【写真】広瀬アリス&渡辺翔太「なんで私が神説教」制作発表時の様子
広瀬アリスが主演を務める「なんで私が神説教」(毎週土曜夜9:00-9:54、日本テレビ系)が4月12日(土)にスタートする。本作は、「生徒とはほどよい距離感で。怒るな、ほめるな、相談乗るな」をモットーにする私立高校を舞台に、なんとなく教師になった広瀬演じる主人公・麗美静が“説教”をしたくもないのにせざるを得ない状況に追い込まれていく学園コメディーだ。このたび、オリジナル脚本を手掛けたオークラ氏にインタビューを敢行。脚本へのこだわりやドラマの見どころ、広瀬の印象などを聞いた。
“ものが言えない”人の気持ちを代弁する主人公を描く
――今回のドラマはオリジナル脚本ということで、企画が生まれた経緯を教えてください。
まず、プロデューサーから「女性教師もので、何かできませんか?」と相談されました。そのときにたまたま「人を怒れない」という話を周囲から聞いていて、僕らの周りでも年齢的にそういう人が増えてきたのかなと思っていました。それがもし“先生”なら、なおさら言いづらいことが多いんだろうなと思い、そこから今回の企画を思い立ちました。
――広瀬アリスさん演じる麗美静先生のキャラクターは、どのような思いから生まれたのでしょうか?
今、社会が急激にパワハラやモラハラに厳しくなってきて、その反動として、ものが言いにくい世の中になっていると思うんですね。その中で、麗美静は“ものが言えない”人たちの気持ちを代弁してくれるキャラクターにしたいと思いました。
――静自身、人と深く接するのが苦手で、自分の考えや思いを表にほぼ出さないキャラクターになっていますね。
でも、頭の中ではごちゃごちゃ考えていて、本当は言いたいことがたくさんあるんですよね。ちゃんと人にも興味があるし、はなから人を拒絶しているのではなく、過去のトラウマによって人に何かを伝えることを恐れていった人でもあります。今は何事も正解しないとダメな世の中になっていますが、正解じゃなくても言いたいことはあるだろうし、勢いで言ってしまうこともあると思うんですね。静を通して、そういう人たちの気持ちを描きたいと思いました。
広瀬アリスの印象は「人間味にあふれた方」
――広瀬アリスさんの印象はいかがですか?
広瀬さんは人間味にあふれた方だと思っていて、バラエティーに出ているときの発言がとてもピュアだなと思って見ていました。SNSも自分の意見を持ってるし、ちゃんと人の話を聞ける方だという印象がありました。
――静のキャラクターを広瀬さんに近づけたところはありますか?
僕の場合、最初はキャスティングが決まらないまま企画を進めていくのですが、「(主演は)○○さんになりそう」と聞くと、その方に合わせた脚本になっていく傾向があります。結果的に、僕がイメージする広瀬さんに近づいている気はします。
――オークラさんがイメージする広瀬さんというのは、先ほど言われていた“人間味”の部分ですか?
そうですね。広瀬さんの本音を言ってしまいそうな感じというか、抑えるところは抑えているけど、本当は言いたがりで、イヤだったら言ってしまうみたいな感じ。そういったところは静のキャラクターに反映しています。
説教シーンを描く上で意識していること
――静の同僚教師であり浦見光を演じる渡辺翔太さんの印象を教えてください。
渡辺さんはSnow Manの中でもイケメンキャラで、彼の持っている美容系のノリとかが、生徒に深く入ろうとする浦見に似ている感じがします。浦見は思ったことを口にするタイプなので、静たちと違うオールドタイプの教師に見えたらいいなと思っています。
――これまでにも学園ドラマは数多く作られてきましたが、今回のドラマでこだわっているところはありますか?
