【画像】ソン・シギョンも惚れる井之頭五郎(松重豊)の食べっぷり
現在Netflixで配信中の「隣の国のグルメイト」(毎週木曜午後5:00新エピソード配信)に松重豊と共に出演中のソン・シギョン。韓国では“バラードの皇帝”とも称えられ、歌手活動に加えMCなど多岐にわたる活動を行う人気歌手だ。日本でも2018年にEテレ「ハングル講座」にレギュラー出演、この年には自身も大好きだというドラマ「孤独のグルメ Season7」の韓国出張編にも出演し、日本での活動も本格的にスタートさせた。
コロナ禍に始めたYouTubeで、“登録者208万人超えYouTuber”の顔も加わった。チャンネルでは音楽だけでなく、食にまつわるコンテンツも多数公開している。韓国で知らない人のないほどの人気歌手ソン・シギョンがYouTuberの顔を持った理由は、そして日本での活動への思いとは…。WEBザテレビジョンは、松重豊との共演でも話題の「隣の国のグルメイト」をきっかけに日本でもふたたび注目度急上昇中の彼に単独インタビュー。流暢(りゅうちょう)な日本語で率直な思いを語ってもらった。
カメラも照明も自分で買って、一から始めたYouTube
――YouTubeの活動は、今までの歌手、MCとかラジオの活動と比べてどういうポジションなんですか?
ソン・シギョン(以下:シギョン):僕、SNSを始めたのがけっこう遅かったんです。コロナのちょっと前にInstagramを始めて、その後にYouTubeを始めました。YouTubeは映像だし、“自分の放送局”っていう感覚です。強(し)いて言うと、時代的にそういうものを持たないといけないな、と思って始めたのがきっかけです。手探りでカメラも照明も自分で買って、カメラマンも知り合いに手伝ってもらったり、編集者はフリーの方にお願いして…手作り感満載で始めたから本当に自分のものという感覚なんです。自分がやりたいことだけやるし、時間制限もないし、上手くいってもいかなくても自己責任ですから。
――シギョンさんのYouTubeチャンネルには、歌に関するコンテンツのほか、ゲストの芸能人を自宅に招いて食事をふるまいながら話をするコンテンツやおいしいお店を紹介するコンテンツ、レシピ動画もありますね。韓国では「おいしいお店を探したいならまずソン・シギョンのYouTubeを見よう」と言われているとか。当初から、歌に限らずいろいろなコンテンツを出していきたいと思って始められたんですか?
シギョン:それは、ある意味放送局という感覚だから、プログラムが一つだけじゃ寂しいでしょう。何をやればいいんだろうって思っていたら、ある友人が言ってくれたんです。「自分が好きなものをやればいいよ。それが長続きの秘訣」って。ああ、そうか!と思って。
僕が今チャンネルでやっているコンテンツって、ワンちゃんに会うのも好きだし、料理好きだし、ちょっと先輩後輩とコラボで音楽をやったりゲストに料理作ってあげるのも好きだし、インタビューするのも楽しい。自分の行きつけのお気に入りのお店を紹介するのは、正直悩んだのですが一大決心で紹介することにしました。それで、視聴者の皆さんに美味しかったです!って喜んでもらえるとすごく嬉しかった。そんな風に手作りでやってきました。だから“放送局のオーナー”みたいな感じです。無理しないし、料理も本当に食べてみて美味しくなかったら絶対出さないし。だから「ソン・シギョンは嘘つかない」と信頼してもらえるし、楽しくやっています。
YouTubeを始めたら男性ファンが増えました
――YouTubeを通して新しいファンが増えたり、ということも感じますか?
シギョン:それはありますね。「モグルテンデ(おいしいお店を紹介するコンテンツ)」のおかげで、フォロワーの半分は男性です。実は、この男性フォロワーたちから最初は謝りのコメントが多かったんです。“あなたのこと今まで嫌いだったけど考え直しました、誤解していた、これからファンになります”みたいな(笑)。
昔は「ソン・シギョン?どこがかっこいいの?同じ顔の知り合いいるけど?」って思っていた男性たちが僕のYouTubeを見てみたら、おっさんになったソン・シギョンがぼさぼさのヘアスタイルでヘアメイクもせず、すごく人間味あふれる姿で出ている。そのうえ大好きなクッパと焼酎で「これこそが人生の醍醐味(だいごみ)だ」と言っている。そこに親近感を感じてもらえたんじゃないかなと思います。応援してあげないと…みたいな感じでしょうか(笑)。で、ファンが増えました。すごく不思議な現象なんですけど、多分YouTubeがきっかけで自然体の僕自身に共感いただいたのだと思います。
――YouTubeの存在は、すごく大きいですね。
シギョン:そうですね、今では208万を超える方にフォローしていただけて、恵まれていると思います。「君の全ての瞬間」(韓国で2014年リリース)とかがチャートで逆走行していて、今また100位内に上がってきているんですよ。YouTubeをきっかけにもう一度ソン・シギョンを聴きたいと思ってくださった方のためにも、今年もいい曲を出さないと、と思っています。こう見えても本業は歌手なんです(笑)。
僕を知らない人の前で歌いたい
――歌手としての、これからの活動についてもお伺いしたいです。日本での活動について教えてください。
シギョン:韓国と違って日本では新人の気持ちです。日本は韓国と文化も市場も異なりますし、日本活動は自分にとっても挑戦し続ける場所です。まだ少ないですが日本で応援してくださるファンもいらして、大変ありがたいと思います。でも、これからはもっと日本のみなさんに知っていただけるように、僕の歌を聴いていただけるように努力をしないといけないと思っています。本業の歌を一度でも聴いていただけたら嬉しいです、ここには自信があります!
