新刊インタビュー 「私がいちばん読みたかった本ができました」
連載は、毎回素敵なゲストの方を招いて、お気に入りの10アイテムのお話をお聞きするというもの。ゲストにはアーティストの持田香織さんやスタイリストの伊藤まさこさん、俳優の満島ひかりさんなど、おしゃれで素敵な15名が私物を持って登場し、菊池さんと一緒に楽しくおしゃべりしています。
―この度は書籍化おめでとうございます!書籍化すると決まったとき、どんなお気持ちでしたか?
連載を始めたきっかけは、常日頃から「おしゃれだな、かわいいな」と憧れの眼差しで眺めている大好きな方々のお気に入りのアイテムについて知りたい!と思ったこと。「そばにいてくれてありがとう」と思う服を「ありが10(とう)ふく」と名づけて、ゲストの方の私物とストーリーをお聞きしました。それが一冊にまとまったことで、手元に置いて、いつでも何度でも読み返せる!おそらく一番読みたかったのが私だと思うので、うれしい気持ちでいっぱいです。
―職業も年齢もさまざまな15名が登場されていますが、菊池さんが伝えたいことや楽しんでほしいことはどんなことでしょう?
ゲストの皆さんとのおしゃべりは、単に“おしゃれの話”にとどまらなかった気がします。その方が何を大切に、何を楽しんで、何を選んで生きてきたのかという、深いところの話を聞くことができました。
アイテムに関しても、色・柄・かたち・素材・手触りに至るまで、“好き”のポイントがいっぱいなんです。皆さん、おしゃれの根っこの部分はそれぞれ違いますが、共通しているのは「自分の好きを信じている」こと。そんなピュアな愛情に勇気をもらうことができましたし、私の今までの人生を肯定してもらったような。そのことが読んでくださる皆さんにも伝わるといいなと思っています。おしゃれのハウツー本とはひと味違う魅力を感じてもらえたらうれしいです。
―連載を通して、菊池さんの心境の変化や新しい発見はありましたか?
好きなものというのは、自分の中から自然と湧いて出てくるものだと思っています。本来おしゃれをすることも同じだと思うのですが、大人になるにつれて、そうもいかなくなってくるな…と感じていました。行く場所や雰囲気になじむようにしたり、ブームがあったりしますよね。
私はクローゼットの中で、洋服たちとの関係性を永遠に考えているのが好きなんです(笑)。中には、大好きで手放すことはできないのだけど、なかなか攻略できない服や最近遠のいてしまった服があります。「こういう服ばっかり買っちゃうの!」って、きっと誰にでもあると思うのですが、それが一番の自分らしさだということに改めて気づくことができました。
特にゲストの皆さんは、「自分の好きなものを好きに着る」という軸がしっかりしている方ばかりだったので、「何かに合わせるのではなくて、もっと自由に楽しんでいいんだ!」と。毎回撮影から帰ってくると、クローゼットを見つめ直して、「こういうふうに着てみよう」と、新しい着こなしのアイディアが湧いてきたりしましたね。
また、おしゃれや好きなものって、どこか自分だけの秘密にしておきたいという気持ちがあると思うのですが、ゲストの皆さんはいろんなことを惜しみなくシェアしてくださって。「あっこちゃんだったら、こういうのが似合うと思うよ」とか教えてくれたり、その気持ちがとても嬉しかったです。
―書籍のデザインは、これまでの著書や『マッシュ』でもデザインを担当されていた中島基文さんが担当されていますね。
デザイナーの中島さんは、私たちの熱量や想いに圧倒されていました(笑)。みんなで集まっておしゃべりが止まらなくなるような女子感というか、乙女感というか。普段は寡黙なゲストの方も、好きなものに対することならたくさんお話ししてくださる。その熱量が写真や文章から伝わったのかな。中島さんは私たちのあふれる乙女心を理解してくれて、躍るような愉快なデザインを組んでくれました。連載では私の手描き文字だったのですが、書籍では中島さんの手描き文字だったりして。レイアウトの違いも楽しんでいただけたらと思います。
毎回ハッピーな撮影現場の様子は?
―連載では、毎回ゲストの方が「ありが10ふく」をスタジオに持参して撮影していたそうですが、撮影の様子を教えていただけますか?
