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柚希礼音&夢咲ねね、宝塚退団から10年 ”ちえねね”コンビに生まれた関係の進化

  • 2025.4.6
(左から)夢咲ねね、柚希礼音 クランクイン! 写真:高野広美

宝塚歌劇団星組でトップコンビを組み、多くの観客を魅了し愛された柚希礼音と夢咲ねね。2015年の退団から10年が経ち、この春、ミュージカル『ホリデイ・イン』で再共演を果たす。ファンも歓喜した“ちえねね”コンビの復活に際し2人に話を聞くと、10年経っても変わらないお互いに寄せる信頼関係が垣間見えるインタビューとなった。

【写真】“ちえねね”の信頼感あふれる! 仲良し2ショット

◆10年ぶりのミュージカル共演に驚きと喜び

本作は、1942年にビング・クロスビー&フレッド・アステア主演で公開された映画『Holiday Inn』(邦題『スウィング・ホテル』)をもとにしたミュージカル作品。この映画のために書き下ろされた「White Christmas」をはじめとするアーヴィング・バーリンの名曲が詰まった作品を、『TOP HAT』『FOLLIES』などで知られる英ミュージカル界を代表するビル・ディーマーの演出&振付、坂本昌行が主演、共演に増田貴久、保坂知寿ら実力派キャストで届ける。

柚希は、ショービジネスの世界に幻滅し田舎で農場経営をしようと決意する主人公ジム(坂本)と「ホリデイ・イン」で出会い引かれ合うリンダを、夢咲は、かつてのジムの恋人でテッド(増田)とショーを続けるライラを演じる。

――作品の印象をお聞かせください。

柚希:心温まる王道のハッピーミュージカルで、すごく良いなと。またねねと共演できるとお聞きしまして、驚きもありましたがとても楽しみだなと思いました。

夢咲:50年代のアメリカンな感じで、曲もハッピーですし、この作品はすごく楽しいんだろうなと感じました。ちえさん(柚希)がリンダを演じられるというのがすごいことだなとも思いましたし、なにより退団して10年、また作品をご一緒できることがうれしかったです。

柚希:もともとブロードウェイで上演されていたものも素晴らしいのに、今回は私たちバージョンで作り直してくださるということがすごく楽しみで! 演出のビルにお会いした時に、「あなたはすごく踊れるらしいから、いっぱい踊らそうと思う」と言われて。振り付けも一から自分たちに合うようにしてくださるという素晴らしい環境で作品に臨ませていただけるので幸せです。

夢咲:演出家のビルが明るくて! いろいろな経験をされてきた大先輩なので、いろいろ教えていただけるのは刺激になりますし、光栄なことだなと思います。

――演じられるキャラクターの印象はいかがですか?

柚希:私が演じるリンダは、ある年齢を超えた夢を一度諦めたことのある女性たちは「ああ、わかる~」と感じられるんじゃないかな。でもハッピーなんですよね。ハッピーなんですけど共感するところもたくさんあるし、これから自分にとって何が幸せかを考えさせられるところもあるんです。

リンダは、ブロードウェイで舞台に立つことを夢見ていたけど、家庭の事情で田舎に帰らなきゃいけなくなった女性。学校の先生をしているんですけど、坂本さんが引っ越してきたことでもう一度好きだったものに触れて花開いていくところが、すごく好きです。自立している素敵な女性になろうとしているけど、なりきれてないようなかわいらしい面もあります。

夢咲:私が演じるライラは、野心にあふれていて、自分の夢のためなら何も厭わないところがある意味かっこいいなと思います。すごくポジティブだし、こういう女性は友達にいたら面白いだろうなという感じですね。

柚希:ライラは面白くてかわいいよね。

夢咲:ただただハッピーな人ですよね(笑)。

柚希:実際のねねは違うよね。

夢咲:あまり演じたことのないようなタイプなので、挑戦になると思いましたし、この役を通して新たな発見があったらいいなと思います。

◆女性同士としての共演の感想は?


――退団後も『REON JACK』や『RUNWAY』などショー作品でのご共演はありましたが、お芝居でのご共演は初めて。今回は女性同士としての共演となります。

柚希&夢咲:女性同士(笑)。

柚希:私がすごく恥ずかしいと思うんです。セリフで「~だわよ」とかあったら…。

夢咲:「だわよ」(笑)。

柚希:男役の時に女性役としてショーをやっているのを見てもらうだけでも恥ずかしかったので。どういう気持ちで壮一帆さんとあゆっち(愛加あゆ)は共演できたんだろね?(笑)

夢咲:確かに(笑)。

――退団から10年が経ちました。

柚希:この10年の間もねねは変わらず近い存在で、ずっと活躍を見ていました。宝塚時代に苦手だった音を克服していってる姿を見て「おお、すごい!」と思ったり、囚われていたものがなくなって楽しそうにやっている姿に感動したりしていました。

夢咲:私は男役さんの姿を現役時代6年間ずっと近くで見させていただいていたので、退団後にいろいろな幅のある女性を演じられる、いろんな面のちえさんを見させていただいた時は、「こんな表情もされるんだ!」と感慨深かったです。

ちえさんは宝塚にいらした時も自然体というか、男役女役に囚われず、“ちえさん”という方として舞台に存在していらしたので、「女性として舞台に立つ姿にショック受けた?」ともよく聞かれるんですけど、まったくなくて!

柚希:退団後は一番の応援者という感じで「あのカツラ、いいと思います」とか、私が女性を演じるうえで分からないところを教えてもらったり。

夢咲:不思議なんですけど、上級生を超えた身近な存在。お姉ちゃんのような、それくらい近しい方だなと勝手に思っています。

柚希:退団後はより近い感じになったよね。相手役の時も自分の一部みたいなところにいたんですけど、やっぱり本当に厳しいことをいっぱいやっていかないといけなかった。今はなんだか、親戚や姉妹みたいな、のどかなところにいます。

夢咲:本当にお姉ちゃんみたい。

柚希:でも(夢咲が)お姉ちゃんみたいな時もあるんですよ。

夢咲:えぇ!?

