猫の尻尾のようなユニークな赤い花穂をたくさんつけるキャッツテール。愛嬌のある美しさが魅力の鉢花として親しまれています。熱帯原産ですが寒さに意外と強く、都心部や関東南部では戸外で越冬することも。開花期間が長く、丈夫で育てやすいので、ガーデニングでもっといろいろ活躍できる植物です。この記事では、キャッツテールの概要とその特徴、育て方などを解説します。
キャッツテールの基本情報
植物名:キャッツテール
学名:Acalypha chamaedrifolia (=Acalypha hiiolae、=Acalypha reptans)
英名:Red Cat’s Tail
別名:キャットテール
科名:トウダイグサ科
属名:アカリファ(エノキグサ)属
原産地:西インド諸島、フロリダ南部
形態:多年草
常緑の多年草で、主に小型から中型の鉢植えとして栽培されるキャッツテール。名前のような猫のしっぽに似た赤い花穂を枝先にたくさんつけ、春から秋の長期間、愛らしい花が楽しめます。
寒さには意外と強く、霜に少し当たる程度なら耐えます。また、屋外でも関東南部や都心部の条件のよい場所で越冬します。ただし地上部はほぼ枯れますが、春に再び芽を出して花を咲かせます。
葉に白斑が入った品種や、花穂が濃い赤色の品種などがあります。
キャッツテールの特徴・性質
園芸分類:熱帯植物、草花
草丈:10~50cm
耐寒性:やや弱い
耐暑性:普通
花色:赤
茎は細く直立せず、横や斜め上方向などに伸びます。地面に接した茎からは根が出て広がり、群落を作るようになります。鉢からあふれ落ちるように茎が伸びるので、吊り鉢やスタンド鉢などの栽培にも適します。卵型の葉には毛が密生し、葉の縁には鋸歯があります。
花は四季咲き性で、温度を保てば一年中開花する嬉しい性質も。花穂は5cmから10cmほどの長さがあり、地植えすると花穂が直立して目立ちます。
キャッツテールの品種と仲間
アカリファ属は、アメリカ大陸を中心に世界の熱帯から亜熱帯、北米などに約440種が知られています。斑入りの品種は白斑と赤い花穂が対比して美しいですが、葉焼けに注意してください。
‘メメ’ Acalypha chamaedrifolia ‘Meme’
赤紫色でもあるような濃い赤色(RHSカラーチャート46A)の花穂が特徴の品種です。
ベニヒモノキ Acalypha hispida
ビスマルク諸島原産で、草丈2~4mほどの熱帯花木です。花穂は最大50cmほどの長さになり、人目を引きます。寒さには弱いですが、適温が保たれていれば周年開花します。観賞価値が高いので、植物園などではよく見られます。
アカリファ・ウィルクシアナ Acalypha wilkesiana
観葉植物として栽培される種類で、ビスマルク諸島からソロモン諸島、フィジーにかけての地域が原産です。草丈3m以上にもなる常緑低木で、ヒモ状の花穂がつきますが目立ちません。鮮やかな斑が入る品種が沖縄などの熱帯・亜熱帯地域で広く栽培されます。一般的にも、鉢植えが流通することがあります。
キャッツテールの栽培12カ月カレンダー
開花時期:4〜11月
植え付け(地植え):5~6月
植え替え:4~6月
肥料:5~10月
切り戻し:4~5月、11~12月
挿し木:6~9月
キャッツテールの栽培環境
適した環境・置き場所
日当たりのよい場所が適しますが、半日陰でも十分育ちます。明るい日陰でも育ちますが、花付きや花色が悪くなります。
屋外の日向で吊り鉢にして育てると風通しがよく、元気に育ちやすいです。コンクリートの上などに鉢を置くと、夏に蒸れて調子が悪くなることがあるので注意。高い場所に鉢を置くか、午前中だけ日光が当たる半日陰に移動してください。風通しの悪い場所は、夏は半日陰で育てたほうがよいでしょう。
生育温度
