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50年来の親友に腎臓を提供した女性「この決断に迷う余地はなかった」

  • 2025.4.4

分かち合うことは思いやり。その精神は、時に臓器にまで及ぶことも。今回紹介する女性は、ロンドン在住のギータ・シャー。彼女は50年来の親友スウェタルのために、自らの腎臓を提供している。

2017年、スウェタルは腎不全と診断され、新しい腎臓を移植しなければ、一生透析を受け続ける必要があると告げられた。透析とは、腎臓が機能しなくなった際に、血液中の老廃物や余分な水分を取り除く治療法のこと。当時、ギータは生きている間に腎臓を提供できることすら知らなかったという。

「スウェタルとは10代の頃からの親友よ。もう50年以上の付き合いなの」とギータ。「ある日、彼女に多発性嚢胞腎(PKD)を患っていると打ち明けられてね。私たちの友人グループに誰か腎臓を提供してくれる人はいないかと相談されたの。最初は思わず笑ってしまったわ。生きているうちに腎臓を提供できるなんて知らなかったから!」

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早産だったいとこのため献血をしていた父に影響を受けた

だがその後、ギータは初めて英国での深刻な腎臓不足の実態を知り、多くの腎臓移植は亡くなったドナーから提供されるものの、生体腎移植は全体の3分の1を占めていることを学んだ。さらに、生きている人からの移植の成功率は、亡くなった人からの移植の成功率よりも高く、移植後の臓器の寿命も長いことがわかった。

腎臓提供を考えたきっかけについて聞かれると、ギータはこう答えた。「私の決断の背景には、父の影響も少なからずある。父は早産で生まれた私のいとこたちのために、献血をしていた。父は22年前に亡くなったけれど、今50代になったいとこたちの姿を見るたびに、父のしたことを思い出す」

“並んで”受けた手術、そして回復へ

「手術後の最初の2、3日は確かに痛みがあった」とギータ。「でも、医療チームができる限りサポートしてくれたし、スウェタルと私は病室でも隣同士のベッドだったから、お互いの存在が支えになって、それが回復にも大きく影響した」

ギータは、回復までの道のりについてこう話している。「4日目には退院できるくらい回復して、自宅で療養することになった。まだ少し痛みはあったけど、自分の家で過ごせるのは大きかった。親族はみんな北ロンドンに住んでいるから、みんなが訪ねてきてくれて、それが何よりの支えになった。スウェタルも周りに支えられていたから、私よりもずっと順調に早く回復していた」

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腎臓を提供して以来、ギータはスウェタルの生活の質が劇的に向上していくのを目の当たりにしてきた。「私の腎臓移植がスウェタルにこんなにも大きな影響を与えたなんて、本当にうれしい!彼女は、まるで新しい人生を手に入れたみたい」とギータ。一方で、彼女は自身の貢献についてどこまでも謙虚だった。「私はただ、できることをしただけ。特別なことをしたつもりはないの。自分が腎臓を提供できる立場にいれたことを幸せに思う」

ギータによると、スウェタルの現在の健康状態は良好とのこと。「7年経った今でも、スウェタルの腎臓は完璧!他にも抱えている持病はあるけれど、少なくとも私の腎臓提供によって心配事を一つ減らせた」

ギータは、スウェタルが人生の大きな節目を迎えられたことについても触れている。「彼女には子どもがいるの。もし週に何度も何時間も透析に縛られる生活を送っていたら、家族との時間はどうなっていたかしらと思う。キャリアとの両立もね」

友情が生んだ“もうひとつの”腎臓移植

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アメリカの女優フランシア・ライサも、同じ年に親友のセレーナ・ゴメスへ腎臓を提供している。セレーナはループス腎炎と診断され、腎不全に陥っていた。術後、セレーナはインスタグラムで「これ以上ない贈り物と犠牲を払ってくれた」と、フランシアへの感謝の気持ちを綴っている。

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今年、「Make Your Mark」キャンペーンが実施した調査によると、イギリスの成人の55%が家族に腎臓を寄付することを検討しており、7人に1人(13%)は見知らぬ人に腎臓を寄付することさえ検討していることがわかった。

慈善団体「Give a Kidney」の事務局長であり、2013年に自ら腎臓を寄付したヤン・シャーロック氏はこう語っている。「現在、英国では6,000人以上が腎臓移植を待っている状況です。私たちの最善の努力にもかかわらず、毎週6人が腎臓移植を待ちながら命を落としています」

「ギータのような方々からの腎臓提供は、その贈り物を通じて人々の人生を劇的に変える機会を提供します。たとえ数人の寄付者であれ、腎臓病と闘いながら『ドナーが見つかった』という人生を変える電話を待っているスウェタルのような人々の人生に、大きな違いをもたらすことができるのです」

※この記事はイギリス版ウィメンズヘルスの翻訳をもとに、日本版ウィメンズヘルスが編集して掲載しています。

Text: Kate Cheng Translation : Yukie Kawabata

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