静岡県焼津市。古くから「かつおの町」として知られるこの地は、日本一の冷凍かつおの水揚げ量を誇ります。潮の香りに包まれた港町には、江戸の昔から続くかつお漁の歴史が息づき、やがてその恵みは、かつお節という形で人々の食卓を支えてきました。そんな焼津の地で、150年以上もの歳月をかけ“だしづくり”と真摯に向き合ってきたのが老舗かつお節屋「柳屋本店」です。「もっと身近に、もっと楽しく、かつお節やかつお出汁のおいしさを味わってほしい」。今回は、そんな想いから生まれたのが、「やなぎやカフェ」を紹介します。
かつお節の香りが漂う空間で、ゆったり過ごす
焼津駅から車でおよそ6分。辿り着いたのは、かつお節の香りに誘われる「やなぎやカフェ」です。
扉を開けると、ふわりと漂うのは削りたてのかつお節の香り…。その香りに包まれるだけで食欲が湧いてきます。
壁に飾られているのは、かつお節ができるまでの工程を描いたアートパネル。
焼津の海でかつおが獲れる瞬間から、燻して乾かし、丹念に仕上げていく様子が描かれています。
ふと目をやれば、スケルトンのかつお節削り機も。その香りに誘われるように、気づけば削り機の前へ。動画を撮ったり、じっと見入ったり…。削りたてのかつお節がふわりと舞う瞬間は、思わず見惚れてしまうほどの美しさです。
ここで提供される料理は、すべて「柳屋本店」自慢のかつお節や出汁を使っているのだとか。 なんと、レシピは惜しみなく公開されており、気に入ったひと皿に出会えば、お隣の本店で出汁パックやかつお節を手に取り、自宅でもそのおいしさを再現することができます。
こうして生まれる“味の循環”こそが、この場所ならではの温かな魅力なのです。
削りたてだからこそ味わえる感動の味
一番人気は、「削りたてかつお節のTKGセット」。ごはんに一番合う厚さで削られたかつお節は、噛むほどに旨みがじんわり広がります。
そこに合わせるのは、地元・法月養鶏場の地養卵。黄身の濃厚な旨みと、かつお節の香りが重なり合い、思わず「もう一口」と箸が止まらなくなるおいしさです。卵は、生卵と、出汁をたっぷり含んだ温泉卵から選べるのも嬉しいところ。
さらに嬉しいことは、かつお節のおかわりを好きなだけできること。枡に盛られたかつお節がなくなれば、「追いかつお」をお願いすることもできます。削りたてのかつお節が再びふわりと舞う瞬間は、この上ない贅沢です。
セットには「豚汁」または「とろろ汁」のどちらかを選べる汁物がついてくるのも魅力。あたたかな豚汁でほっとひと息つくもよし、静岡らしいとろろ汁を選んで〆にごはんにかける楽しみ方もおすすめです。
佃煮や薬味でも少しずつ味を変えながら、自分だけの“最高のひと口”を見つけてみてください。
焼津ならではの“だし茶漬け”も絶品
もうひとつの人気メニューが「選べるだし茶漬けセット」です。
主役となる魚は、上に乗せる魚は、生姜醤油のタレに漬け込んだかつおの漬けと、特製ゴマダレをかけた炭火香るぶりのたたきの2種類から選べます。
合わせるだしは、「柳屋本店の」かつお節、むろあじ節、昆布、そして白口にぼしをブレンドしたオリジナル。それぞれの旨みを重ねた一杯が、さらりと心に染み渡ります。
甘さの中に、ふわり香るかつお節の余韻
法月養鶏場の新鮮卵で仕込んだ、やなぎやカフェ自慢のフレンチトーストもぜひ。じっくり一晩かけて染み込ませたパンを蒸し焼きにし、とろふわの食感に仕上げています。魚のかたちをしたかつお節チーズクッキーと、バニラアイスがそっと添えられ、見た目にも心躍る一品です。
味の決め手は、メープルシロップに出汁を合わせた特製の“出汁蜜”。仕上げには、かつお節がふわりとひと振りされて登場です。
甘さの中にほのかに香るかつお節の風味…。ここでしか出会えない、新しいおいしさを届けてくれる一品です。
甘じょっぱい驚きの余韻に包まれて
もうひとつ、やなぎやカフェで出会いたいスイーツが「かつお節屋のキャラメルナッツアイス」。キャラメルナッツアイスに、かつお節の粉を練り込んだオリジナルの一品です。
ひと口頬張れば、キャラメルの濃厚な甘さの中に、ふわりと漂うかつお節の香り。とろりとかかったキャラメルソースが、さらにコク深い味わいを引き立てます。
ちょこんと添えられた愛らしいお魚型のクッキーは、かつお節チーズ味。あまじょっぱい絶妙なバランスが、アイスの甘さと重なり、あとを引くおいしさです。
気に入った味に出会ったら、お隣の本店で鰹節や出汁を手に取って。
焼津のだしの香りが、日々の食卓にも幸せなひとときを運んでくれます。