20℃~30℃が生育に適した温度です。夏に暑さで弱ることは少ないですが、35℃以上の猛暑が続く場合は半日陰に移動してください。
冬越し
室内の日当たりのよい場所に置けば、越冬は容易です。
四季咲き性が強く、冬でも室内の暖房が効いた部屋の日当たりのよい場所に置くと、花が咲き続けるのは珍しくありません。
温度が0℃近くに下がると枝葉が傷みますが、小株でなければ地下部は生存しています。5~6月には新芽が出てくるので、あきらめずに育ててください。新芽が伸びだせば気温の上昇とともに成長が早くなり、夏までには花を咲かせます。
キャッツテールの育て方・日常の手入れ
水やり
鉢土の表面が乾いたら、たっぷり水やりしてください。花がよく咲いている場合は乾きやすいので、水切れに注意してください。夏の晴れの日は毎日水やりするほか、朝夕2回の水やりが必要な場合があります。
冬は乾かし気味に管理します。
肥料
5~10月に、肥料の3要素であるチッ素(N)・リン酸(P)・カリ(K)が等量か、リン酸が多めの緩効性化成肥料を規定量与えてください。液体肥料を月に3回程度与えるのもよいでしょう。
病害虫
夏などの乾燥時にハダニが発生することがあります。葉にかすれ模様が見られたら、早めに薬剤で防除してください。
発生は少ないですが、枝葉が茂るなどして風通しが悪くなると、カイガラムシが発生することがあります。切り戻してから薬剤で防除してください。
手入れ
咲き終わって黒ずんできた花穂は、見つけ次第切るようにしましょう。
キャッツテールの作業・剪定と増やし方
剪定
伸びすぎた茎や、込みすぎた部分は、随時切っても問題ありません。全体を切り戻したい場合は、4~5月の春か、冬前の11~12月に行うとよいでしょう。
増やし方
6~9月に、挿し木で増やすことができます。枝を7~10cmほど切り、下葉を切って葉を3枚程度残して挿し穂とします。赤玉土小粒などの清潔な用土にさし、明るい日陰で乾かさないように管理してください。1カ月ほどで発根したら、3号ポット鉢などに3本くらいずつ鉢上げします。
キャッツテールの植え替え
購入したばかりの株で鉢が小さく乾きやすい場合は、そのまま一回り大きな鉢に植え替えてください。
冬越しさせた株は、1~2年に1回、4~6月に植え替えるとよいでしょう。花をよく咲かせるには、毎年植え替えするのがおすすめです。
植え替えは、古い土を1/3程度落とし、一回り大きな鉢に植え付けます。その際、伸びすぎた枝などを剪定して株姿を整えるとよいでしょう。
鉢を大きくしたくない場合は、全体を半分程度まで切り戻し、古い土を半分程度落としてから同じ鉢に植えます。半分に株分けすることもできます。
用土
草花に広く使える、一般的な培養土が使えます。配合する場合は、赤玉土小粒7、腐葉土3を混ぜた用土などを使います。
地植えもおすすめ! キャッツテールのモフモフの花をいっぱい楽しもう
寄せ植えや吊り鉢にも最適なキャッツテールは、寒さに弱いと紹介されていることが多いようです。軽い霜程度なら耐えるので、暖地では手間のかからない宿根草のように育てられます。グラウンドカバーにすれば、ユニークな美しさと愛らしさで人目を引くことでしょう。霜がよく降りる地域で地植えしても、冬までに掘り上げて室内に移動すれば冬越しも容易です。ガーデニングでキャッツテールをもっと活用してみてください。
Credit
文 / 小川恭弘 - 園芸研究家 -
おがわ・やすひろ/1988年、東京農業大学農学部農学科卒業。千葉県館山市の植物園「南房パラダイス」にて観葉植物、熱帯花木、熱帯果樹、多肉植物、ランなど温室植物全般と花壇や戸外植物の育成管理のほか、園全体のマネジメントなどの業務に18年携わる。現在フリーランスとして活動。著書に『わかりやすい観葉植物』(大泉書店)、『ハイビスカス』(NHK出版)がある。