最近はやたらと不倫したり、過激な展開のドラマが増えていると思っていて。「そんなに事件ばかり起きないだろ」という思いが僕の中であったので、今回は日常の中で起きる出来事を描きたいと思っています。ただ、人にはいろんな気持ちがあるので、周りからすると大それたことでなくても、当人にとっては大事件ということもありますよね。
あと、自分の発した言葉が誤解を招いたり、思っていたのとは違う方向に行ってしまうことは、普段の生活でもよくあると思うのですが、今回は「説教」と言っているくらいなので、そういった言葉のすれ違いについても描けたらいいなと思っています。
――タイトルにもなっている静の「説教」が見どころになるかと思いますが、説教シーンで意識していること、大事にしていることを教えてください。
今は一つ言葉を間違えると総叩きしたい人たちが騒ぎ出すから、間違ったことを言えない世の中になっていると思います。その中で、静の説教は彼女なりの目線があったりするので、あくまでひとつの意見なんですよね。そういった意味を含めて「正解じゃなくてもいいんじゃないか」という思いを込めながら、説教シーンを描いています。でも、静は先生ですから、それなりに責任を負わないといけない立場でもあるので、静が説教を考える時間をドラマの中に設けています。
――第1話では、スマートフォンに説教の原稿を書いて、それを読み上げていますね。
学園ものには先生の説教シーンが定型的にあるんですけど、僕はいつも「この人は説教をその場で考えているのかな」とか、「この人はいつの時点でこれを言おうと思ったんだろうか」と思っていました。そういうところも今回のドラマのテーマになっています。
――その「説教」の言葉選びはどうされていますか?
自分なりに考えたものを1回、バーッと書いてみて、それをプロデューサーや監督に見せて意見をもらうようにしています。ただ、正論を言いたいわけじゃなくて。例えば、高校生に取材をしていると、恋愛に悩んでいる子が多いんですよね。しかも、彼らぐらいの年齢だと死活問題のように捉えてしまいがちですが、僕ら大人から言わせると、高校時代の恋愛って、ほぼほぼ叶っていないんですよね(笑)。それをまず言いたいなと思って、セリフを考えたりしています。
――高校生にも取材をされたんですか?
高校生と先生にもお話を聞きました。それで思ったのは、僕らと高校生では年齢的、世代的ギャップがあるように感じていましたが、実際に話を聞いてみると、生意気な後輩のことで悩んでいたりして、根本のところはあまり変わらないんですよね。でも、それを受け取る教師や大人たちが対応に困っているという状況は実際にあるので、それはドラマに反映させたいと思いました。
「笑えるものを作りたい」脚本づくりのこだわり
――今回のドラマに限らず、オークラさんが脚本を書くうえで最もこだわっていることはなんですか?
僕はお笑いのコントや舞台を軸にやってきた人間なので、基本は笑えるものを作りたいと思っています。なので、どんなに真剣でシリアスなシーンでも、ちょっとだけクスッとできる部分を大事にしています。それは僕が個人的に笑いのある作品のほうが好きなのもありますが、どんな真剣なときでも思わずクスッとしてしまうことは日常でもあるじゃないですか。そうしたことをできるだけ脚本に取り入れたいと思いながら書いています。
――オークラさん自身はこれまでの人生で「神説教」を受けたことはありますか?
これは説教とはちょっと違うのかもしれませんが、僕はバナナマンさんとよく仕事をしていて。そのコント台本を書いているときに、設楽さんから台本の矛盾を指摘されたことがあったんですね。そのときに「矛盾をなくせば笑いが生まれる」と言われたことをよく覚えています。そんなに強く言われたわけではないですが、僕の中では心に残っている言葉ですね。
――放送を楽しみにしている視聴者にメッセージをお願いします。
今のドラマは何事も大仰になりすぎていて、本当に説教しなくてはいけないところに目が行っていないと思うので、今回は高校生だけでなく日常的にみんなが当てはまる普遍的な問題を描いていこうと思っています。どちらかといえば、生徒たちの問題に巻き込まれる大人たちの目線から描くことになるので、主人公である静の気持ちをベースに観ていただけるとうれしいです。
◆取材・文=馬場英美