【漫画】車椅子生活になっても寄り添い続けてくれる恋人の姿に「最高の彼氏」の声
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、「pixivコミック」にて掲載中の『もう少しだけ、そばにいて』(リブレ刊)第2話特別試し読みを紹介する(※2025年初夏頃より<日常編>を連載予定)。くろふねピクシブさんが、2月9日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、4000件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、作者の白野ほなみさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
変わり果ててしまった生活に、変わらず向けられる愛情
数年前の事故以来車椅子生活になってしまった晴人。出かける時には予約や事前確認が必要になり、周りからの視線にも耐えなければならない…。元々家にいる方が好きだった晴人だが、現在は明確に外出が「ニガテ」になってしまった。
今日は恋人・晃との月に1回の映画館デートの日。しかし以前は好きだった映画館特有の毛足の長い絨毯に靴が沈む感覚も、今では車椅子のタイヤが沈んでしまい重いだけに感じてしまう。足の感覚がまだあったころのさまざまな感覚を思い返しながら、もう二度と戻らない日々に想いを馳せていた。
上映が終わり、別々の映画を見ていた晃と合流する晴人。しかし晃を今の自分に付き合わせてしまうことに申し訳なさを感じていた。そんな晴人の様子を見て晃は声をかける。晴人の事を考えながら2人でリラックスできそうな計画を立てる時間が好きで楽しいと語る晃に、晴人の心は…。
この恋人に支えられる漫画を読んだ人たちからは、「泣かないで読むの無理な作品」「心理描写が上手すぎる」「この明るさに救われてるんだなあ」「最高の彼氏」「重い中に救いのあるお話」など、多くのコメントが寄せられている。
きっかけは祖母の車椅子姿を見たから
――『もう少しだけ、そばにいて』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
きっかけは色々あるのですが、1番は祖母が晩年に車椅子で生活していた事だと思います。事情があり、当時の自分は親類とは距離を置いていて、祖母がどんな様子だったか、外出や日常における様々なことが、本人の足で歩けていた頃と比べてどれほど大変になったか、祖母が亡くなってから知りました。祖母の葬式で身を小さくしながら、何も知らなかった自分、知ろうとしなかった自分を深く恥じたのを覚えています。若くして事故にあった晴人と、自分の祖母とでは状況は大きく異なるのですが、当時の後悔がこの作品を描く原動力の1部になったと感じています。
――本作では、デートが楽しみでワクワクしている晃が非常に印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。
注目ポイントとしては、制作の初期から、晴人と晃は正反対の性格という設定がありました。思い悩む事が多く悲観的な晴人と(晴人の場合は事故のせいでもあるのですが…)そんな彼の悩みを吹き飛ばそうとするかのように、明るく楽観的な晃とのやりとりに注目していただけたらと思います。また、物語が始まった段階では、晴人は自分の体の変化を受け入れてる最中です。できなくなった事や過去の自分との比較に苦しんでいる。そのため、晴人のはっきりした笑顔をあまり描かないようにしていました。(その分、晃がたくさん笑ってくれています)
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
どの話もそれぞれに思い出深いのですが、1話の夕飯の後片付けをしているシーンでの晃のモノローグと、その背後でソファから車椅子に移乗している晴人は、大事に描いた記憶があります。他にも、あまり多く書くとネタバレになってしまうのですが、夜の散歩を約束する2人、海辺を歩く晃、タクシーに乗る晴人のシーンなどは、特に思い入れが深いです。
――ストーリーを考えるうえで気をつけていることや意識していることなどについてお教えください。
意識してそうなったわけではないのですが、自分は社会の中でマイノリティと言われる方々を描くことに興味や関心が高い方だと思っています。彼らの抱える困難や葛藤を描く事に、つい力んでしまいがちなのですが、辛いばかりの物語は読んでいる方にも負担になりますし、現実を届けるならノンフィクションという方法がある。物語としてあえて描くのなら、苦しさを伝えるだけでなく、読んだ方が希望を持ってもらえるような、読んだ方に何か少しでもプラスの感情を残せるような、そんな物語を描きたいと思っています。(なかなか難しくて仕事中は悩みっぱなしです…)
――昔を思い出しながら今を生きる晴人の姿からは苦しさが伝わり、非常に胸が締め付けられました。感情を表現するシーンを描く際に意識していることをお教えください。
感情を表現するシーンを描くのはいつも悩ましいです。感情にも表現にも『正解』というものがなく、ちょっとしたセリフのニュアンスや表情の微細で印象が変わってしまう事もあります。正直に言えばいつも手探りなのですが、とにかく細かく想像することを意識していると思います。キャラクターの置かれた状況を想像して、何を思ったか、どんなことを感じるだろうかと…彼らの言葉や表情をどういう風に見せれば、読んだ方に伝わるかを考えています。
――今後の展望や目標をお教えください。
漫画を描き始めたころから、ヒット作を出すことより、誰かの本棚の大事な一冊を描きたいと漠然と思っていました。出版社や書店さんなど多くの方が作品に関わってくださっているので、そういった方々のためにも、少しでも多くの方に届く作品を目指していますが、それと同時に、たった一人でもいいから、誰かの心に深く残るようなお話を作りたいという思いも持ち続けています。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
稚拙ながら、色々なテーマや思いを込めて描いた作品です。時に困難や辛い部分もありますが、晴人と晃の日々を一緒に追いかけていただければ嬉しいです。