新入社員時代、緊張から積極的に質問をすることができなかったA美。
上司の「ある工夫」で、社内メンバーとのコミュニケーションを、次第に恐れなくなったそうです。
あれから数年、後輩を迎える立場になった彼女は――?
緊張して、質問ができない
新入社員として働き始めたばかりの頃、私は毎日が不安でいっぱいでした。
「わからないことがあったら、なんでも聞きに来て」と上司は言ってくれましたが、忙しそうに働く姿を見ると、なかなか気軽に質問できません。
こんな初歩的なことを聞いたら迷惑かな……と思い、わからないままなんとなくやり過ごしてしまうこともしょっちゅうでした。
大きなミスをしてしまい……
しかし、仕事は次第に複雑になり、「何がわからないのか、わからない」という状況に陥っては、いよいよ憂鬱に。
あるとき、よくわからないまま進めてしまった業務でのミスが発覚し、「不明点があったのなら、どうして質問しなかったんだ」と部長から叱責されてしまいました。
上司が気づいてフォローしてくれたからよかったものの、もう少しで取り返しのつかないことになるところでした。
このことがあってから、いつかまた大きいミスをするのではないかと、毎日怯えながら過ごすようになってしまい、ますます質問なんてできる状況ではありませんでした。
デジタルノートで質問
そんなある日、上司が「お互いにアクセスできるデジタルノートを作ったよ」と、声をかけてきました。
「ここに、どんなに小さなことでもいいから、わからないことや不安に思っていることを書いて。箇条書きでも構わないし、できるようになったことをメモするのでもいい。時間のあるときにコメントを返すから」とのことでした。
このやり方は、私にぴったりでした。
上司が「手の空いたときに確認して、返信コメントをする」と言ってくれたおかげで、質問のタイミングを心配して遠慮することがなくなりました。
緊張すると言葉が詰まってしまう性質ですが、文章でなら、落ち着いて質問することができます。
記録に残るおかげで、聞いたことを忘れてしまうこともないので、一度聞いたのに、また質問することは気が引ける、なんてこともなくなりました。
上司が「ここはこう考えるといいよ。わかりづらい部分だから、気にしないで」「いい視点だね! 気づいてくれて助かったよ」などと細かく丁寧に返信してくれたことで、気づけば質問をすることへの心理的ハードルがぐっと低くなり、毎日やりとりをするようになりました。
そればかりか、「この人になら、どんな質問をしても面倒に思われない」と安心することができたことで、対面で話しかけることにも抵抗がなくなったのです。
空いていそうなタイミングを見計らい、直接質問をすることで、より深く仕事を理解できるようになりました。
その後
それから数年後、後輩を迎える立場になった私は、上司のアイディアを真似て、社員ごとにデジタルノートを作成。
「小さなことでもいいから書いてね」と伝えると、最初は遠慮がちだった後輩たちも、次第に積極的になってくれました。
自分がかつて感じていた不安を思い出しながら、彼らが安心して業務に打ち込める環境を作ることの大切さを実感しています。
デジタルツールは単なる業務の効率化だけでなく、人と人をつなぐ手助けもしてくれることを学びました。
あの上司のように、後輩から話しかけやすい存在だと思ってもらえるよう、これからも工夫を重ねていきたいと思います。
【体験者:30代女性・会社員、回答時期:2025年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:大城サラ
イベント・集客・運営コンサル、ライター事業のフリーランスとして活動後、事業会社を設立。現在も会社経営者兼ライターとして活動中。事業を起こし、経営に取り組む経験から女性リーダーの悩みに寄り添ったり、恋愛や結婚に悩める多くの女性の相談に乗ってきたため、読者が前向きになれるような記事を届けることがモットー。