横浜流星が主演を務める大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)の第14回「蔦重瀬川夫婦道中」が4月6日に放送された。蔦重(横浜)への思いを心の中にとどめる妻・瀬以(小芝風花)に対する鳥山検校(市原隼人)の決断が話題になった。(以下、ネタバレを含みます)
数々の浮世絵師らを世に送り出した“江戸のメディア王”の波乱の生涯を描く
森下佳子が脚本を務める本作は、18世紀半ば、町民文化が花開き大都市へと発展した江戸を舞台に、“江戸のメディア王”にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波瀾(はらん)万丈の生涯を描く痛快エンターテインメントドラマ。
蔦重はその人生の中で喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、滝沢馬琴を見い出し、また日本史上最大の謎のひとつといわれる“東洲斎写楽”を世に送り出すことになる。
蔦重の幼なじみの花魁・花の井(五代目瀬川)改め瀬以役で小芝風花、蔦重に影響を与える“希代の天才”平賀源内役で安田顕、幕府“新時代”を目指す権力者・田沼意次役で渡辺謙が出演。語りを綾瀬はるかが務める。
幕府の取り締まりで鳥山検校と瀬以が捕らえられる
蔦重と瀬以の不義密通を疑い、蔦重を自宅へ呼び出す一方で、瀬以に仲を問いただした鳥山検校。蔦重が駆け付けたときに見たのは、同心に捕らえられていく鳥山と瀬以の姿だった。幕府が当道座にかつてない大規模な手入れを行ったのだ。当道座とは盲人たちの組織で、検校は盲人の最高位の役職だった。
「あいつはなんもやってねえでしょ」と瀬以を案じて同心に食い下がった蔦重も、一味だと思われて捕らえられてしまった。
身元が確認された蔦重は解放され、しばらくして瀬以も釈放となった。
市原隼人の真摯な演技が光る
その後、鳥山と共に裁きが下ることになり、奉行所に呼び出された瀬以。「幼きころに吉原に売られ、夫よりほかに寄る辺なき身の上であったことは憐れむべきである」として「きっと叱りおく」という処分で済んだ。
ところが、「この後は、鳥山玉一との縁を切り、良き民として暮らすよう」と告げられたことに驚く。「これより先、鳥山はそなたの面倒を見ることは遠慮したいとのことだ」というのだ。
瀬以は蔦重を思い続ける自分への優しさだと察する。奉行に許しを得て瀬以は鳥山に向かって「旦那さま。私は決して良い妻ではございませんでした。どこまでいっても女郎癖が抜けぬ振る舞いは、お心を深く傷つけたことと存じます。にもかかわらず、何でも望みをかなえてくださった。今ここに至っても…」と言う。
それに対し、瀬以の前の位置で奉行に頭を下げていた鳥山は、「そなたの望みは何であろうとかなえると決めたのは、私だ」と静かに答えた。
瀬以が「私は…ほんに幸せな妻にございました!」と礼を言うと、鳥山はかすかにほほ笑みを浮かべたように見えた。
「何でも望みをかなえる」ために、自分が身を引く。鳥山の究極の愛にしびれた。SNSには鳥山を演じた市原が奉行に対して伏したままの状態で微動だにしなかったことで「体幹モンスター級」「テレビ壊れたのかと思った」と驚きの声が上がりつつ、「離縁という『望み』すらかなえる」「瀬川への愛が深過ぎる」「検校としてやってきたことはえげつないけど、1人の夫としては立派」などの感想が寄せられた。
金貸しで武士や庶民を困窮させるなど悪い面もあった鳥山だが、市原の真摯な演技もあいまって魅力のあるキャラクターになった。「幸せな妻にございました」と言われた後のほほ笑みの真意を考える余韻も残した。そんな鳥山の身を引く愛のかたちがあるということが、瀬以が蔦重の元を去る決断につながったのかもしれない。
◆文=ザテレビジョンドラマ部