ミュージカル『刀剣乱舞』 〜坂龍飛騰〜が2025年3月から5月にかけて上演される。7年ぶりのミュージカル本公演出演となる陸奥守吉行役の田村心は、どんな思いで開幕の瞬間を待っているのか、WEBザテレビジョンでは最終稽古を終えた田村にインタビュー。7年前を振り返ってもらいながら、今の彼だからこそ演じられる陸奥守吉行への思いやカンパニーの雰囲気、30歳に向けての抱負を語ってもらった。
葛藤の末作り上げた7年ぶりの陸奥守吉行役
――7年ぶりの本公演出陣となります。SNSでも「この7年いつか来るこの日を意識しなかった日は1日たりともありません」と発信されていましたが、最終稽古を終えて間もなく本番という今(取材時点)の心境をお聞かせください。
いやぁ、「ついに始まるな」という感じですね。約2カ月間の稽古も本当にあっという間で。楽しかったことも悔しかったこともあって怒涛の日々でしたが、だからこそカンパニーの絆も深まりました。このすてきなメンバーですてきな物語を届けられることが楽しみです。でも…初日は緊張しそうです(笑)。
――本公演としては7年ぶりに陸奥守吉行役を演じるということで、役への向き合い方や捉え方の部分で、7年前とは違う感覚もありましたか?
めちゃめちゃ違いましたね。大型公演で演じる度に、役の見え方は少しずつ変化していて。なので、7年前と比べると、かなり別物になっているような気もしています。もちろん陸奥守吉行の核となる部分は変わっていないのですが、お客様の目にはどう映るのかな…と。もしかしたら「前と違う」と思われるかもしれないのですが、僕の中ではその変化に対して、しっかりと「こういうことだから」という筋を1本通しています。すごく悩んで、先輩にも相談していろいろなアドバイスももらいました。その上での変化なので、受け入れてもらえたらうれしいなと思います。
7年前の「結びの響、始まりの音」では、僕が本当に未熟だったんですよ。「だから、ああいう作り方になった」と、演出の茅野イサムさんにも言われました(苦笑)。脚本では陸奥守吉行は達観しているという描かれ方だったんですが、最終的に“腹の内を周りに見せない”という役に仕上がった。だけど、それは僕が未熟ゆえに、他に選択肢がなかったと。
今回は「7年経って経験もたくさんしてきただろうから、陸奥守吉行として感じているものを見せてもいいんじゃないか」と茅野さんに言ってもらって。まぁ、出しすぎると「出しすぎ」って言われちゃうんですが(笑)。稽古は本当に葛藤の日々でしたね。
――では、稽古を通じて、陸奥守吉行の新たな一面に触れられる場面もあった?
たくさんありましたね。陸奥守吉行の新しい一面を見せる物語でもありますし、7年前には僕の中になかった感情も生まれていますし。周りの刀剣男士の顔ぶれが違うということも大きくて、新たな関わり合いの中で、陸奥守吉行が心情を見せられる場面もありますし。お客様にも、編成が違うからこそ生まれる彼の感情という部分を楽しんでもらえたらなと思っています。
夏には2つの大好きな作品のキャストと東京ドームへ
――作品初参加となるキャストも多い座組です。稽古の雰囲気はいかがでしたか。
いい雰囲気でしたね。もちろん悩んだり落ち込んだりすることは、それぞれにあったと思いますが、必ず誰かが盛り上げて明るくしてくれるんですよね。特に佐奈ちゃん(後家兼光役の佐奈宏紀)や福澤侑(笹貫役)は、違うベクトルの明るさを持ったムードメーカーで。2人にはすごく助けられました。
初参加組でいうと、至恩(大慶直胤役の大友至恩)や一期(南海太郎朝尊役の塩田一期)は若いけど本当に立派で。彼らを見ていて、「僕も7年前、こうありたかったな」と思うくらい、ひたむきに前向きに食らいついていく姿に尊敬の念を感じていました。そこに凌雅(肥前忠広役の石川凌雅)がいてくれて、すごく大好きな座組になりましたね。
――今回の物語では陸奥守吉行が隊長ということですが、キャストの中心になる立場として意識したことはありますか?
僕は引っ張るタイプでもないし、そこは茅野さんにも見透かされていて「変に引っ張ろうとすると空回りするんだから、そういうことは考えずに、やるべきことをやっておけばいい」と言われていました。たしかに張り切ると空回っちゃうんですよね(笑)。だから、ちゃんとやっている姿を見せるしかないなと思って、取り組んでいました。
あとは、落ち込まないようにしました。後輩からしたら、稽古に行って落ち込んでいる先輩の姿を見るのは嫌だろうなと(笑)。なので、稽古場での居方という部分はずっと意識していたかもれいないですね。
――7月開催の「目出度歌誉花舞 十周年祝賀祭」では、陸奥守吉行役として東京ドームにも立ちます。東京ドームにはなにか思い出はありますか?
お父さんと行ったSMAPやポール・マッカートニーのライブですね。自分の好きなアーティストのライブでも行きましたし。回数は多くないけど、一つ一つが大きな思い出として残っていますね。
東京ドームは去年「ACTORS☆LEAGUE」で立たせてもらったんですが、僕は野球未経験者ということもあって、感動というより「うわぁ、東京ドームだ~」みたいな感想しか浮かばなかったんですけど(笑)。今年は東京ドームのステージに立てるということで、また違った感慨深さがありそうだなと思っています。
まだ具体的なことは聞いていないので、僕もどうなるのか楽しみです。稽古は絶対大変だと思うんですが、あれだけの規模の人数で稽古することってそうそうないので、今はワクワクしています。あと、個人的には「結びの響、始まりの音」と「坂龍飛騰」、2つの作品のメンバーとして参加する大型公演が初めてなので、それが嬉しくて! 新しい目線でお祭りを楽しめそうだなと思っています。
30歳の目標は特技を持つこと
――春は本公演「坂龍飛騰」、夏は「目出度歌誉花舞 十周年祝賀祭」があり、秋には30歳の誕生日を迎えます。20代のうちにやっておきたいこと、また30代になったら挑戦してみたいことを教えてください。
こういうときよく「旅行」って言っているんですけど、どうせ行けずに終わるので今回は言わないでおきます(笑)。やり残したと感じることもないかな。それくらい20代は怒涛で、充実した日々を送らせてもらったなと思います。
30代でやりたいことか~。30歳になっても変わらずに過ごしていくと思うんですけど…。趣味とかを作りたいなとは思いますけどね。あとは、確立された特技があったらいいなと。「なんかやってみてよ」と振られたときに…まぁ、こういう空気感は好きじゃないんですけど(笑)、パッとやって「すごい!」って言われるものを、これから探して身につけていけたらいいですね。今の趣味はサウナとかドライブとかで、“ザ・特技”感がないので(笑)。
――では最後に、改めて田村さんにとって陸奥守吉行とはどういう存在でしょうか?
憧れであり、親友であり、ずっと背中を追いかけ続けている存在ですね。やっぱり陸奥守吉行ってでっけぇ男だなと思うんですよ。30歳手前になった今でも、演じるのはすごく難しい。今思えば、22歳で演じるなんて、そりゃあ難しかったよなと。それくらい、僕にとってはでっかくて憧れの存在です。
――7年前に比べて、憧れの背中にはどのくらい近づけましたか?
2歩ぐらいは近づけたんじゃないかな。7年前にはできなかった体作りもしたし、少しは陸奥守吉行に寄り添えているんじゃないかなと思います。
◆取材・文=双海しお ヘア&メーク=yuto スタイリング=齋藤良介