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「お母さんはお母さんの人生楽しんでるよ」テレ東の社員であり漫画家の真船佳奈が語る“お母さんが自分の人生を楽しむべき理由”

  • 2025.4.6
真船佳奈さん ※提供画像

【写真】真船佳奈さん、我が子とのツーショット

さまざまな働き方が登場しつつある現代でも、見えない壁があちこち存在するのも事実。フリーランスと言う言葉に憧れても、超えるべき課題もしっかり直視しなければならない。そんななか、「テレ東の漫画家」と名乗ってX(旧Twitter)で作品を公開しているのが真船佳奈さん。『令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!』(オーバーラップ)「正しいお母さんってなんですか!?〜「ちゃんとしなきゃ」が止まらない!今日も子育て迷走中〜」(幻冬舎)などのコミックを刊行するなど、テレ東の社員でありながら漫画家としても活動している。母でもある真船さんにフリーランスではなく副業を選択した理由を伺ったところ、“母”という立場の難しさと苦しさ、そしてそこから抜け出すための考え方を語ってくれた。

フリーランスの難しさ

――いまは漫画家としての活動を本格的にやられてると思いますが、専業漫画家になりたいと思う部分があるのでしょうか。

漫画の仕事が増えてきた頃、ここだけの話「もっともっと漫画を描きたい!漫画家として独立しようかな…」と思ったこともあったのですが、やっぱり究極に「フリーランスが向いてないな」という結論に至ったんですよね。(笑)私、自分を律することが苦手で気づいたら寝てる人間なので…。

テレビ局員と漫画家、2つの仕事をやっているということで私のことを“働き者”と勘違いしてる人がすごく多いんですけど、全くそうではありません。

サラリーマンという、いわゆる、「テレ東の漫画家」というバッジがついていることによって私はやっと就業時間に合わせて朝起き、子どもを保育園に送り出し、終業時間まで仕事をして…みたいなことができている人間なんです。おまけに人見知りで、新たな縁を作るまでに人一番時間がかかる。

フリーランスになって、「自由に自分でスケジュールを組んでタスクをこなしてください」「自分で仕事を取ってきてください」ってなったら、もう絶対1歩も動かないで一生寝てる気がします…(笑)。

「二つ仕事をしていると大変なのでは」と思われるかもしれませんが、日中会社員をしているデメリットがほとんど思い浮かばないんです。強いて挙げるとしたら、本業の仕事時間があるので「漫画100%には時間を割けない」ということだと思いますが…数時間漫画を書くだけでも身体の痛みを感じるこの頃なので、二つの仕事を行ったりきたりしてる方が私には合っているようです。

本業で得た知見も漫画に活かせます。「今みんなはこういう話題に興味があるのか!」という発見なども漫画に活かせるし、逆に漫画で得た知見も本業の方に活かせる。ドラマ宣伝ルポ漫画もずっとやりたかった仕事ですし、「これやったら面白いんじゃないですか?」という私のアイデアを面白がってくれる人ばかりの職場なので、「こんなに楽しくて幸せでお給料もらっていいの?!」と毎日思っています(笑)。

だから全然辞める理由がないです。かけている時間の割合で言うと、本業が7で漫画が3という感じですかね。

――そこには満足しておられるのでしょうか?

満足しています!私の漫画はエッセイ漫画なので、働いていていろいろな人と関わって行く上で思いつくお話もあるので。社会的な関わりが持てなくなってしまった瞬間に、多分描くことに困ったり、何書けばいいんだっけ…となってしまう恐怖の方が大きいかもしれないですね。

本業が副業の息抜きに、副業が本業の息抜きになっているので、私は拠り所が多い今の生活が気に入っています。

柱が多ければ多いほど、潰れない

――テレ東社員、漫画家、ライブドア公式ブロガー、さらに1児の母と肩書きが多い真船さんですが、この中で1番大変だなという活動はどれになるのでしょう。

間違いなく母が1番大変だと思います(今、私が育児に1番時間を割いているということではなくて)。「仕事を一生懸命頑張っている方が楽なのか、育児を頑張った方が楽なのか」みたいな議論もよく聞きますが、「命と人生の責任を負っている」という重さは、私がしている今の仕事にはない重さです。

新生児の頃は「とにかくこの子を生かさなくては」というフェーズでプレッシャーや身体的なつらさに悩みましたが、大きくなってからはもっと別のフェーズで責任を感じるようになりました。「ちゃんと育てる」という責任です。

今の世の中、子どもが減ってきていて、子どもが圧倒的少数派になりつつあります。子ども一人にかける時間も期待値も違ってきている気もするので、「ちゃんと育てなきゃ」「ちゃんと躾なきゃ」「ちゃんとした親にならなきゃ」みたいなプレッシャーがすごくて。

その上で、いまはSNSを開けば「教育費がいくらかかるか」「小さい頃何どんな経験をさせてあげた」「長時間保育がかわいそう」みたいな情報がばーっと流れてきて、そういうものに常にさらされてしまう。

自分は漫画家とか好きなことをやらせてもらっていますが、「それって子どもにとっていいことなんだっけ」と考えてしまう時間もあります。そうしたところまで含めて、やっぱり子育ては「ただ単に子どもにご飯を食べさせて寝かせるだけ」の仕事じゃないんですよね。「めちゃくちゃ責任重いやんけ!」という。

しかもこれが何十年も休みなく続くとしたら、「子どもかわいい」という気持ちだけじゃ乗り切れないな、と思います。

――真船さんから、その働きながら一緒に子ども育ててるというお母さんたちにアドバイスをいただきたいです。

お母さんという生き物になった瞬間に、自分のことを制約したりとか、セーブしなきゃいけないということが多くなります。社会的にもまだまだそうなっている部分が多いと思うし、人々の意識的なところでも、「子どもを一番にしない親は失格」という考えを持つ人は少なくないでしょう。

