東京はここ数日でぐっと暖かくなり、気づけば自宅の桜も満開に。
毎年のことながらもやはり心が躍ります。
実はこの家を購入したとき、ベランダから桜が見えるなんて思いもしませんでした。仕事に追われていたころの家は帰って眠るだけの場所。朝早く出かけ、夜遅く帰る日々の中ではこの風景に気づく余裕もなかったのです。
そんな私に桜の存在を教えてくれたのは、産休という時間でした。
慌ただしい毎日から少し離れ、ゆったりと過ごす日々。ふとベランダに出てみると、そこには見事に咲き誇る桜の木が。こんなにも身近に美しい世界が広がっていたなんて…! その時の感動は今でも忘れられません。それ以来、桜の季節になると、ベランダでのお花見が恒例行事になっています。
お花見を彩る手まり寿司
この日は、スーパーで購入したお刺身の盛り合わせで手まり寿司を作り、その横にいなり寿司を詰め合わせてみました。手まり寿司って一見、難しそうに見えますがサランラップにお刺身と酢飯(大さじ半分)をのせて、くるっと丸めるだけ。実はとっても簡単なんですよ!
おかずは卵焼きにから揚げ、季節の野菜(菜の花を茹でたもの)。決して手の込んだ料理ではないけれど、外で桜を愛でながら食べると何倍も美味しく感じるから不思議。
わが家のから揚げは鶏肉1枚をひと口サイズに切り、醤油、ごま油・酒(各大さじ1)、ニンニク・しょうがのすりおろし(各小さじ1)に漬け込み、衣(卵の黄身1個・片栗粉大さじ1~2)につけて、からっと揚げるのがポイントです。
1つあると便利な重箱
そうそう、お花見に欠かせないのは重箱。
私が愛用しているのは越前塗漆器の老舗、松屋漆器店のタモ材を白木塗で仕上げた内朱二段重(サイズは6寸)。重箱にぎゅっと詰め合わせるだけで、なんだか立派なお弁当に見えますよね。
骨董好きなら知っておきたい、小さな名脇役
酢味噌を入れたのは、大阪の骨董店AOIで見つけた“のぞき”と呼ばれる小さなうつわ。ぐい呑みよりもやや小さめで口がすぼまった形のものが多く、ちょっとのぞき込むようにして中を見ることから、のぞきと呼ばれるようになったのだとか。手のひらにすっとおさまるサイズがなんとも愛らしく、調味料を入れるのにぴったりなんです。
都会の喧騒を少しだけ離れ、ゆったりと流れる時間に身を任せる。こんな贅沢ができるのもベランダがあるからこそ。混雑や騒音とは無縁の特等席で、今年もまた春の訪れを味わっています。
写真・構成/川口ゆかり
※この記事は2025年4月5日時点のものです。