曲線で魅せる。“フレアヒール”の誘惑
2024年はバレエシューズとキトゥンヒールがリバイバルを遂げた年だったとすれば、2025年は“フレアヒール”がその座を引き継ぐことになるだろう。70年代の自由なムードを纏った一足は、レトロな佇まいでありながらどこか新鮮で、今季、ランウェイやレッドカーペットでもその存在感をじわじわと高めている。
フレアヒールのルーツは、1970年代のディスコ全盛期。ダンスホールブームを背景に、華やかなファッションが主流で、ナイトアウトを楽しむ高揚感に満ちた時代だった。今ではそうした夜遊び文化は影を潜め、落ち着いたライフスタイルが定着しつつある。しかし、ファッションの世界では、その時代のエネルギーを宿したスタイルが、再び注目を集めている。
このトレンドの先駆者として知られるのが、数シーズン前からフレアヒールを提案してきたアミナ モアディ(AMINA MUADDI)。その流れは今、ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)やジミー チュウ(JIMMY CHOO)といったビッグメゾンにも波及。彫刻的なヒールが続々と登場し、フレアヒールは完全にメインストリームの仲間入りを果たしている。
このチャンキーなヒールは、セレブリティからの支持も厚く、サブリナ・カーペンターはテイラー・スウィフトのニューオーリンズ公演でフレアヒールを披露。自身の身長を「ちょうど5フィート(152cm)」と公言している彼女にとって、フレアヒールはスタイルアップの強い味方であり、堂々とした存在感を演出するためのマストアイテムとなってた。
また、映画界のスターたちの間でも、フレアヒールは着実に浸透中だ。ニコール・キッドマンはヴェネチア国際映画祭で洗練されたホワイトのフレアヒールを履き、観客の視線を集めた。そのスタイルは、彼女が主演する『Babygirl』(2025)で演じたロミーのような雰囲気で、洗練された装いでありながら、自由なマインドを感じさせるルックであった。
さらに、クリッシー・テイゲンはテレビ収録の現場からインスタグラムの投稿まで、あらゆるシーンでこのヒールを愛用。足もとに注目が集まるスーパーモデル、ベラ・ハディッドもサンディー リアング(SANDY LIANG)のフレアヒールで、ニューヨークの街にその足跡を残した。
取り入れるなら今がその時。JW アンダーソン(JW ANDERSON)のタンタッセル付きミュールや、ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)のシルバーのスリングバック、さらには、シュシュ/トン(SHUSHU/TONG)やシモーン・ロシャ(SIMONE ROCHA)が提案するロマンティックな装飾付きの一足まで、フレアヒールの進化は止まらない。
時代を行き来しながらも、着実に“今”の空気をまとって変化を続けるフレアヒール。スタイルアップとモードを一度に叶える、今季の最注目シューズは、この春、あなたの足もとにも魔法をかけてくれるはず。
Text: Olivia Allen Adaptation: Saori Yoshida
From: VOGUE.UK
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