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海外映画祭で高評価の時代劇『陽が落ちる』が公開!柿崎ゆうじ監督が撮影のこだわりを明かす「実際に切腹が行われた部屋で撮影」

  • 2025.4.5

マドリード国際映画祭で4冠に輝いた『ウスケボーイズ』(18)や、ヨーロッパの複数の国際映画祭で最優秀作品賞を受賞した『コウイン 〜光陰〜』(24)などで知られる柿崎ゆうじ監督が本格時代劇に初めて挑んだ『陽が落ちる』(公開中)が4月4日に公開初日を迎え、新宿武蔵野館で初日舞台挨拶が開催。柿崎監督と主演の竹島由夏、共演の出合正幸が登壇した。

【写真を見る】本格時代劇に初挑戦の柿崎ゆうじ監督が振り返る、ストイックすぎる撮影現場とは?

幕府の命により切腹を言い渡された夫と、その妻が過ごす最後の一夜を描いた本作。文政12年の江戸。武家の妻である良乃(竹島)は、蟄居を命じられた直参旗本である夫の古田久蔵(出合)と幼い息子と共に静かに暮らしていた。しかしある日、旧友の江頭伝兵衛(前川泰之)が残した一首の歌が彼女の平穏を切り裂く。それは、久蔵の沙汰が切腹であるという知らせだった。残された時間で妻としてなにができるのか。久蔵の誇りを守り、息子の未来をつなぐため、良乃は静かに覚悟を決めることに。

本作でロンドン国際映画祭とエディンバラ国際映画祭で外国語部門の最優秀監督賞に輝いた柿崎監督は、「勧善懲悪を描く時代劇は、非常にわかりやすい教育のひとつであり、すばらしい日本の伝統文化。そんな時代劇を現代に残したい。男女の身分差など、現代とは相容れない価値観もありますが、家族愛や親子愛、友情と、いまも変わらないものもある。それが現代へと脈々とつながっている様を描きたかった」と、本作を製作した経緯について振り返る。

【写真を見る】本格時代劇に初挑戦の柿崎ゆうじ監督が振り返る、ストイックすぎる撮影現場とは? [c] 2024 Kart Entertainment Co.,Ltd.

撮影は“リアル”にこだわる柿崎監督の意向で、長野県松代にある重要文化財の武家屋敷で行われた。「役者たちが当時のそのままの精神状態で芝居ができるように、あえて撮影所は使用しませんでした」と、周囲にある現代的な建物が映り込まないようにするなど撮影時の苦労を明かす。さらに「撮影期間中はコーヒー禁止、洋食禁止、差し入れも和もの以外禁止。久蔵が切腹するシーンはかつて実際に切腹が行われた部屋で撮影しました」という徹底ぶり。

それには柿崎監督作品に多数出演してきた竹島も「建物自体にオーラがあって、衣装姿で現場に入ると、そこに漂う空気までもが当時とまったく同じではないかと思うくらい作品世界に没頭することができました」と、スタッフの配慮が行き届いていたことに感謝を述べ、出合も「作られた芸術的なものではなく、昔から存在しつづけた本物の武家屋敷。重要文化財で撮影したからこそ、普通の時代劇とはひと味違う空気感が生まれたように思います」と恵まれた環境での撮影を喜んでいた。

10年以上にわたって柿崎監督作品に出演しつづけている竹島由夏 [c] 2024 Kart Entertainment Co.,Ltd.

また柿崎監督のこだわりは撮影場所だけにとどまらない。俳優の感情を優先するため、撮影はストーリーに合わせて順撮りで行われたのだとか。「こんなに人って役に入れるのかと、自分で芝居をしながら驚きました。途中で感情があふれて耐えきれず、涙が止まらなくなった時もあります」と語る竹島に、「順撮りは時間がかかるものですが、俳優としてはとてもありがたいことです。しかもカットを細かく割るのではなく、ひとつのシーンを長めに撮っていただけたので、自然と感情がつながる。台本どおりに芝居ができたのは貴重な時間でした」と充実した撮影期間を振り返った出合。

そして柿崎監督は、「こだわって時代劇を撮りたいという私の想い。俳優もそこに向かって一丸となっている。それに対してスタッフの皆さんも嫌な顔ひとつせず付き合ってくれた。理想的な完成に向けて一点集中で撮影できたからこそ、『陽が落ちる』が撮れたと思っています」としみじみとした表情で語っていた。

文/久保田 和馬

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