皆さん荷物のまとめ方まで個性いっぱいでした!スーツケースひとつにまとめられなくて、追加で大きな袋を3つも抱えていらっしゃる方がいたり、事前にしっかり絞り込んですっきり持ってこられる方がいたり…臨場感がありましたね〜。
毎回同じスタジオで撮影していたのですが、ゲストの方が持ってきてくださった「ありが10ふく」をテーブルの上に広げると、まるでブティックのような空間になるんですよ。カメラマンの千葉さんや編集さんたちと、「空気が立ちのぼるね」って、その様子をニマニマしながら眺めていました。アイテムをひとつずつ取り出すときも「これはね…」と想いやエピソードをお話ししてくれたり、とにかくおしゃべりが止まらなくて。とってもハッピーな現場でした。
―毎回ゲストの方と菊池さんのペアリングのようなコーディネートも素敵でした!コーディネートはどうやって考えられましたか?
事前に打ち合わせをさせていただいたので、持ってきていただくアイテムはなんとなく知っている状態でしたが、基本的には「ゲストの方と待ち合わせをするなら?」と想像しながら。普段から誰かと会う時は、「反応してくれそう!」というアイテムを仕込んでコーディネートを組むことが多いんです(笑)。その人に合わせるということじゃなくて、会話のきっかけになりそうなものを着て行くことが多いので、同じように考えましたね。
−まったく同じアイテムではなくても、一体感が生まれていたような気がします。
そもそもゲストの方は私が大好きな方なので、何かしら共通点だったり、重なる部分があったのかもしれません。私のワードローブの中で、しっくりくる服が何かしら見つかりました。
菊池さんの「ありが10ふく」も撮り下ろしで紹介
―書籍では、菊池さんの「ありが10ふく」紹介ページもありますよね。
私にとっての「ありが10ふく」は、本当になくなって困るものかもしれないなと思いました。連載を担当してくれたカメラマンの千葉さんとは長い付き合いで、今まで私の私服もたくさん見ていますが、撮影のとき「これいつも着てるね〜」とか「これ着てたら、あこやんって感じがするね〜」と言ってくれて。
今までに着たことがないような服に挑戦することもおしゃれの楽しさですが、周りの人が「相変わらずそれ着ているね」と思ってくれるようなおしゃれはこれからも大切にしたいなと。相手にも緊張感を与えないですし、私も無理をしなくていい。「ありが10ふく」がそばにいてくれることは、自分らしくいれること。自分自身も周りのみんなも安心させてくれる洋服たちにしみじみ感謝です。
―まさに「ありが10」ですね!やはり10つに絞るのは大変でしたか?
大変でした〜!毎回ゲストの方にも、「こんなに大変だと思わなかった!」と言われていたのですが(笑)。私も全然入りきらなくて……。だけど、とってもいい機会でした。
リンネル読者にメッセージ
―今日はハッピーになれるお話をありがとうございました。最後に、リンネル読者にメッセージをいただけたら嬉しいです!
私自身もそうなのですが、おしゃれをするときに「何を着たらいい?」「どういう風に着たらいい?」と考えることって、永遠のテーマですよね。更新し続けるものではありますし、私自身も連載を通してたくさん学ばせてもらいました。ですが、この本がもっと気楽におしゃれを楽しめるようなきっかけになればいいなあと思っています。「好きな服を好きなように着ればいいんだ」という気持ちになってもらえたら!
私とゲストの方が、「私はこれが好き」「それ最高ね〜!」ってわいわいおしゃべりしているので、待ち合わせのようにふらっとやってきて、ぜひ私たちに混ざってください(笑)。皆さんそれぞれの“好き”が必ずあるはずなので、「私はね…」とお話ししてもらえたらうれしいです。
新刊『菊池亜希子のありが10(とう)ふく、みせて!』
雑誌『天然生活』で連載中の菊池亜希子さんによる人気連載『ありが10(とう)ふく、みせて!』が待望の書籍化。菊池さんがいま会いたいゲスト15名をお迎えし、「そばにいてくれてありがとう」と思う私物、10アイテムについて話をお聞きしました。放課後、友達とおしゃべりしているようなリラックスした雰囲気で、ゲストの本音を引き出していく菊池さん。気軽におしゃれを楽しんでみよう!という気持ちになる一冊です。
菊池亜希子さん PROFILE
モデル・俳優・エッセイストなど多方面で活躍中。近著に『へそまがりな私の、ぐるぐるめぐる日常。』(宝島社)がある。毎週土曜日、インターエフエムのラジオ番組『スープのじかん。』のパーソナリティーを務める。4月13日スタートのTBS系日曜劇場「キャスター」に出演。
Instagram:@kikuchiakiko_official
photograph:Isao Hashinoki hair & make-up:Tomoko Takano text:Riho Abe
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