そしてSNS上では子どもがいない人からの「職場の子持ちの仕事のしわ寄せがこっちに来る」という意見もよく見かけます。独身の立場も、子持ちになった立場もどちらも経験しているだけに、双方の言い分がわかります。子持ちになってから誰かしらに迷惑をかけている、子どもにもかわいそうなことをしている、と自分を責めてしまうお母さんも多いのではないでしょうか。私もその一人でした。

自分でも気づかないうちに体調にまで変化をきたすほどに追い詰められた後、私は「周りに感謝しつつ、頼りつつ、好きなことをやろう」と決めました。復職して2年、最初のうちは綱渡りのような生活でしたが、今では本業もほぼフルタイムで働きつつ、漫画も描く生活を続け、2冊の単行本を出しました。

補助制度を調べてベビーシッターさんや家事代行に来てもらう、病児保育シッターサービスに加入しておくなど、家族以外の人にもどんどん手伝ってもらいながら、全力で仕事をしています。そして、短い時間かもしれませんが、子どもと過ごす時間は全力で向き合っています。

世間ではまだまだ、お母さんができる限り長い時間子どもと一緒にいることを優先したほうがいい、という考え方の人が多いです。私もその一人で、自分の時間を全て子どもにあげるつもりでいました。しかし、自分の好きな時間を犠牲にしてまで子どもに笑いかけるのは私には難易度が高すぎて…。

「母親も家族もみんな好きなことを大事にしながら、一緒に居られる時間を大切にしよう」という考え方の方が、絶対に我が家にあっているなという結論に至ったんです。

母は好きなことをやる。でももちろん、“子どものことを考えないということではありません。どちらがどちらに寄りかかることなく、「お母さんにも、お父さんにも、そして息子にもそれぞれの大切な世界がある」という考え方で接するようになったんですよ。だから私にとっては、肩書きがいっぱいあるいまの状態がベストだなと思っています。いろいろな仕事があって、柱が多ければ多いほど、ネガティブなことがあっても潰れないと思うからです。

子どもにもいろいろ好きなことをいっぱいやってもらって、「いろんな柱があったら人生は楽しいんだ」ということに気づいてほしいと思うところもあるんですよね。そのためには私が「お母さんはお母さんの人生楽しんでるよ」というのを堂々と見せていきたいなと考えています。

いまは「母親が子どもを差し置いて、自分の人生を楽しむなんてありえない」という意見がまだまだ多い世の中ですが、我が家にはそれは当てはまらなかったんだな、と。家族で楽しむときは家族で楽しむ、でもお母さんはお母さんの時間を、人生を楽しむよ…と。我が家はそれですごく幸せで、子どもも幸せそうにしています。

仕事など「お母さん以外」の人生でいろいろやるべきこと、達成したいことがあるのは、決して悪いことではないはず。もしそこに悩んでいる人がいるとしたら、負い目を感じないでほしいなと思ってます。

気が抜けた感じで楽しんでもらいたい

――肩書きがいっぱいある状態がベストとはいえ、忙しい生活を続けられる1番の要因というのは何でしょうか?

今までは「漫画家として面白い作品を世に出して、人に笑ってもらいたいな」という気持ちがモチベーションでした。ですが育児、出産の漫画を発表するようになってから、お母さんたちからさまざまなお言葉をいただくようになったんです。

お母さんたちから「これ私の話かと思った」「描いてくださってありがとうございます」という、共感のメッセージをたくさんいただきました。出産や妊娠は個人的なお話ですので、ママ友との間でも自分の出産の話はそこまで詳細にはしないと思うんです。でも私は自分の体験を漫画で描いたことで、多くのお母さんたちと「出産のときってこうだったよね」と共感する機会を得たたんです。

なかには本に共感して、親子2代でサイン会に来てくれた方もいらっしゃいました。この間も年配のご婦人がが「娘が妊娠、出産中にこの本を読んですごく救われたと言っていて…」と、わざわざお礼を伝えに来てくださったんです。漫画で体験を共有することで、いろいろな人の心を繋ぐことができるんだなと実感したできごとでした。

育児は楽しいことも多いですが、そればかりではないですよね。キラキラしたポジティブな面だけでなく、苦心している部分も包み隠さずに、本名で描くことが誰かの希望になればいいなと…。誰かの「私も苦しいときは弱音をこぼしてもいいんだ」「私も我慢しすぎなくていいんだ」と思うきっかけになるのであれば、今後も漫画を描いていきたいなと思います。それが忙しいなかでも漫画を描き続ける、強いモチベーションになっていますね。

――最後に、漫画を通じて、今後ファンの方や身の回りの方に伝えていきたい事や達成したい事があれば伺わせてください。

漫画を読んで、「めちゃくちゃ元気になれます」と仰ってくださる方がすごく多いんです。私が漫画を描き続けられるるモチベーションは、そう言ってくださる方の言葉が全てです。みんなが寝る前や「もう疲れたな」と思ったときに、くだらない漫画を読んで笑ってほしい。「漫画でこの世の中をひっくり返すぞ!!」みたいな感じじゃないんですよ(笑)。

気が抜けた感じで笑っていただけたら嬉しいと思って、日々SNS漫画を更新しています。「面白かったよ」と楽しんでいただけたら、すごく嬉しいです。さらにコメントをいただけると…なかなか返信はできないのですが、それを酒の肴にして生きているようなところがあります。読んでいただくだけで嬉しいですが、反応をいただけるとさらに頑張れます。コメントやいいねなど、反応をいただけたらより強く生きていけます!!

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