1. トップ
  2. レシピ
  3. 【田園日記~農と人の物語~ Vol.10】宮崎県日向市の“伝説”の味を次代へ!「つきいれだんご」

【田園日記~農と人の物語~ Vol.10】宮崎県日向市の“伝説”の味を次代へ!「つきいれだんご」

  • 2025.4.10

農にまつわるリアルを伝えるドキュメンタリー連載。情熱をかけて地元で「農」を盛り上げる「人」にスポットを当て、いま起こっているコトをお届けします。第十弾は、宮崎県の郷土菓子「つきいれだんご」のレシピを受け継ぐ、JAみやざき日向地区本部女性部のみなさんの活動を紹介します。


港町に伝わる素朴な味

神話が数多く伝わる宮崎県。その海岸部にある日向市美々津地区では、「つきいれだんご」という菓子が古くから作り継がれてきました。
こんな伝説とともに――。



初代天皇といわれる神武天皇は、美々津の港から、日本を治める旅(神武東征)に出発することになりました。お船出の日は、旧暦の八月一日に決定。美々津の人々は、祝いのだんごをさしあげる準備をしていました。

「ところが台風で、急にお船出が早まったんですよ。間に合わせるために急いで材料を入れて、ついたから、『つきいれだんご』なんです」

と、地元に伝わる逸話を教えてくれたのは、JAみやざき日向地区本部女性部(※)「美々津料理グループ」のみなさん。

※JA女性部…JA(農業協同組合、農協)をよりどころとして、食・農・暮らしに関心のある女性が、集まって活動する組織です。地産地消を進める活動や高齢者福祉活動など、幅広い活動に取り組んでいます。



「わたしたちは、『つきいれ』と呼んでいます。作るのは、お盆の時期よね」
「そうそう。仏様にお供えしたり、お客さんにあげたり。自分たちも食べるので、たくさん作るんですよ」

お船出伝説はたいせつな文化

お船出に間に合うよう、急いで仕上げただんごだけに、作り方はとてもシンプル。

もち米を蒸し、半分ほどついたところで、ゆでたアズキを入れて、いっしょにつきあげます。白い餅全体が、アズキ色に染まったらできあがり。黒砂糖をかけて食べます。



「きな粉でもいいけど、黒砂糖がいちばん合うわね。仏様にお供えするときも、黒砂糖を添えるんですよ」
そう言ってほほ笑むのは、黒木眞壽美さん(75)。

また、美々津で生まれ育った黒木美智子さん(65)は、懐かしそうに話します。
「昔から『お船出だんご』という名で売られていました。小さい頃、習字教室の帰りに買って食べるのが楽しみで。三個で三十円でした(笑)」

さらに話は盛り上がります。

「神武様がお船出されたのは、寒い朝だったそうよ」
「急に出発が早まったので、扉をたたいてみんなを起こして回ったのよね」
「だから今でも『起きよ祭り』というのがあって、歌もあるんですよ。起きよ~起きよ~ みな起きよ~♪」

みなさんの言葉から「お船出伝説」への深い愛情があふれています。でも最近は、つきいれだんごを作る家庭も少なくなってきたのだとか。

グループリーダーの海野千浪さん(66)は語ってくれました。
「つきいれも、お船出伝説も、美々津のたいせつな文化。次の世代につないでいきたいと思います」


「つきいれだんご」の作り方



材料(20皿分)

もち米 1升
アズキ 8合
黒砂糖(粉) 適量

作り方
❶ もち米を洗って、一晩水につけておく。ざるに上げ、水を切る。蒸して、五分づきの状態までつく。



❷ アズキはやわらかく煮ておく。①にアズキを入れ、いっしょにつく。



❸ 途中、しゃもじでかき混ぜ、餅全体がアズキ色になったらできあがり。



❹ 箸を使って、巻き取るように皿に盛る。そこへ黒砂糖や、きな粉をかけて食べる。




※当記事は、JAグループの月刊誌『家の光』2024年8月号に掲載されたものです。

元記事で読む
の記事をもっとみる