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食べて良し、塗って良しの「発酵」の世界を深掘り。肌や体へのメリットを専門家が解説

  • 2025.4.14

昔から身近に存在していた発酵が、ここ数年で改めて脚光を浴びています。食べ物はもちろん、コスメにも取り入れられることが増えた発酵について深掘り。取材で明らかになった、メリットだらけの発酵沼へようこそ!

出典元:MAQUIA ONLINE

食べて良し、塗って良し。肌にも体にもおいしい発酵の世界

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テレビ、雑誌など多方面で活躍中。YouTube「榎本美沙の季節料理」、Instagram(@misa_enomoto)のSNSをはじめ、多数出版している本も常に話題。

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化粧品会社研究所で技術開発に31年間従事。東京農工大学の客員教授を務めながら化粧品などの解説をするなどメディアでも活躍。

Q 発酵ってそもそも何のこと?

A.微生物(細菌・菌類)が有機物を変化させるプロセスのこと

「微生物の生命活動の1つ。その中で人間にとって役立つ変化のことを発酵と呼んでいます」(榎本さん)。「微生物の働きによって美容成分のエキスを生成する“過程(=酵素反応)”を指し、その発酵エキスを配合したのが発酵コスメとなります」(次田さん)

Q どうして発酵が注目されているの?

A.コロナを経験して見直された美容や健康への関心の高さから

「摂り続けることで肌や体を整えてくれるという点が改めて注目されているのだと思います。新型コロナウイルスを含め感染症が増えた時期に関心が高まり、おいしさや栄養、手軽さで人気に」(榎本さん)。「コスメで言うと、医薬部外品の有効成分として承認された発酵成分の発見や、多くのブランドが取り入れた話題性も関係していると思います」(次田さん)

Q 発酵ってどうやって起こるの?

A.たくさんの条件が揃ったときに自然発生的に起こる

「麹菌や乳酸菌などの微生物が、温度、湿度、期間、pHなどいくつかの条件が揃うと、アルコール、有機酸、炭酸ガスなどを産生しながら天然成分を分解。つまり発酵が起こります。基本的に、コスメも食べ物も発酵のプロセス自体はほぼ同じですが、目的や使用する成分、生成される成分がコスメと食べ物では異なります」(次田さん)。「食べ物においてはおいしさを引き出すことが目的になるので、発酵食品の種類によって醸造方法が異なります」(榎本さん)

Q 発酵の菌ってどんな種類があるの?

A.星の数ほどの菌が存在。実はカビも菌の一種

「代表的なものだと麹菌、乳酸菌、酵母菌、納豆菌、酢酸菌などがありますが、乳酸菌だけでもガセリ菌、ビフィズス菌など種類豊富。ブルーチーズも青カビにより発酵したもの。国内外の食事情を調べると数えきれないほどの菌があります」(榎本さん)。「コスメに使用されるのは、麹菌、酵母菌、乳酸菌がメインですが、最近では、グルコノバクター、ミドリ麹、納豆菌も目にする機会が増えました」(次田さん)


健康には気をつけたい、でも時間がないというタイパを求める現代人にフィット。また発酵は取り入れ続けることで効果を実感しやすいため、“食べる”という日常の延長で導入するのがベター。おいしさも増すため、食生活の楽しさを再確認できるという声も。

コスメ
発酵により生成される代謝物から新機能を持つ成分が発見されることも多く、コスメに配合する成分の多様性と機能性が向上。また原料の産地や製法によりオリジナリティを出しやすく、ブランドのフィロソフィーを打ち出しやすい、という作り手側のメリットも。

食べて良いコト

保存性が高まり料理が簡単&時短に

「旨味、甘味が豊かになる発酵調味料は、それだけで味が決まる万能なアイテムです。あれこれ何種類も調味料を使わなくても、1品で味わいが深くなるので簡単。それに、発酵調味料は人間に有害となる腐敗菌を抑えてくれるので保存性も高いです」(榎本さん)

おいしくなって栄養素もUP!

「一例ですが、味噌作りで使う麹は米に麹菌を繁殖させたもので、麹由来の酵素が大豆のタンパク質を分解しアミノ酸に変えることで旨味が。また、別の酵素にはデンプンを糖に変えて甘味を作る働きも。栄養素を消化吸収しやすくしておいしさも生まれます」(榎本さん)

腸が整う→免疫力UP

「例えば、甘酒など多くの発酵食品に含まれるオリゴ糖やブドウ糖は腸の善玉菌のエサになるなど、発酵食品と腸には深い関わりがあります。発酵食品を摂ることで腸が整い、それによって免疫力アップや肌の質が良くなるという効果も期待できるんです」(榎本さん)

塗って良いコト

天然由来成分の安心感

「コロナ禍を経てスキンケアへの関心が高まり、使うアイテムの選び方も変わったと思います。“肌への優しさ”を重視する人も増えたのでは? その点、聞き馴染みのある原料が使われている発酵コスメは、安心感を持って使えるというメリットが」(次田さん)

発酵ならではの高機能成分を肌へ

「発酵エキスにはアミノ酸や乳酸菌など、肌の保湿や抗炎症作用が期待できる成分が豊富。最近では、ライスパワーNo.11が医薬部外品の有効成分として認められるなど、悩みに特化したアプローチも期待でき、一層注目をされるようになっています」(次田さん)

生活者としてSDGsに参画できる

「近年、発酵コスメについての研究が進み、成分へのこだわりも加速。もちろん、発酵エキスの原料も見直されるように。その中で本来は捨てられるはずのものが発酵エキスの材料になることも増え、SDGsの観点からも良い点が多いのはうれしいですよね」(次田さん)

MAQUIA 5月号
取材・文/浦安真利子 構成/山下弓子(MAQUIA)

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