――韓国では知らない人がいない国民的レジェンド歌手のシギョンさんですが、日本での活動初期はショッピングセンターで歌われていたとか…。
シギョン:マネージャーは泣いてましたが、僕は本当に場所は関係なくて、僕を知らない人に純粋に歌を聴いてほしい。ショッピングセンターとか、そういうことは関係ないですよ。タイムスリップみたいな感じで、僕を知らない人が多いからこそのチャレンジができるので。もっと僕を知らないたくさんの人の前で歌いたいという気持ちです。今もそれは変わりません。
――「隣の国のグルメイト」がいいきっかけになりそうですね。
シギョン:だけど番組だけだとまだ、僕が歌手かどうかわからないと思うので…。「松重さんと一緒にご飯を食べているあの韓国人、何者?」みたいな感じでしょ。だから、食べてる韓国のおじさんでなく歌手としても認識していただけるように日本での活動をさらに頑張らないと!って。でも、この番組がとても好評で、日本の皆さまに知っていただけるきっかけになることはとても幸せです。
韓国語と日本語の歌は“味”が違う
――歌詞がとても重要で大事、といつもお話しされているシギョンさん。だから、日本では日本語で歌うということを大事にされているんですね。
シギョン:そうです。韓国語の歌も歌いたいし、日本語で歌うことも諦めたくない。韓国語で歌うときと日本語で歌うときって“味”が違うんですよ。例えば日本語で「好きだよ」っていうときと韓国語で「너무 좋아(ノムチョア)」と言うときでは、意味は同じでも気持ちが何か違う。ちょっと気まずいことは英語で喋る、という人もいますよね。同じように歌も、もちろん気持ちは同じですけど、味というかニュアンスが違う。僕は、それを諦められないんです。歌手はある意味においては役者なので、聴いてくださる方のために共感できる歌を届けたいという感じ。なので、日本での活動は日本語で歌いたい、お届けしたいという気持ちで、日本語も頑張ってきました。
――その“味”についてもっとお聞きしたいです。一言で言うのは難しいと思うんですけど、日本語で歌うときっていうのはどういう感覚なんですか?
シギョン:例えばお箸で物を食べるときとフォークで食べるとき、同じものを食べても違うでしょ? そういうものかな。両方美味しいんだけど、もっとふさわしい道具がある、みたいな感じ。僕は、日本語で歌うなら韓国語の曲を日本語に変えるのではなく日本語の歌詞のために作った曲が一番、聴いている方の琴線に触れるし、感動や共感を得られると思っています。これからもその気持ちは大切にしていきたいです。
言葉にうまくできないけれど、愛しい
――日本のファンや日本人に対しては、どういうイメージ印象をお持ちですか。
シギョン:YouTube(SUNG SI KYUNGチャンネルで2025年3月11日公開)で松重さんもおっしゃっていたのが、「『孤独のグルメ』は韓国のテレビで普通に放送している番組でもないのにわざわざ見てくれた人がいて、ファンになってくれて、釜山国際映画祭に行ったら4000人も集まってくれて、すごく不思議だし、ありがたい」って。僕も、韓国では頑張って活動をしてきたけど、日本ではそこまでできてないのに、応援してくれる人がいてくださった。言葉にうまくできないけれど、不思議な経験でありがたい気持ちです、本当に。その愛しさというか感謝の気持ちは常にあります。
――先に愛をもらった、という感じですか。
シギョン:そうですね。日本のファンの方が韓国語を勉強なさって本当に僕より綺麗にハングル書けるようになって、そうやってずっと応援してくださっている日本のファンの方に僕は何ができるだろうって考え、日本語を一生懸命やらないと、という気持ちになりましたし、挑戦して自分も皆さんも満足できるような活動をしたい。日本での活動もパワーアップしていきますので、ぜひご期待ください。
――私もソン・シギョンさんの歌と歌声が大好きなので、日本でももっとたくさん聴けるようになってほしいです!
シギョン:ヒット曲を作るというのは、計算だけでできるものでなく流行もスタイルもどんどん変わっているし、とても難しいことです。日本で皆さんに受け入れてもらえるヒット曲を作れるように自分なりに精一杯、努力します。現在、日本の新しいアルバムも制作中です。ぜひ楽しみに待っていてくださいね。
◆文=酒寄美智子
■ソン・シギョン(SUNG SI KYUNG)
1979年4月17日生まれ、A型。アルバム・セールスは計200万枚以上、“バラードの皇帝” “鼓膜彼氏”の異名をもつ、韓国を代表するトップシンガー・ソングライター。近年は歌手活動のみにとどまらずMC、タレント、208万人のフォロワーを持つYouTuber、などエンターテイナーとして多岐に渡る活動を行う。日本では2023年にキングレコードに移籍後、アルバム「こんなに君を」を発売。2024年末コンサートも大成功におさめる。2025年は日本での活動をさらに本格的に始動させる。現在、松重豊と日韓のおいしい店を訪ね歩く「隣の国のグルメイト」(Neflixにて配信中)に出演中。愛酒家としても知られ、自身が企画・開発に携わったプレミアム生マッコリ「璄濁酒(ギョンダクシュ)12度」は韓国発売1周年を迎え、今年2月~日本でもQoo10で正式販売がスタートしている。