ちょっとしたことで泣き喚いたり、物を投げたり、叩いてきたり……。収拾がつかないほどの子どものバクハツに疲弊することってありますよね。バクハツに対して穏やかに接することができるのが理想だけど、育児に家事に仕事にとせわしないママにそんな余裕はない!そんな悩みを解決すべく、専門家の先生に対処方法を伺いました。
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\読者エピソード/ ちょっとしたことで バクハツする我が子……大丈夫?
❝急いでいるときに限って、自分がやりたかった!の主張が激しい長男。 だんだんと過呼吸のようになるまで泣いて収拾がつかないです❞
Mさん(3歳、0歳男の子のママ)
長男のイヤイヤがかなり酷い時期がありました。今でも怒って喚くのは「○○がやりたかった!」と、本人が決めたかったのに、親に勝手に決められてしまったとき。その解決策として、登園手段を先回りして「歩いていく?」「ベビーカーで行く?」と選択肢を与えてみるものの途中でベビーカーで行きたいと主張を翻し、親としてはそのまま行かせたかったけど、過呼吸レベルで泣いて収拾がつかず……。私も疲れ果てて冷め切った表情で「じゃあ知らない」と言い捨ててしまいます。
❝気に入らないことがあると 泣き喚きラキューやトランプを投げつけます。 とにかく抱っこしてなだめていますが……❞
Yさん(8歳男の子、4歳女の子のママ)
長女が3歳の頃、気に食わないことがあると泣き喚き、わざとラキューやトランプなど散らばるものを投げつけて何を言っても「ヤダ!」の一点張り。何がイヤなのか理解できず本人の望む回答を外すとバクハツのスイッチオン。叩く蹴るなど手がつけられないので、距離を置こうと別の部屋に避難すると追いかけてきてドアを叩き余計泣き喚いてました。最初はなだめても、私も次第に余裕がなくなり結局「うるさい!」と怒鳴ってしまい、寝顔を見ては自己嫌悪の毎日でした。
❝塗り絵や字の練習がうまくできないと、 紙をぐしゃぐしゃにして鉛筆まで投げます。 声がけの仕方がわかりません❞
Sさん(5歳男の子、2歳女の子のママ)
息子は塗り絵や平仮名を少しでもうまく書けないと、まるで芸術家のようにぐしゃぐしゃにして鉛筆を投げ捨てます。落ち着くまで背中をさすったり、うんうんと話を聞いて何が嫌だったか聞いてみたりしますが、私もストレスが溜まって付き合うのがしんどい時は、頭ごなしに怒鳴って余計に息子をヒートアップさせてしまうことも多々あります。「神経質すぎないかな?」と親としては心配してしまうのですが、不安に思う気持ちをどう前向きにとらえればいいのか……。
❝お友達の家で年上のお姉さんに言い負かされて大号泣。 なだめに入ったわたしの腕を嚙もうとしました。 驚いて思わず怒鳴ってしまいました❞
Kさん(6歳男の子、2歳女の子のママ)
長男が4歳のとき、友人宅で小学生のお姉さんと最初は楽しく遊んでいたのですが、気づくと小学生のお姉さんが「やったのはあなたでしょ」と長男を責めています。長男は泣き叫んで「違う!」と抗議。あまりに泣くので、ちょっと離れようかと声をかけるもヒートアップして「お母さんのこと嚙むから腕出して!」と号泣。やや面喰らいつつも、こちらも怒鳴ってしまいました。どのような声がけが適切だったのかなぁと心配になってしまいました。
怒りや不安に関する絵本を監修、岡田俊さんに、 子どもがバクハツする理由を聞きました
感情を抑える前頭前野は年齢とともに発達しますが、
指折り数えるなどひと呼吸おいてみる工夫がオススメです
生まれたばかりの赤ちゃんは、お母さんとの区別さえもついていないような状態ですが、しかし自我が発達してくると自分をこんな風にしたいと思うようになったり、それができないもどかしさをお母さんに受け止めてもらいたいと思うようになったりします。子どものバクハツというのは、やりたいことが心のうちに沸き起こるものの上手にできなかったり言葉でうまく助けを求められなかったりしたときに、怒りとして感情が爆発してしまうことです。自我の成長の証でもあり、誰もが通過する時期でもあります。現にイヤイヤ期と呼ばれる2歳児が典型的な例。幼稚園くらいになると、社会性が発達してきて“親にこれをしてほしいのにしてくれない”などと感じるようになります。小学生では、なりたい自分の姿になれないなど、バクハツのきっかけとなる要求が発達段階によって変わっていきます。子どものバクハツを理解するうえで欠かせないのが、怒りなどの感情をコントロールする前頭前野の発達について。前頭前野は子どもの年齢とともに発達していきますが、個人差もあります。ほんのわずかな時間でも遅れるとバクハツにつながることも。そういうときは一呼吸をおけるようにサポートすることが大事。