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無償化だけでない子育て支援…教師の負担軽減にもつながる施策とは?【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.17】

  • 2025.4.14

東京都議会議員、武蔵野市長時代にさまざまな、生活者目線での施策を実現した松下玲子衆議院議員。そのご経験から、今回は、日本の教育政策には何が必要か、「無償化」にとどまらない政策についてお聞きしました。

お話を聞いたのは…

立憲民主党 松下玲子議員

1970 年生まれ、実践女子大学文学部卒業後、サッポロビール入社。2004年 早稲田大学大学院経済学研究科修了、松下政経塾での研修を経て、2005 年・2009 年 武蔵野市選挙区で都議会議員選挙に当選。2017年 市民の要請により武蔵野市長選に立候補して当選、2021年に再選、2023年11月末退任。現在、立憲民主党東京都第18区総支部長。

>>松下玲子公式HP

―子育て支援の一環として、「無償化」がトレンドとなっている教育ですが、本質的には教師の負担軽減が重要だと思います。その点についてはどのような施策が必要と思われますか。

松下議員:教師の負担軽減をどう解決するかといったら、お給料を上げるか、仕事を減らすか、どちらかしかないんです。武蔵野市長時代、私は仕事を減らす事に注力しました。

―子どもの多様化、多国籍化、はたまた親対応で、教師の仕事が減らないのですが、どのようにされたのですか?

松下議員:小学校の担任の先生って、実は全教科教えてるってご存じですか。

―公立の学校は、基本的にはそうですね。

松下議員:私は、担任が全部教える必要はないと思ったのです。例えば、図工などは、大学で教員免許を取るために単位を取ったという先生より、美大出身の人とか、音楽なら音大出身とか、より専門性の高い先生に教えてもらった方が、子どもたちも楽しいし、その教科自体が魅力的になると思うんですよ。担任の先生自身も、授業の持ち時間が減らせるので、子どもと向き合う時間が取れるようになるんです。

―いわゆる教科担任制は、主要教科を、高学年は専科の先生が教えるようになっていると思います。でも、主要教科ではない先生を1人増やすのは、その分の予算が必要で、そう簡単ではないですよね。どのように実現されたのですか。

松下議員:市が雇う専科の先生を1人入れたいって言ったら、最初は「超反発」でした(笑)。武蔵野市で入れて、担任の先生の持ち時間を減らしても、他市では減らない。先生たちは東京都内で異動があるので、専科の先生がいないところへ行ったら、また持ち時間が増えてしまう、と。それでは意味がないんだということを言われました。東京都内の公立小中学校の設置は区や市ですが、教員は全て都の職員なのです。

―それでも諦めなかったのですね。

松下議員:市長になって1年目は引き下がったのですが(笑)、2年目も「まず、試しに図工、やってみません?」「音楽、やってみません?」と言ってみたら、指導課長(都からの派遣)が変わったこともあり「やってみましょう」ということになって。

―まず、一校からですか?

松下議員:手を挙げてもらいましたが、その後からは「もっと増やせ」って。だからね、って思いましたよ。子どもたちも、音楽の授業だったら、音楽の専門の先生に教えてもらえた方がイキイキするんです。

―増やすといっても、東京都の場合、先生方は都の採用で、都内での異動もあるので、東京都が専科の先生をたくさん採用していく必要がありますよね。

松下議員:本来はその通りだと思います。武蔵野市の場合は、市の講師として直接雇用したんです。それもあって、うまく時間割を作れば、市内の全ての小中学校を廻っていただけるんです。その後、国も都も教科担任制を進めましたから、武蔵野市ではそれを先取りしたということになりますね。

参照:武蔵野市独自任用の講師の配置

―残念ながら先生たちのお給料が上がらなくても、負担が軽減されれば、先生たちもやる気になるのではないでしょうか。

松下議員:モチベーションが上がるし、教育的効果が高いと思います。別の例ですが、専門性の高い先生によって、子どもたちの作る作品もすごく良くなるんですね。東京都教育委員会から派遣された先生だったのですが、産休代替教員として来てくださった図工の先生が涙が出るほど素晴らしくて、作品もですが、子どもたちも図工が楽しいって。子どもって、引き出しをいっぱい持っているので、それを上手く引っ張り出してくれるような機会があれば、無限の可能性が拓く。その経験から今の日本の教育って子ども供の可能性を押し込めたり、駄目にしてる気がするって思いましたね。

―日本の教育の根源的な問題ですね。一律一様というか画一的というか。他にも教育として変えていかないといけないことについて、どのようにお考えですか。

松下議員:正解は一つじゃないっていうことを、子どものときから身につけた方がいいと思ってるんですね。例えば、ディベートなんかはもっとやった方がいいと思うんです。意見が違う人の人格否定したり、打ち負かすことが良いような傾向が、最近特に強いと思うのですが、そうではなくて、反対の意見の人が、なぜそう考えるのかを考えてみる、というのは非常に大事だと思っています。教育もそうですが、人生も、正解って、ないですよね。子どものうちから、議論をしたり、自分の頭で考えたり、ディベートをして反対の立場に立ってみたりとか。今の教育の中では、そういう経験に欠けるのかなという気がしています。

―相手の立場に立って考えてみるというのは、とても大事なことだと思います。それ以前に、自分の頭で考えるということも、日本には少し足りないのかなと、私も思いますね。正解は一つじゃないというのは、松下さんが、子どもの頃からお父様のお仕事の関係で、全国規模でたくさんの引っ越し、転校をされた経験が活きていますか。

松下議員:そうだと思います! 例えば中学1年まで住んでいた横浜市は、中学も、公立はお弁当なんですね。その後、北海道に転校したら、給食だったんですよ。横浜の時のお友達が餞別に、可愛いお弁当箱をたくさんくれたのですが、使う時がなくて(笑)。高校になったら、家族だけ三重県に引っ越し、私は高校生活があと1年だったということもあって、北海道に残ったんですね。その時、いわゆるホームステイというか、地元のご家族にお世話になったり下宿したりという経験をして、とても鍛えられたと思っています。

―そういう多様な経験が、政治家としても活きてきますね。

松下議員:都議選では2回落選するという経験もしましたが、元来、あまりくよくよしないんです。母の影響だと思います。それこそ命を失うようなことはしてはいけない、自分も他人も傷つけてはいけない、でもそれ以外は何だっていいのよってよく言ってました。

―これからキャリアを積む女性たちに一言お願いします。

松下議員:私は、意外と怖いもの知らず、冒険心が旺盛なので、変わることへの不安があまりないんです。失敗することは、怖くないですかって言われると、怖くはないんですね。失敗するのを恐れるよりも、挑戦をしないで後で後悔する方が嫌なんです。失敗も、何が失敗かなどというのは、後にならないとわからないなと思います。だから、失敗を恐れることなく、むしろ失敗も楽しみながら自分の限られた人生を生きていきたいし、できれば人の役に立って、自分の人生だけど自分のためだけではなくて、困っている人や弱い立場にいる人を助けるため、社会にとって、他の人にとって役に立つようなことだったらいいなと思っています。

取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生

政治ジャーナリスト 細川珠生

聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。

(細川珠生)

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