第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された『アスファルト・シティ』が6月27日(金)より公開されることが決定。あわせて、ポスタービジュアルが解禁となった。
アート、カルチャー、ファッション、そのすべてにおいて世界の最先端を誇る街、ニューヨーク。だが、人々の夢と憧れを集めて輝くこの街は、犯罪と暴力に支配されたエリア、ハーレムという闇も抱えている。そんな真昼の太陽の下でも一人歩きを止められるハーレムを、縦横無尽に駆け回る者たちがいる。
出動命令を受けるやいなや、命を救うために飛びだして行く救急救命隊員だ。彼らを待ち受けるのは、ギャングの抗争、ドラッグを巡る銃撃戦、オーバードーズ、DV、言語の通じない人々の争い。まさにこの世の地獄と呼ぶべきハーレムの救急医療現場。本作はその知られざるリアルに肉迫する、緊迫の没入型スリラーだ。
腕利きのベテラン救急救命隊員の主人公ラットを演じるのは、『ミスティック・リバー』(03)、『ミルク』(08)で2度のアカデミー賞主演男優賞に輝く名優ショーン・ペン。オファーを受けた際は、監督やプロデューサーなど製作側に専念するため、もう役者はやらないと断ったペンだったが、最終的に本作が訴える現状への危機感に共鳴し出演を決意した。ラットの相棒となるもう一人の主人公、新人隊員のクロスには、「X-MEN」シリーズ、『レディ・プレイヤー1』(18)のタイ・シェリダン。人の命を救う仕事を理想としていた青年が、きれいごとなど欠片もない修羅場を目の当たりにし、混乱と葛藤に心を引き裂かれていく様を体現する。
主演の2人は製作総指揮も兼任、撮影前に救急車に同乗して救急救命隊と行動をともにし、役作りを超越した体験を全身に叩き込んだ。さらに、「ファンタスティック・ビースト」シリーズのキャサリン・ウォーターストーン、『ラストデイズ』(13)のマイケル・ピット、元プロボクサーのマイク・タイソンら個性派キャストがハーレムの街で力強く生き抜く人々を演じる。
監督は、カンヌ国際映画祭の「ある視点部門」に出品された『ジョニー・マッド・ドッグ』(08)や『暁に祈れ』(17)など、バイオレンスをテーマに社会と人間のダークサイドに真正面から斬り込む容赦なき作家魂で高く評価されるジャン=ステファーヌ・ソヴェール。本作では元救急救命隊員の作家が実話を基に執筆した小説を原作に選び、救いの物語を紡いでいる。過酷な現場で繰り広げられる生と死の極限のやり取り、さらに命の運命を握るという危険ゾーンに踏みだす隊員の心理までを克明にあぶりだしている。
冷たいアスファルトに囲まれたハーレムの街、善意など微塵も役に立たないほど切迫した医療現場で救急救命隊員たちが見た地獄とは。『アスファルト・シティ』の続報に期待したい。
文/平尾嘉浩