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「城下パトロール」の裏側は…? “猫武将”として愛される元野良猫チャチャの日常がフォトエッセイに!【書評】

  • 2025.4.10
元野良猫チャチャの毎日 元野良猫チャチャ/主婦の友社

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猫はその子らしい個性を見せ、飼い主の日常を明るくしてくれる。『元野良猫チャチャの毎日』(元野良猫チャチャ/主婦の友社)の主役・チャチャくんも、そんな存在だ。

元野良猫のチャチャくんは、YouTubeやSNSで大人気のスター猫。総フォロワー数は、なんと120万人超え。キリっとした顔で鎧…ではなく、ハーネスを身につけ、「城下パトロール(お散歩)」に繰り出す姿からついたあだ名は、「猫武将」。

このたび発売された初のフォトエッセイでは、チャチャくんの生い立ちや散歩時にとらえることができた名シーン、YouTube制作の裏側などを大公開。チャチャワールド全開な1冊となっている。

飼い主のかーさんがチャチャくんと出会ったのは、2020年のこと。当時、かーさんはトリマーをしていた頃から一緒に暮らしていた愛犬を亡くし、ペットロスに。辛さから犬の動画は見られず、猫の動画を見ては心の傷を和らげていた。

そんな姿を見た娘さんは、近所で生活していた野良猫のチャチャくんを見に行こうと、かーさんを外に連れ出す。初めから人懐っこかったチャチャくんと触れ合う中で、かーさんは小学生の頃に初めて拾った茶トラ猫を思い出し、懐かしくなった。

毎日、交流を深める中でかーさんは、チャチャくんのお迎えを決意。ペット不可賃貸で暮らしていたため、引っ越しも覚悟で大家さんに相談をした。すると、原状回復を条件にチャチャくんの飼育を許してもらえたという。

こうして始まったチャチャくんとの暮らしでは、予想外なことがたくさん。喜んでくれるだろうと思って用意したもふもふの猫用ベッドは、残念ながら使われず…。思っていたよりも早く、家猫としての暮らしに順応したチャチャくんに驚かされもした。

ただ、長年、外猫生活をしていたチャチャくんは外へ出たそうな素振りを見せることも…。そこで家族は、危険も多い外の世界を安全に楽しませてあげたいと思い、脱走防止対策を行った上で網戸越しに外の風やにおいを楽しめるようにした。

だが、ある日、チャチャくんは家族がゴミを出す瞬間を狙って、玄関から脱走。幸い1時間ほどで捕獲できたが、かーさんは今後、万が一脱走しても自力で自宅に帰って来られるよう、家までの道を教えたいと考え、散歩をしようと決意した。

だが、人間との散歩に慣れてもらう過程ではストレスをかけないハーネス選びに悩み、リードの操作に悪戦苦闘したことも…。現在のような堂々たる「城下パトロール」ができるようになるまでには、多くのドラマがあったのだ。

こんな風に、猫と散歩することへの葛藤や難しさをリアルに伝えているところも本書の良さだと言えるだろう。

また、かーさんはSNSの勇ましい姿からは想像できないチャチャくんの意外なギャップも写真付きで公開している。実は甘えん坊なことや個性豊かな気持ちの伝え方など、家族しか知らない素のチャチャくんにキュンとしてしまう。

猫好きさんはきっと、「うちの子」との共通点を見出し、チャチャくんの日常に目尻が下がってしまうはずだ。

なお、かーさんは本書内で保護猫を迎えることへの想いも語っている。悲しいことに、チャチャくんのように長らく外で生きてきた成猫は里親が見つかりにくいのが現状だ。しかし、大人の猫は留守番ができる、性格が把握しやすいなど、子猫にはない魅力がある。

だからこそ、大人の猫を迎えることに対するかーさんの想いやチャチャくんの愛くるしさが多くの人に届くことで、過酷な環境の中で一生懸命生きてきた成猫のお迎えを検討する人が増えてほしい。

猫はつくづく、不思議な動物だ。人を翻弄し、その人の心に開いた穴を埋めるように思える。猫と巡り合うと人間はマイペースで気ままな小さな家族のご機嫌を取るために、あたふたしてしまう。

すると、日々が猫色に染まり、不思議と心の穴が埋まっていく。人間は、猫に翻弄させられることで心を救われるのかもしれない。

私にとってチャチャくんのような精神安定ニャンになってくれたのは、“うちの子”だった――。そう感じさせてもくれる本書を手に取ると、愛猫がより愛しくなるだろう。

文=古川諭香

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