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子育ての無償化から介護まで…武蔵野市長を経て国会議員になった今取り組みたいこと【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.16】

  • 2025.4.10

東京都議会議員や武蔵野市長など、地方自治体で取り組んだ経験を持ち、現在は国政の立場から、子育て支援や介護の政策に取り組む松下玲子議員。武蔵野市長時代には、18歳までの医療費や給食費の無償化を実現された松下議員が考える、国の政策として必要な子育て支援や介護の政策とは…?

お話を聞いたのは…

立憲民主党 松下玲子議員

1970 年生まれ、実践女子大学文学部卒業後、サッポロビール入社。2004 年 早稲田大学大学院経済学研究科修了、松下政経塾での研修を経て、2005 年・2009 年 武蔵野市選挙区で都議会議員選挙に当選。2017 年 市民の要請により武蔵野市長選に立候補して当選、2021 年に再選、2023 年11 月末退任。現在、立憲民主党東京都第18区総支部長。

>>松下玲子公式HP

―子育て支援では、自治体が競うように「無償化」に取り組んでいます。その一方で、自治体の財政力によって差が出ることから、子育てに関わる費用は国が責任を持ってほしいという声も聞こえます。自治体の長も務められたご経験から、どのようにお考えになりますか。

松下議員:歴史的な経緯で見ると、子育て支援は、国も含めて現金支給より現物支給だったんですね。まずは、保育園の整備や、学校の教育環境をよくするなど、行政による「現物」を提供して、子育て支援の環境を整えようという時代があったと私は認識をしています。それが一定程度落ち着いたら、やっぱりそれでも子どもを育てるのにはお金かかるよね、親だけではなく、社会全体で支えようね、ということで、まずは医療費の無償化ですね。武蔵野市長時代に、高校卒業するまで所得制限も自己負担もない無償化を実現しました。次は、給食費の無償化の道筋をつけました。現物での支援が整ったら、次は現金つまり社会で支えていくことが、子育て支援にとって重要なことだと思っています。

―無償化というと、子どもがない家庭などから、「関係ない」と思われてしまうことがあると思います。あるいは、親なんだから、お金がかかっても、それが出せるように努力するのは当たり前じゃないかという声も聞こえますが、そこはどのようにして、市長時代も実現に漕ぎ着けたのですか。

松下議員:市長選挙の時に、演説をしていると、独身の女性に怒られたんですね。「私は独身です。子どもはいません。あなたの政策には腹が立ちます」って。その時、私は落ち着いて「お気持ちはわかります」と。「でも、そんなあなた様の老後はどなたが見られますか。よそ様が産んだ子が、あなた様の老後を支える将来の介護の担い手になるんです。どうかご理解ください」と言って訴えました。

―反応は変わりますか。

松下議員:そう簡単ではありませんが、既に子育てを終えた方たちも含め、社会全体で支えるという意味ではやはり現金給付なんです。それを粘り強く訴えました。

―周囲の自治体の反応はどうでしたか。

松下議員:武蔵野市は財政力が豊かなので、18歳までの医療費の無償化はできましたが、当時周囲の自治体は、「やっと就学前まで」や「中学まで」というところが多かったですね。でも、私が武蔵野市で18歳までの医療費無償化をした翌年に、東京都が半額補助を出すようになって、他市もできるようになりました。ただ、子どもの医療費無償化はリスクの分散なんですね。怪我や病気のリスクをみんなで支えるというのを、私は子どものうちは国が支えるようにしたいんです。所得制限も自己負担もなく。

―武蔵野市長時代に、所得制限を設けずに、無償化されたのも素晴らしいと思います。

松下議員:親の所得に限らず子どもは子どもで見るべきなんです。制限を設けることで、一番の弊害は、子どもの中に分断と格差が生まれることです。例えば、今までも就学援助援制度で、所得の低いご家庭は給食費が無償でした。払っている人とそうでない人、結構子どもの世界は残酷で、わかってしまうんです。こういうことは起きてはいけないと思っています。子どもは親を選べませんから。それに、親の所得に関わらず、子どもは平等であるべきだと思っています。

―子どもは平等であるべきではありますが、全てのことを無償化にするのも難しいと思います。その中で優先するのは、やはり医療費ですか。

松下議員:そうですね。私は市長時代に、医療費を優先しました。

―給食費はどうですか。

松下議員:憲法で義務教育は無償となっていますが、原材料費だけ長年保護者負担でしたが、やはり無償であるべきだと思います。

―修学旅行費の無償化も流行りですね。

松下議員:基本的には義務教育期間は、無償で良いと思っているのですが、ただ、学校の独自性もなくなってしまいますね。無償だと決められたプランしかできないとか。ですから、ナショナルミニマムを作って、そこは国が負担するけれど、自治体や学校の独自性を出す観点からは応分の負担は必要だと思います。

―今は、子育て支援として、「無償化」を進めていくことが、ある種トレンドのようになっています。そこも否定はしませんが、根本的なことを言えば、教員の働く環境の改善、例えば、親対応や多様な子どもたちへの対応などとても大変で、その負担軽減策が必要だと思うんです。保育士さんのお給料の低さなども、保育士不足の原因にもなっています。子どもの成長に一番大事な時期に、それを担う人たちの労働環境が悪いのは、子どもにとっても良くないことと思いますが、その点はどうお考えですか。

松下議員:そこは本当に問題で、「やりがい搾取」とも言えてしまう。ただ、保育士の報酬は公定なので、自治体レベルだと、市長時代には、例えば、保育士さんの家賃補助をしましたが、そのくらいしかできなかったんですね。

―公定であれば、国が行うことなので、それは国会議員としても取り組んでいこうとお考えですか。

松下議員:はい。保育士もですが、介護士も給与面などの理由で人材確保が難しくなっていることもあり、現場ではさまざまな問題が起こっています。もともと、専業主婦の女性が、家庭で担っていた分野の保育や介護が、異様に低い報酬で設定されているんです。保育も介護も社会が支えていく時代ですから、しっかり取り組んでいきたいと思っています。

取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生

政治ジャーナリスト 細川珠生

聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。

(細川珠生)

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