厚い胸板は男らしさの象徴。大胸筋を鍛えることで、見た目がたくましくなるだけでなく、スポーツや日常生活でもパフォーマンスがアップします。
今回は、大胸筋を鍛えることで得られるメリットと、大胸筋を効率よく鍛えるトレーニングを、パーソナルトレーニングジム STUDIO KOMPAS(スタジオコンパス)のトレーナー・山岸慎さんが解説します。
大胸筋を鍛えるメリットとは
大胸筋を鍛えることで、見た目に「たくましい印象」を与えるだけでなく、日常生活での動作の質も向上します。
とくに、腕を前に押し出すような動作に大胸筋は大きく関与しており、筋力が強化されることで「押す」動作のパフォーマンスが上がります。
たとえば、扉を押す、重たいものを押し出す、地面から立ち上がるといった日常動作も、実は「押す」動きの連動で成り立っています。
日常動作は、【立ち上がる・しゃがむ・押す・引く・持ち上げる・歩く】といった複数の動きが複雑に組み合わさっているため、大胸筋を鍛えることは、日常動作全体の効率向上にも繋がります。
胸筋を鍛えると胸が大きくなる? 大胸筋とバストアップの関係
大胸筋を鍛えることで、胸部全体に厚みが増し、見た目としてボリュームが出るのは事実です。筋肉の発達によって胸部の張り感が出るため、上半身の輪郭が変わりやすくなります。
ただし、「バストアップ」という視点で見ると、直接的な効果は限定的です。なぜなら、バストの大部分を構成するのは筋肉ではなく脂肪組織であるためです。
大胸筋を鍛えることで胸の土台が安定し、バストを下から持ち上げるような見た目の変化が期待できますが、「バストそのものが大きくなる」というよりは、「形が整う」「見た目が引き上がる」といった変化が主となります。
大胸筋が衰えると、どんなデメリットが出てくる?
では、大胸筋が弱くなると、どんなデメリットが出てくるでしょうか。
もっとも顕著に現れるのが「押す力」の低下です。
押す動作は、日常生活において頻繁に使われる基本的な身体機能であり、ベッドや床から身体を起こす、物を前に押すといった行為がしづらくなります。
また、「持ち上げる」動作も大胸筋を使った押しの力に含まれるため、大胸筋の衰えは動作の力強さや安定性を損なう要因になります。
さらに、大胸筋の筋力低下は肩まわりにも影響します。
筋力が不足すると、肩甲帯の安定性が失われ、肩の可動域が不安定になり、肩関節への負担が増加→怪我のリスクが高まるといった負の連鎖につながります。
大胸筋を鍛えすぎるとどうなる? 考えられるデメリット
大胸筋を過剰に鍛えることで、スポーツや特定の動作において不利に働く場合があります。
たとえば、ゴルフなどの回旋を多用するスポーツでは、胸まわりの筋肉が大きくなりすぎると胸部の可動域が制限され、スイングの柔軟性が失われることがあります。
また、過剰に大胸筋を意識しすぎると力みに繋がり、自然なフォームが崩れてしまうことも。
加えて、バランスを無視して胸だけを鍛えてしまうと、肩が前に出た猫背のような姿勢になりやすく、肩のインピンジメント(衝突症候群)などのリスクも出てきます。
適度なバランスで、肩・背中・体幹も含めた総合的なトレーニングを意識することが大切です。
次:大胸筋に一番効くトレーニングは? トレーナーおすすめはコレ
大胸筋に一番効くトレーニングは? トレーナーおすすめはコレ
バーベルプレス
回数 3〜5回
セット数 3〜5セット
STEP 1:セットアップ(準備)
- フラットベンチに仰向けになる
- 足は床にしっかりつけ、肩甲骨を寄せて胸を張る
- バーベルは肩幅より少し広めでグリップ(親指を巻きつける)
STEP 2:バーベルを下ろす
- 腕を伸ばした位置でバーベルを持つ
- 息を吸いながら、ゆっくり胸の中央(乳首あたり)に向かって下ろす
- 肘は真横に広がりすぎないよう、やや斜め後ろへ下ろすイメージ
STEP 3:バーベルを押し上げる
- 胸を張ったまま、息を吐きながらバーをまっすぐ上に押し上げる
- 肘が完全にロックしきる手前で止めてコントロール
NGフォーム
肩甲骨が不安定な状態はNG。胸を反ることで、肩甲骨が安定して肩関節の安全性がアップします。
プッシュアップ(腕立て伏せ)
フォームが崩れないで反復不可まで
セット数 2〜3セット
STEP 1:最初の姿勢
- 手は肩幅より少し広めに床につける
- 足を伸ばし、つま先で体を支える
- 頭からかかとまで一直線の姿勢をキープ(お尻が上がったり下がったりしないよう注意!)
STEP 2:体をゆっくり下げる
- 肘を曲げて胸を床に近づける
- 胸が床ギリギリになるまで下げるのが理想
- このとき、肘は外に張りすぎないようにする(約45度の角度)
STEP 3:押し上げる
- 手で床を押して元の姿勢に戻る
- 腕を伸ばしきってもロックしすぎない
- 呼吸は、下げるときに吸って、上げるときに吐く!
大胸筋がなかなか筋肥大しないときに考えられる理由
大胸筋の筋肥大が思うように進まない場合、次の2つの原因が考えられます。
1. 扱っている重量が軽すぎる
筋肉を発達させるには、一定以上の強い刺激(負荷)が必要です。自重や軽めのダンベルでは刺激が足りず、筋肥大に繋がりにくくなります。
ベンチプレスなどの多関節種目でしっかりと重量を扱うことが、効果的な筋肥大に繋がります。
2. トレーニングフォームが間違っている
とくに多いのが、胸椎(胸部を構成する12個の骨)の可動域が狭いことで正しいフォームが取れないケース。
胸が張れず、肩が前に出たままベンチプレスなどを行ってしまうと、大胸筋ではなく三角筋(肩)ばかりに刺激が入ってしまい、狙った部位を効率よく鍛えられません。
胸椎の動きや肩甲骨のポジションを見直し、動作中にしっかりと胸が開ける状態を作ることが、筋肥大への近道です。
筋トレ「ベンチプレス」の効果、正しいフォームとやり方|重量と回数、トレーニングのコツ
監修者プロフィール
トレーナー山岸 慎
2011年からトレーナーとして、モデル・アーティスト・俳優のサポートを行う。現在はJリーガーなどトップアスリートをはじめ、運動初心者まで様々な身体レベルの方のトレーニング指導を行なっている。所有資格NSCA-CSCS。
・パーソナルトレーニングジム STUDIO KOMPAS渋谷南平台
・ストレッチリラクゼーションサロン ESL(エッセンシャル ストレッチ ラボ)
<Edit:編集部>