1秒程度の余白を作るだけで怒りのコントロールにつながります。監修した絵本『かいじゅうポポリはこうやっていかりをのりきった』では、怒りん坊の主人公ポポリが周囲の人と接する中で、カッとなったときに数をかぞえたり水を飲ませたりするなど、ワンテンポおくさまざまなアドバイスが描かれています。怒りがかんしゃくになって、叫んでしまったりものを投げたり叩いてしまう子もいます。こうなると親もカッとしてしまいます。こんなときこそ、親もひと呼吸おくことが大切。穏やかな口調で「まず、落ち着こう」と諭すことも有効です。親の心に余裕があると、子どもの心も安定していきます。とはいえ、現実ではバクハツする子どもを目の前にして冷静でいられるなんて、そう簡単にはいかないもの。親も自分に余裕がないとヒートアップして火に油を注いでしまうこともありますよね。でも、自分を責めすぎる必要はありません。最近“自分に余裕がないな”という人は、メンタルを追い詰めているものが何なのかを自問自答してみてください。子育てに孤独を感じているなら子育て支援サービスを十二分に活用してください。子育てと仕事のワークライフバランスに悩んでいる人は、30分仕事が早く終わったら、お迎えに行くのではなくスタバでコーヒーを飲む時間に充ててみてください。後回しにしがちな“自分に投資すること”に対して貪欲でいましょう。VERY世代のお母さんたちも、仕事に家事に育児にと頑張りすぎている人が多いのではないでしょうか。どんどん手助けしてもらって、自分の時間を増やしてリフレッシュをしてみてください。子どもも親も、生きやすくなるきっかけになるかもしれません。
怒りとの向き合い方を学べる1冊。『かいじゅうポポリはこうやっていかりをのりきった』¥1,485(パイインターナショナル)
岡田俊さん
児童精神科医。奈良県立医科大学精神医学講座教授。特別支援学校や知的障害者施設などにも勤務。
アタッチメント理論を研究する篠原郁子さんに、 号泣する子どもへの対応を聞きました
バクハツして「イヤだイヤだ」と泣き叫ぶ子どもは
本当は助けてほしいのです
子どもが号泣しているとママも困ってしまいますね。子どもが感情の強さや表現を調整する力は時間をかけて徐々に発達します。感情のバクハツはその過程で誰しも起こることです。子どもが自分の思い通りにならずバクハツを起こしているように見える場合でも「自分の思い」の具体的な中身は、子どもにだってわからないのかもしれません。何かが嫌でどうにかしたいけれど自分ではまだどうにもできない。だからバクハツというのは子どもが究極に困っている姿なのではないでしょうか。子どもが「イヤだ!」「それじゃない!」と拒否し続けるとき大人はつい「じゃあどうしたいの?」と理屈で問い詰めたくなります。でもバクハツしているとき、子どもの言葉は必ずしも額面通りに受け取る必要はありません。子どもだってどうしたいのかがわからず困り果てたのだし、わからないのに問い続けられるとなおさら困惑して、火に油を注ぐことになります。でも、子どもがバクハツすると余裕がなくなって、大人の中にも怒りや不安や焦りが膨らみますよね。そのときに気をつけたいのは、大人が自分の感情に任せてたたいたり怒鳴ったりはしてはいけないということ。一度は泣き止んで解決したかのように見えても、元々泣いていること以上の恐怖を子どもに与えているだけで子どもを救うことにはなりません。バクハツするくらい困っている子どもを助けるためには大人が自身の感情の荒波から自分を救い出すことが先決。まずは「子どものほうが自分よりも困っている」ということを思い出しましょう。それから、黙って子どもの手を握る、抱きしめる、深呼吸する、その場を少し離れる……など、大人が自分の感情を静める行動をとりましょう。少し落ち着いたら「嫌だったんだね」と気持ちを分かち合うのもいいですね。解決策を示されるより、気持ちをわかってもらえることで、子どもは落ち着くことがあります。小さい子なら寝転がって泣き続けると呼吸が苦しいので立たせてあげる、泣くと暑くなるので洋服のボタンをはずしてあげるなども気持ちを立て直す手助けになります。
子どものこころに寄り添うヒントが。『子どものこころは大人と育つーアタッチメント理論とメンタライジングー』¥990(光文社)
篠原郁子さん
立命館大学産業社会学部教授。専門は発達心理学。乳幼児期の感情発達を中心に、親子関係や幼児教育・保育の研究を行う。
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撮影/光文社写真室 取材・文/川原江里菜 編集/城田繭子
*VERY2023年6月号「子どものバクハツにママもバクハツしそうです」より。
*本記事は過去掲載記事を元に再編成したものです。掲載中の情報は誌面掲載時のもので、変更になっている場合がございます。