuratedBy』の元編集長ダン・ソーリーがクリエイティブ・ディレクターを務めることでも知られ、世界から選りすぐりのデザイナー、アーティスト、ブランドが参加する。デザイナーの山本大介もその一人だ。
山本が世界の注目を集めたのは2023年。ミラノでの初個展中に、インスタレーション形式で発表したプロジェクト「FLOW(フロウ)」の革新性と機能美がきっかけだった。山本のシグニチャー的プロダクトシリーズとなったFLOWでは、内装下地材LGS(軽量鉄骨)に着目。解体されることを前提に空間を構築し、最も純度の高い素材で空間を活用・デザインする。なぜ、LGSだったのか。「木造社会だった日本において、耐火・耐震などの理由から木に代わる構造材となったのがLGSです。空間デザインにおいて、どこまで遡って素材と向き合えるかを考えたときに、空間資材の中で、日本で最も多く廃棄されるマテリアルの一つであるLGSに着目しました」
商業空間のデザインなどを多く手がけていた山本にとって、とある解体現場に立ち会ったことが転機となったという。「僕も含め、設計者やデザイナーにとっては、基本的には作るところまでがゴール。ただ、目の前で自分が作ったものがゴミになっていく光景を目にして、それが意味することを考えるようになりました」。日本の商業空間の平均寿命は約5年。建物の寿命も日本は世界的に見ると短いが、その内側の内装空間はさらに短いスパンでスクラップ&ビルドされ続けている。「廃材の再利用には莫大なコストがかかり、実際問題、壊すことに作ること以上のお金ってかけられないんですよね......。それでも、やっぱり今、目の前にあることをちゃんと見て、それを見直すこと、そして行動することが大事だと思うんです」
山本はミラノ以降、自身の作品を通じて、こうした取り組みをシェアできる世界があることに気づけたこともまた、意義深かったという。美術館のパーマネントコレクションとなり、多くのメディアが関心を寄せたのは、FLOWのプロダクトに理念とともに圧倒的な美しさが備わっていたからだろう。「美しさとは機能だ」と考える山本は、「美しさから興味を持ち、気づきがあり、心が動く。廃材、マテリアルなど関係なく、その中に入っていけることで、持続可能性プロダクトとしての表現ができる」と言う。そして、「廃棄されたものそれぞれに固有の物語がありそれ自体が大切なもの」だとも。「その想いを引き継ぎ、新たな物語を紡いでいく。そこにも美しさがあると考えています」
Text: Yaka Matsumoto Editors: Yaka Matsumoto, Sakura Karugane
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