ロールキャベツ、ミートボール、ポテトサラダ――これらはどれも、子どもから大人まで、みんなに愛される料理だと思います。だけど、共通することが、もう1つ。それは、調理に手間がかかること。ロールキャベツなんて、手間がかかる料理の代表みたいな存在ですよね。でも、これらがすべて「フライパン1つ」や「ポリ袋1つ」で完成するとしたら。
料理家・栄養士のほりえさちこさんによるレシピ本『マッハ快速タイパめし』(主婦の友社)では、「フライパン」「なべ」「ポリ袋(加熱用・非加熱用の2種類)」のどれか1つを使って作る料理を紹介しています。しかも、20分以内に完成するレシピがほとんど。たまにはスーパーの惣菜やインスタント食品もいいけど、やっぱり家族のために栄養のある手作り料理を作りたいし、自分も1日の終わりに温かくておいしいごはんを食べたい。そんな時にぴったりの料理を、試しに3品作ってみました。
ちぎってのせても味は同じ。「ロールしないよキャベツ」
「フライパン1つでできる料理」からチョイスしたのは、「ロールしないよキャベツ」です。キャベツをロールしないで、ちぎって重ねて仕上げるシンプルなレシピ。ナツメグさえ入れば、本格的な味わいになるのだそう。
本当にフライパン1つでできるの? と思いましたが本当にできました。一般的なレシピでは、“タネ”をボウルの中でこねますが、ここではフライパンに材料を直接入れて混ぜます。できあがった“タネ”は、ちぎったキャベツと順に重ね、あらかじめとっておいたキャベツの葉で蓋をして、グツグツと15分煮込むだけ。
口に入れた瞬間、驚きました。キャベツはトロトロだし、お肉からは肉汁が。口の中でジュッと広がるスープは芳醇で、お店のような味わい。一緒に食べた夫と息子は、最初に「うん!」と言っただけで、あとは黙々と食べ、気づいたらお皿が空っぽになっていました。しゃべる時間が惜しいほどおいしかった模様。
丸めず、ふんわり。「棒からはじまるミートボール」
フライパン1つでできる料理、「棒からはじまるミートボール」も作ってみました。先ほどと同様、タネ作りも成形もフライパンの上なので、ボウルやバットは必要なし。混ぜて成形するのにスプーンを使ったので、手も汚れていません(手で混ぜてもいいと思います)。タネを棒状にしたら、ケチャップ・中濃ソース・はちみつ・水を混ぜた煮汁を加えて4〜5分煮ます。
空気抜きをしないので割れてしまわないかと思いきや、そんな心配は無用でした。煮汁で煮るからなのか、ふんわりとしたやわらかさを保ちつつ、煮崩れせずにミートボールが完成。煮汁をかけながら煮るので味が染みているし、肉汁もジュワ〜ッ。本当に簡単でおいしいです。子どもから「ミートボールが食べたい」と言われ、作る手間を考えて固まってしまう…ということはもうなさそう。このレシピがあれば、すぐに作れるから。
野菜嫌いにもおすすめの「らんぼうポテサラ」
野菜をふんだんに使った栄養たっぷりのレシピもあります。その1つが「らんぼうポテサラ」です。その“快速レシピ”ぶりには驚きました。なにしろ、野菜はすべて加熱用ポリ袋に入れ、鍋で茹でることも、ボウルで混ぜることもなく、その中で調理完了してしまうので。ポリ袋に入れた野菜を叩いて潰すから、その名も「らんぼう」。こんな「らんぼう」なら大歓迎。料理の完成後、洗い場にある洗い物は、まな板と包丁くらいでした。
味見をした息子は「うまっ!」のひとこと。ゴロッと大きなままレンチンしたじゃがいもも、人参も、玉ねぎも、ホクホクのやわらかさ。むしろ、茹でた時の水っぽさがなく、いつも作るポテサラよりおいしかった! 野菜嫌いな子にもおすすめです。
いちばんの収穫は、ストレスなく、家族と一緒に食べるごはん
本書のレシピでいちばん驚いたのは、これだけ大胆に道具も手間も絞っているのに、手間をかけて作った料理よりもおいしく感じたことでした。たとえば「ロールしないよキャベツ」は、キャベツを巻かないから、巻くためにキャベツをやわらかく茹でる必要がない。しかも、同じフライパンで調理するから、肉汁とキャベツの旨みが一緒になって2倍おいしく感じました。手間を省いてもおいしいレシピが厳選されているのだと思います。私にとって、料理の革命でした。
なにより、道具や手間を省いたことで、調理のストレスが減ったのが、いちばんの収穫でした。おいしい料理をササッと作って食卓へ。温かい料理をとりわけて、みんなでいただく。ちょっと洗い物をしてから自分だけ遅れて食卓へ…ということもなし。時にはフライパンをそのまま食卓に出して、みんなでとりわけても楽しそう。家族の食事を楽しむいちばんの条件って、温かいごはんをみんなで食べることだなと、あらためて実感しています。
猫の手も借りたい夕飯時に登場する「猫侍」のイラストにも、思わず癒されてしまうはず。この1冊があれば、ごはんの支度で憂鬱になることがなくなりそうです!
調理・写真・文=吉田あき