柚希:いつも私に付いてきた夢咲ねねだったのに、本名の「那奈」のほうはお姉ちゃん気質じゃない? そこがすごくいいところなんですけど、「ここはこうしたほうがいいですよ」とか言ってくれるところも。退団後は長女気質も出てきていい感じの距離感になっていますね。

夢咲:在団中から、ちえさんもだと思うんですけど、お互いに話さなくても今日の体調や考えてらっしゃることが分かっちゃうところがあって。10年経って、以前はできなかったようなお話をさせていただけるようになって、ゆるやかにどんどん近くなっていっている感じがあります。それがゆえに、「あ!あれとこれで迷ってらっしゃるな」というのも分かって、「こっちじゃないでしょうか」と言っちゃったり(笑)。

柚希:ええ! すごくない!?(笑) 全部分かるから面白いです。でも、分かるけど、あえて言わずにお互いそっと見守ってることもあったり。本当に面白いですね。

◆お互いの好きなところは「大きい心」と「ギャップ」


――昨年の『RUNWAY』も拝見しましたが、本当に95分ありますか?というくらいあっという間の濃密なショーでした。先輩や後輩と楽しそうに踊っている柚希さん、大きなリボンのドレスをさすがの着こなしで魅せた夢咲さんの姿が印象的でした。

柚希:めっちゃ楽しかったです。あんなにいじっていただけることになるなんて(笑)。ねねはあのリボン持って帰れなかったんだよね?

夢咲:そうなんです(笑)。

柚希:下級生の楽屋に行っても笑いがあふれていました。あの公演をすることで、今の宝塚にエールを送れたらとみんな参加したんですけど、宝塚の伝統やメンバー、そしてファンの皆様からも愛をいただいた幸せな公演でした。

夢咲:今回共演した下級生の子たちには、在団中はすれちがいや期間がかぶっていない方もいたのですが、みんな愛があふれていて。はじめましてなのに、家族のように通じ合うひとつの絆みたいなものがあったので、すごく幸せを感じていました。

――宝塚のお話でいうと、夢咲さんの最後の同期生・凪七瑠海さんが先日退団をされました。

夢咲:私たちの期はキューピッドのような衣装で初舞台ロケットを担当しました。今回のカチャ(凪七)の退団公演では、その初舞台をオマージュしたシーンがあって。初舞台からのあれこれが一気に走馬灯で思い出されて、あのキューピッドをやっていたカチャがこんなに立派に男役を極めて、89期の有終の美を飾ったじゃないですけど、とてもエモくて同期みんなの涙腺が崩壊しました。

――一方の柚希さんは、同期の奏乃はるとさんが組長として現役で活躍されています。

柚希:にわにわ(奏乃)は、音楽学校の予科の時から組長になりたかったんですよ。そんな子っている?

夢咲:すごい!

柚希:みんながこんな男役さんになりたいと話している時から、組長さんになりたいって言っていた子なので、夢をかなえてすごいなと思います。

――先ほど、姉妹のような身近な存在とのお話がありましたが、お互いのここが好き!というところを挙げるとするとどこでしょう?

夢咲:ピュアで、優しくて、受け止める力が大きい。すごく好きです。

柚希:まぁ(照)。

夢咲:なので、ついついわがままを言っちゃう。

柚希:それが面白いんですよね。在団中も時々「ここにご飯に行きたい」と頑張って言ってきたけど、でもそんなこと1000回くらい思って1回言えたくらいだった。でも今は「この店に行きたい!」と、明るめに言うところが好きです。

夢咲:ちえさんの大きい心があるから言えるんです。

柚希:ギャップがいいですよね。いつも頑張ってるわけじゃないところも好きです。稽古場とかでもオンオフがはっきりしている。『RUNWAY』でも最初のころは、最近の“ねね”で来ていたのに、途中からスイッチが入って現役の時の“ねね”も入れ込んできたのが観ていて面白くて! それが無理してやってる感じじゃないのも面白い。

夢咲:バレバレですね(笑)。

――今回のリンダ役、ライラ役はお二人にとって新しい挑戦とのことですが、今後はどんな挑戦を続けていきたいですか?

柚希:今年シャンソンに挑戦したのですが、これまでは歌い方やテクニックなど、こうじゃなきゃいけないということに囚われていました。シャンソンを歌われる方は毎回歌い方が違い、計算じゃないところがいっぱいあるんだろうなと感じました。そうすると、人にどう思われようと、評価を気にしないところで挑戦しようと思えたんです。それってとても勇気がいることで、見せる自分になっちゃうこともあるんですけど、それをやめようと挑戦したところ、心落ち着いて挑むことができました。これをミュージカルなどに活かしていけたら、開演前に舞台で「どうしよう、どうしよう」となる自分じゃなく、その役と向き合うことができていくかもしれない。今年はせっかくシャンソンで始まったから、そこで学んだことをミュージカルにも活かして、リラックスした状態で舞台や歌に臨めるようになっていきたいと思います。

夢咲:退団して10年が経って、今回ライラというまた全然違うタイプの役に出会うことができました。それをまた自分の中に入れ込んで、もっともっと夢咲ねねという人間の振り幅が広くなっていくように頑張っていけたらいいなと思っています。

(取材・文:田中ハルマ 写真:高野広美)

ミュージカル『ホリデイ・イン』は、4月1日~16日に東京・東急シアターオーブ、4月22日~5月1日に大阪・SkyシアターMBSにて上演。

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